電話の取り次ぎ時のさまざまな配慮と思いやり

電話を受けて、先方から指名された名指し人に取り次ぐ際には、配慮すべきさまざまなマナーがあります。とくにポイントとなるのは名指し人が外出や会議などで席を外している場合です。その取り次ぎの言葉は、相手方のみならず、職場の周囲の人にもしっかり聞かれていることを認識しましょう。その際どのように機転を利かした言い方をしているかによって大きく印象が変わってきますので、その取り次ぎマナーと配慮の仕方をお伝えしたいと思います。

1.先方の連絡先は忘れずに聞いておく

電話を取り次いだ際には、先方の社名や名前の確認はもちろんですが、必ず連絡先(電話番号)も聞いておくことが大切なポイントとなります。名指し人が席に戻ってきて「〇〇様からお電話がありました」とメモを見たときに、すぐに電話を折り返したい。もちろん手帳や携帯を見れば相手の連絡先はわかるでしょう。でもそのような確認をしなくとも、きちんと相手の電話番号がメモに明記されていると、すぐに電話をかけられるので名指し人の上司はとても助かります。合わせて折り返しの電話が可能な時間帯を確認しておくとさらに「気が利く人」になるでしょう。

その際注意すべき点が第6回でお話した「ご連絡先を頂戴できますか?」という間違った尋ね方でしたね。「頂戴する」は、そもそも「受け取る」という意味です。名前や電話番号は、相手から「受け取る」ものではなく「尋ねる」ものです。

したがって「ご連絡先をお聞かせいただけますでしょうか」と正しい尋ね方をしましょう。また前に「恐れ入りますが」「失礼ですが」などのクッション言葉を入れて、「恐れ入りますがお電話番号をお伺いしてもよろしいでしょうか」とするとより丁寧な表現になります。

2.電話メモの書き方、伝え方

ではそういった名指し人へのメモを書く際にはどのようなことに配慮すればよいでしょうか。会社によっては電話があった旨をメモやメールで名指し人に伝える際、パッと見ただけでわかるよう簡潔に書くことがポイントです。丁寧な字で、

・電話を受けた日付と時刻
・名指し人
・相手方の社名、氏名、電話番号
・用件
・折り返しが必要かあるいはかけてくるのか
・電話を受けた自分の名前

など、見やすく記すことが大切です。その際配慮すべきことは、相手の名前を漢字だけではなく、平仮名やカタカナを書き添えるということです。

例えば「山崎様」からの電話があったことを漢字で伝えてしまうと、「ヤマサキ様」なのか「ヤマザキ様」なのかわかりません。「河野様」も「カワノ様」なのか「コウノ様」なのか漢字表記だけではわからないので、名指し人が折り返したときに名前の呼び方を間違えてとても失礼な電話になる恐れがあります。

また先方の会社に複数の「田中様」「佐藤様」「鈴木様」がいらっしゃる可能性もあるので、そのような場合は「□□課の田中係長」など肩書きを記すことで相手が明確になり、折り返しの電話がスムーズになります。

どのようなメモを残すかで、周囲の先輩方の評価は大きく変わってきますから、心づかいと配慮の行き届いた書き方を心がけたいと思います。

  • 電話メモの書き方

    電話メモの書き方

3.先方の緊急度を確認する

名指し人が外出中で電話に出られないときには「課長の鈴木はただ今外出しております」と、不在の旨を伝えますが、ここでも少し機転を利かすだけで高評価につながります。

まずスケジュールやホワイトボードで帰社予定の時間を確認し、不在であることだけではなく、「午後3時に戻る予定ですが、お急ぎでしょうか?」と相手の緊急度を確認することがポイントです。

先方が急ぎの場合は、

「鈴木に連絡し、折り返し〇〇様にお電話するよう申し伝えます」

急ぎでない場合は、

「鈴木が戻りましたら〇〇様からお電話があった旨申し伝えます」

と返事の仕方が変わってくるからです。

そして、スケジュールの確認に時間がかかる場合は、「鈴木の予定を確認いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか」と言って電話を保留にし、予定を確認しましょう。

このとき相手方をお待たせしないよう、朝一に職場の先輩方の予定を確認し、把握しておくとさらに「デキる新社会人」と評価されることになるでしょう。

4.社内にいる名指し人の不在を伝える際の配慮

名指し人が会議中などで席を外しており、社内にいる場合は、 「課長の鈴木はただ今席を外しております」と伝えますが、外出時と同じように、会議などの終了予定時刻を確認し、

「午後2時に戻る予定でございます。戻りましたら折り返し電話するよう申し伝えますがよろしいでしょうか?」

と相手方の緊急度を確認します。重要クライアントからの緊急の電話などは、会議室まで赴いて取り次いでほしいケースもあります。そのような場合は、

「△△株式会社の〇〇様から緊急の電話が入っております。電話番号は×××-××××です」

とメモに書いて、そっと手渡すとスマートです。 なお、トイレなどで席を立っている場合には、そのまま伝えることは避けます。

「ただ今席を外しておりますが、すぐに戻ると思いますので、折り返しお電話するよう申し伝えます」

と機転を利かした応対をしましょう。

5.誤って切ってしまった場合

転送など、ビジネスフォンには一般の家庭電話にはないような多くの機能があるため、操作に慣れずに誤って電話を切ってしまった、などということがあるとたいへん失礼です。

もし、取り次ごうと保留にしたつもりが誤って切ってしまった場合、先方からかけ直してもらうのはマナー違反です。先方の電話番号がわかる場合は、すぐにこちらからかけ直します。そして、「先ほどはこちらの手違いでお電話を切ってしまい、たいへん失礼いたしました」とお詫びの言葉を述べ、再び名指し人に取り次ぐようにします。先方の連絡先が不明な場合は、名指し人にその旨を伝え、対応してもらうようにしましょう。

6.切る前に自分の名前を名乗る

電話を切る前には、

「私、江上が承りました。お電話ありがとうございました」

と一言添えると、相手への印象がアップします。自分の名前をきちんと名乗ることで、その電話の責任の所在を明確にすることができます。「責任を持って私が取り次ぎます」という思いを込めて、自分の氏名を名乗りましょう。

  • 電話対応の正しいマナー

    電話応対の正しいマナー

7.話を切るときの配慮とマナー

また電話を切る際の挨拶も大切です。こちらは会話が終わったと判断して切っても、相手に突然電話を切られた、ブツ切りされたと感じられては失礼な印象を与えることになってしまいます。電話を切るタイミングがわかるような挨拶をすることによって、「もう電話を切る」という認識を共有することができます。

電話をかけた場合でも、かけってきた場合でも、

「お忙しいところありがとうございました」
「よろしくお願いいたします」
「失礼いたします」

という言葉で締めると好印象で電話を終わらせることができます。 また電話は、基本的に「電話をかけた側が先に切る」のがマナーです。相手が先に切ったことを確認してから受話器を置くようにしましょう。

このとき、ガチャッと大きな音が聞こえると、相手はとても不快な思いをします。切る音を鳴らさないのが鉄則。まずは手で受話器を置くフックを押して電話を切り、その後受話器を静かに置くようにすると、職場の周囲の方にも好印象を与えます。