「効率的に仕事を進めたい」これは、多くのビジネスパーソンにとって共通の願いです。複数の案件が同時に進行することもあれば、一つの案件だけを考えても、こなすべきタスクが多岐に渡ることも。自分だけで完結できることばかりではなく、相手とのコミュニケーションを要するタスクもさまざま存在します。

働き方の変化によって、仕事上のコミュニケーションの取り方にも変化が生まれました。これまで対面や電話を中心に行ってきたやり取りが、メールに置き換わったことにより、苦労している人も少なくありません。特に複数の用件が重なったときに、相手からなかなか返答がもらえなかったり、回答に抜け漏れがあったりすることが多く、悩みやストレスにつながっているようです。

ビジネスメールでその悩みやストレスを緩和したいときは、ぜひ次の手法を試してみてください。それは「一通のメールには一つの用件だけを書く」ということです。

まとめて伝える二つのリスク

例えば、これまでに取引のない企業から、新たなシステムの導入を決めました。相手企業の担当者に、以下の三つの用件を伝える必要があったとします。

  • システム導入費について、最終の見積もりを依頼
  • 取引開始に必要な書類の記入を依頼
  • 次回、打ち合わせの日程調整

その際、三つの用件を1通のメールにまとめて送ったらどうでしょう。それこそが返答の遅れや、回答の抜け漏れにつながるリスクを高めます。

三つの用件を伝えられた相手は、すべての回答をそろえて返信しようと考えるかもしれません。ところが、最終の見積もりであれば、上司の方が確認する必要もあるでしょう。取引開始に必要な書類ともなれば、管理部門など別のスタッフが対応することも十分に考えられます。場合によっては数日を要す可能性もあり、これが返信の遅れへとつながります。打ち合わせの日程調整だけであれば、担当者の都合だけなので、すぐに返信が来たかもしれません。

仮に、打ち合わせの日程についてすぐに返信が来た場合、他の二つの用件を忘れられる可能性もゼロではありません。受信者がどのようにメールを管理しているかは分かりません。特に決まった管理方法がないとしたら、基本的に「処理済みのメール」か「未処理のメール」に分類されます。一つの返答をした後、時間の経過によって、相手が「処理済みのメール」と勘違いしてしまえば、結果、それ以外の回答が漏れてしまうことになるのです。

もしこのようなことがあれば、催促や確認の手間が発生します。より一層、悩みやストレスが大きくなりそうですね。

相手の負担を軽くする配慮を

対面や電話との違いにお気づきでしょうか。対面や電話であれば、一回の打ち合わせ(または電話)で済むように、情報をまとめて伝えることが求められていたはずです。仮に、三つの用件を同じ日にばらばらと電話で伝えたとしたら、決して良い印象は持たれないでしょう。

この違いはどこから来るのか。それは、相手にとっての負担の大きさの違いです。対面や電話の場合は、お互いに時間の共有が欠かせません。対面であれば、空間さえも共有することが必要。用件ごとに相手に時間を割いてもらうとなれば、それ自体が大きな負担となります。そのため、できるだけ一回の機会にまとめることが求められるのです。

一方、メールは時間や空間を選びません。それならば、相手が処理しやすいかどうかを基準に考えるのがベスト。三つの用件を1通のメールにまとめようとすれば、得てして長文になります。メールを開いたときにパッと長文が目に入れば「読むのが大変そう」と感じられ、それだけで心理的なハードルが上がるもの。たとえ回答できる内容から返信したとしても「処理済みのメール」にならず、さらなる管理が必要。そもそも回答できる内容から返信するか、まとめて返信するかを判断するだけでも、少なからず頭を悩ませるかもしれません。

そうした一つ一つの積み重ねが相手の負担を大きくします。たとえメールの通数が増えたとしても、3通に分けた方が相手は処理しやすく、物事がスムーズに進むはずです。

複数のメールを送る場合の配慮

「何通もメールを送るのは失礼にならないか」という思いがよぎるかもしれません。そのときは、メールの本文に心遣いを込めましょう。例えば、1通目のメールで見積もりの依頼をしたとします。最後に「なお、取引開始にあたりご記入いただきたい書類がありますので、別途メールをお送りいたします」と予告することで、あえてメールを分けているという配慮が相手に伝わるはずです。さらにメールが続くようであれば、冒頭の挨拶で「立て続けのメールにて失礼いたします」のように、気持ちを表現することも大切です。

伝え方は、常に一つとは限りません。「対面」「電話」「メール」などは、いずれもコミュニケーション手段の一つ。もし手段が変わるのであれば、伝え方も変化させることが、より適切なコミュニケーションにつながることもあります。相手にかかる負担を考慮し思いやることが、円滑なコミュニケーションの第一歩です。