エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。第15回は女優の今田美桜さんのことを書いていきます。

年明けの2019年冬ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質ですー』(日本テレビ系)に高校3年生の役で出演予定の今田さん。2018年ブレイク女優のひとりになると思いますが、個人的には彼女の可愛らしさは今年一番だったと思っています。大きな目に白い肌、キュッと上がった口角。「人形かよ!」と突っ込みたくなるスーパービジュアルを持ち合わせた今井さん。その美しさが世間に爪痕を残した可愛さを振り返ります。

大きな瞳はチャームポイントであり、凶器であり

今田美桜

彼女の出世作といえば『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系)。英徳学園C5の紅一点、真矢愛梨役として登場した。初めは神楽木晴(平野紫耀)のことを好きだった愛梨は、セレブの身分をフル活用して恋敵の江戸川音(杉咲花)へ徹底的に意地悪を仕掛ける。この立ち位置だと普通は女性視聴者から反感を買うパターンが多いのに、ぐうの音も出ない、聞こえてこない。

それは愛梨が原作のマンガの世界を超えて、可愛かったからだ。まず愛梨といえば、高い位置でクルンとカールしたツインテール姿が思い浮かぶ。時にはふたつリボンをつけたり、リボンと髪の毛を分け目に編み込んだりと放送回ごとにアレンジを加えていた。女性誌の美容班だった見解から言わせてもらうと、ツインテールとは想像以上にハードルが高いヘアスタイルで、まず似合うのは10代前半まで。アニメのヒロインが結んでいるイメージが強いのかかなり甘い印象になってしまう。アゴあたりの低い位置で結ぶと大人でもトライできるようなイメージがあるけれど、実際は薄幸そうな雰囲気が否めない。

その高難度のヘアスタイルをモノにして、むしろ自分のトレードマークにしてしまった今田さんは天晴れとしか言いようがない。そしてさらに魅力を増幅させたのは愛梨が自分のことを

「愛梨が~」

と名前で一人称していたこと。一般的に実行してしまうと女性同士の間では、嫌味と凶器の間を揺れるような発言となる。思い出してほしい、学生時代は一人くらいそんな同級生がいたはず……。いい大人になっても悪気なく継続している女性がたまにいるけれど、これまた疑問符。

そんな幼さと造形美だけに許された特権を、何の嫌味もなく演じていた今井さん。ただ可愛いだけで全てが許されるのだろうか? と考える。

それから物語であの大きな目をグッと見開いて、怒りの感情をあらわにするシーンも狂気に満ちていて良かった。そして音と"親友"になった後、おにぎりを一気食いしたり、友達と呼ばれたら大喜びしたりと素直さをつるん、とさらけ出す愛梨の姿はまた共感を呼んだ。

もし今田美桜がワガママ女優でも美しさが全てを許す

今井さんはここ数年で新人とは思えないペースで様々な役をこなしている。女子高生は多数、『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』(フジテレビ系、2017年)ではデリヘル嬢。直近では『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)で、幼なじみに恋する役。

美女の宝庫と名高い福岡県出身の今田さん。他の新人女優と一線を画す理由はどこにあるのかと考えていたら、ふと彼女のインスタグラムが目に入った。

ぜひ一覧で見て欲しい。そこにはとてもカラフルな今田さんがいるからだ。偏見だったら申し訳ないのだけれど、タレントさんたちは何となくイメージカラーみたいなものが各々にあって、インスタは何となくその色を思い出す。確定した色でなくても、何となく暖色系とか写真の加工方法なども同じく。それがブランディングの一環なのだろうし、正解なのだ。

でも今井さんにはそれがない。真っ赤、ブルー、白、黒……と数多くの色の中にいても違和感がない。そこには彼女が色に飛び込んでいくのではなく、さも色を操縦しているような強さを思わせた。

ただ美しいだけの女性なら100人に一人くらいはこの世に存在する。そこに強さを漂わせることができる人となれば、100万人に一人くらいの倍率でしか存在しないと思う。

これは仮の話だ。その色で感じた強さゆえに今田さんが昭和の舞台女優クラスの気の強い女性だったとしよう。インタビューをしても、

「……そんなこと知りませんけど」

などと言うハードボイルドな回答をしたとする。それでも許す、今田美桜ならどうしたって許してしまう。あの高貴に満ちた美しさは平成最後の宝物なのだから。

スナイパー小林

ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。