「お手隙の際に、ご確認いただけますでしょうか」

相手に確認をお願いする際、「時間に余裕があるときで構いませんので」といった配慮を示す表現です。ビジネスメールは、相手と仕事上のコミュニケーションを取るためのツールの一つ。円滑なコミュニケーションを取るためには、相手に対する配慮や心遣いが必要です。

一方、多くの仕事には期限がつきものです。「お手隙の際に」と書いてあることで、一見、いつでもいいように受け取れますが、本当にいつでもいい仕事というのはそれほど存在しないはず。配慮のための一言が、かえって相手に負担を強いることになったり、スムーズな仕事の進行を妨げたりすることもあります。本当に必要な配慮や心遣いとは何か。その見極めが大切です。

期限がないことで負担が増加

「お手隙の際に」とスタッフから書類の確認を依頼された上司。書類の中身は、明後日の商談でクライアントに提出する提案資料だったとします。その際、二つのリスクが想定されます。一つは、時間に余裕があると考えた上司が、書類の確認を後回しにするリスク。もう一つは、上司に余計な負担を強いてしまうリスクです。

確認が後回しにされた結果、どのような事態が訪れるのかは言うまでもありませんよね。最悪の事態を迎えないよう、再度、上司に確認を依頼すれば「急いでいるのならば、なぜ始めから言わないんだ」とお叱りを受けるかもしれません。

すぐに確認をしてくれたとして、それが明後日の商談で使用する資料だと知れば、上司はそこからスケジューリングを考えます。「手直しをする可能性も踏まえると、明日の午前中がリミットだな」「調整のための打ち合わせが必要かもしれない。明日の午後の予定は……」と頭を巡らせることになります。配慮のつもりが、結果的には数多くの判断を上司に委ねる格好となり、相手の負担を増加させてしまいます。

仕事である以上、期限は重要な要素。希望する期限があるならば、それを事前に伝えた方が相手も対応しやすいはず。それが相手の負担を軽減することにもつながります。上司に対して期限を提示するのは申し訳ないと感じるかもしれませんが、その際は、期限は明確にした上で、別のところで配慮の気持ちを伝えましょう。「お忙しいところ恐縮ですが~~」「資料の完成に時間がかかってしまい申し訳ありません」こうした言葉があれば、きっと上司の方も快く応じてくれることでしょう。

本当に急がないのであれば……

もし「お手隙の際に」と書かれたメールを、自分が受信したらどうでしょう。相手のことを思い、できるだけ早い対応をしてあげようと考えるのではないでしょうか。相手も同じ気持ちを抱くであろうことは想像に難くありません。

業務の終了間際に届いた、書類の確認をお願いするメール。「お手隙の際に」と書かれていたとしても、相手のことを思う気持ちが勝れば、当日中の対応を考える可能性は十分にあります。結果、それによって残業が発生するかもしれません。仮に「明日の18時までにご確認いただけませんでしょうか」と期限が書いてあったならば、相手は、その確認を翌日に回せたかもしれませんよね。そもそも急ぐ確認ではないのなら、そのメールを業務の終了間際ではなく、翌日に送ることこそが相手に対する配慮だったかもしれません。

相手の行動を促す配慮

取引先からの見積もり依頼に対し、まるで定型句のように「お手隙の際に、ご確認いただけますでしょうか」と書いている人もいます。見積もりを依頼するということは、少なからずその商品やサービスに興味を持ってくれているはず。何も、相手の時間や都合に配慮することが最良の対応とは限りません。

お問い合わせいただいた商品の在庫は、残り8点です。
お早めのご注文をお待ちしております。

相手に、望む商品を確実に手にしてほしいと願うならば、早い確認を促すことも配慮となり得ます。

今月の20日までにご契約いただくと、
来月の1日よりサービスのご利用が可能です。

相手が、先のシナリオを見通すことができれば、より物事は円滑に進むことでしょう。自然と、見積もりを確認すべきタイミングも把握できるはずです。

「相手に確認をお願いする」という目的は同じでも、優先すべき事柄は状況によって異なります。配慮や心遣いを示すポイントがずれてしまうと、スムーズな業務の進行は望めません。相手の立場になって、どうすれば負担が軽減できるのか、あるいは次の行動が取りやすくなるのかを考慮することが、真の心遣いにつながります。