悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、疲れがとれないまま月曜日を迎えている人へのビジネス書です。

■今回のお悩み
「疲れがとれないまま月曜日の会議を迎える時がつらい」(52歳男性/営業関連)


僕は独立してから20年以上経ちますが、それでも今回のご相談内容を拝見した結果、当時の自分が月曜朝に感じていたつらさを鮮明に思い出してしまいました。

ですから、すごく共感できるのです。会議のあるなしにかかわらず、月曜日の出社は気が重いものですよね。

でも会社勤めをしている以上、「つらいから」という理由で逃げるわけにもいきません。「だからつらい」のだという負のスパイラルに陥ってしまっても無理はありませんが、できることならネガティブになることは避けたいところ。

「つらい」「苦しい」と考えれば考えるほど、どんどん追い詰められていってしまうからです。そこでネガティブな思いにはあえて目を向けず、書籍のなかからヒントを探してみることにしましょう。

体を動かして温める

精神科医である『ストレスが消える朝1分の習慣』(西多昌規 著、フォレスト出版)の著者は、ストレスが人のパフォーマンスに影響を与えると指摘しています。少しでも「悪いストレス」を消し、脳機能と体のポテンシャルを上げながら仕事に向かうことが重要だという発想。

  • 『ストレスが消える朝1分の習慣』(西多昌規 著、フォレスト出版)

ただ、それは時間のかかることでもあるでしょう。そこで著者が提唱しているのが、「生活習慣を変えてストレスを克服する」方法。体のリズムを変えることで、多くの不調を解消できるというのです。

人間の体内時計は、個人差はありますが24時間よりも数十分長いことがわかっています。つまり、人の脳は、毎朝「時差ボケ」を起こしているのです。
この数十分のズレを整えれば、「悪いストレス」が消えていき、自分の能力を最大限に引き出せます。(「はじめに」より)

このような発想を軸として、体内時計を整えるために「朝1分でできる習慣」を紹介しているわけです。

ところで朝起きたばかりのとき、「寝続けていたい」と感じることがあります。それは、「睡眠惰性」という脳が持つ習慣の影響なのだとか。だとすれば、「朝はみんなつらいのが当たり前」と考えることもできそうです。とはいえ、発想の転換をするだけで朝のつらさを克服できるわけでもないのがつらいところ。

そこで著者は、睡眠の基礎に戻ることを勧めています。

体温が下がってくると、眠くなってきます。
赤ちゃんが眠るときに手足がぽかぽか温まってくるのは、体の深部の体温を逃がしているためです。専門用語を使うと、熱が外部に逃げていく「放熱」をするときに、眠くなることがわかっています。
では、目を覚ましてシャキッとするには、逆のプロセスを踏めばいいことになります。
すなわち、体を温めるわけです。ただし、暖房をつける、厚着をするといった道具で温めるのではなく、自力で体を温めることが必要です。(57〜58より)

具体的に重要なのが、体を動かすこと。といっても、いきなり起きてジョギングをしようというような極端な話ではありません。ベッドのなかでできる範囲で、手足や体幹を動かすだけで十分なのだそうです。

手をグーパーする、腰を浮かせる、足をバタバタする、左右にゴロゴロ向きを変えるなど。子どもがむずがるような動きをすることが、体の重さを軽くするというのです。

動いたあとでも、立ち上がって活動するにはまだ体が重いなあと感じたり、あるいは立ちくらみがしそうなのであれば、ベッドの上でいったん「正座」をしてみるのもいいそう。

正座は、寝ているポーズと立ったポーズの間のポーズ。そのため正座をすれば、スムーズに朝の活動に入りやすくなるということのようです。

寝起きにコップ1杯の水を飲む

健康管理・体調管理は、ロジカルシンキングやITスキル以上に大切な、ビジネスの基礎スキルだと私は考えています。なぜなら身体は、もっとも重要な仕事道具だからです。適切に取り扱い、きちんと手入れをすれば、思う存分力を発揮するツールです。これを管理するのは、ビジネスパーソンとしての責務と言えるでしょう。メーカーの方々が工場の設備を毎日メンテナンスしているように。(「はじめに」より)

『仕事で成果を出し続ける人が最高のコンディションを毎日維持するためにしていること』(平井孝幸 著、東洋経済新報社)の著者は、このように主張しています。DeNAで、社員の健康サポートを担当する専門部署である「CHO(Chief Health Officer最高健康責任者)室」を立ち上げた人物。

  • 『仕事で成果を出し続ける人が最高のコンディションを毎日維持するためにしていること』(平井孝幸 著、東洋経済新報社)

社員に毎日最高のコンディションで仕事をしてもらうために、ヘルスリテラシーが高まるようなアプローチをすることで、各自が自分流の健康術を編み出し実践できるようにすることをミッションとしているのだといいます。

つまり本書にも、そのノウハウが盛り込まれているということ。その特色は、「お金も時間もかからないサステナブルな健康法」「すべて専門家の監修のもとでお勧め」という2点に集約されるそうです。

すぐに取り入れることができ、しかもDeNA社員や著者自身でその効果の実証実験をしてきたメソッドであるところが魅力。

当然ながら"寝起き"にすべきことも数多く紹介されていますが、なかでも気づきにくいポイントだといえそうなのが「水の飲み方」。目覚めにコップ1杯の水を飲むといいとはよく聞く話ですが、それは、1日の仕事のパフォーマンスを高めるためにも理にかなった行動だというのです。

眠っている間にも、人間は水分を失っているのです。だから朝起きたときは、少なからず脱水症状になっています。まずこれを補う必要があります。
そして、口内は神経が数多く集中している部位なので、水を飲むことでそれらを刺激し、脳と身体のスイッチを入れることもできるのです。(34ページより)

また、寝起きに水を飲む際の重要な注意点は、水を飲む前にうがいをしたり、歯磨きをしたほうがいいということ。いうまでもなく、眠っている間に口内には多くの雑菌が増殖しているからです。そのため、いきなり水を飲んでしまうと、その細菌をすべて飲み込んでしまうことになるわけです。

私がお勧めしているのは、うがいをし、歯磨きするだけでなく、フロスや糸ようじなどの歯間洗浄具、舌クリーナーなど、オーラルケアを起き抜けにすぐやる、ということです。先にも述べましたが、口の中は神経が集まっていますので、きちんと手入れをしてあげると、それだけでもさっぱりします。本当に気持ち良いので未体験の方はぜひフルコースでケアしてみてください。(35ページより)

そして、口のなかをさっぱりさせてから水を飲む。わずか数分ですむそんなひと手間の習慣が、身体のスイッチをうまく入れてくれるということです。そんな気持ちのいい状態なら、週の初めの会議にも前向きな気持ちで臨めるかもしれません。

深呼吸で「息抜き」をする

ところで、月曜の朝を肯定的に迎えられない理由のひとつに、「疲労」の存在があることは間違いなさそうです。

何歳になっても元気に、高いパフォーマンスを発揮していくためには、その時々でしっかり疲労を回復していくことが必要なのだということを忘れないでください。(「はじめに」より)

鍼灸師である『寝てもとれない疲れをとる本』(中根 一 著、PHP文庫)の著者も、このように主張しています。なお、鍼灸師が現代人の抱える疲労に警鐘を鳴らしていることには理由があるそうです。

  • 『寝てもとれない疲れをとる本』(中根 一 著、PHP文庫)

疲れている状態では、病気やストレスへの抵抗力や回復力を十分に発揮することは困難。そんななか、疲労によって引き起こされるさまざまな問題を未然に防ぐことこそが、鍼灸師が専門とする「東洋医学」の本当の使い方だというのです。

すなわち本書は東洋医学の観点から、疲れをとる方法について考えているわけです。とはいえ難しい内容ではなく、紹介されているのはすぐに試せることばかり。たとえば第4章「『疲れない体』のつくり方」のなかでは、「息抜き上手」になることの重要性を説いています。

ずっとデスクでパソコンと向き合っているような時間は、東洋医学的にいうと「漂っている」状態。ひとつの事柄に集中していると交感神経が優位に働き、身体は緊張状態になってしまうわけです。そこで大切なのは、体だけでなく、仕事の環境にも東洋医学的なお手入れをすること。

まずは意識を深呼吸に集中させて、深く吸い込みます。次にゆっくりと息を吐くと、横隔膜が刺激されて、セロトニン神経というリラックス系の神経が刺激されます。セロトニン神経の影響を受けている筋肉は、顔、首、肩、背中、腰、太腿、ふくらはぎ……いわゆる「こる」エリア全体に及びます。その広い範囲の筋肉が、深呼吸によって息を抜くだけで、ゆるんでいくのです。(165ページより)

また動作だけではなく通常の「息抜き」、つまり効果的な"ひと休み"も体への大事なアプローチ。

ただし気をつけなければいけないのは、「仕事をしながら息抜き」はできないということ。コーヒーを飲みながらデスクワークをするという方も多いでしょうが、それでは息抜きにも気分転換にもならなくて当然なのです。

その考え方は、朝の会議に臨む際にも応用できそう。たとえば、朝一番に屋上で深呼吸をするなど「いつもとは違う」ことをしてみてから会議に出れば、気分も違ってくるのではないでしょうか?