「0から1を生み出すような新しい発見がある」─ このような本と出会えることが翻訳書づくりの魅力と語るのは、ダイヤモンド社で書籍編集長を務める土江英明氏だ。

  • ダイヤモンド社 書籍編集局第4編集部 編集長の土江英明氏

    ダイヤモンド社 書籍編集局第4編集部 編集長の土江英明氏。「伝え方が9割」「面接の達人」「フューチャー・イズ・ワイルド」「なぜあの人は人前で話すのがうまいのか」「カエルを食べてしまえ! 」など、一度はその名を聞いたことがあるであろう名著を数多く編集してきた

ベストセラーの『伝え方が9割』を始め、数多くのビジネス書や自己啓発書を手掛ける土江氏は、今年4月、女性層にも受け入れられる新しいビジネス翻訳書『小さな習慣』を作り出した。同書がヒットした裏側、そして「小さな習慣」がもたらす効果について、ビジネスプロデューサー・書評ブロガーの徳本昌大が聞いた。

224ページで習慣化の方法をわかりやすく伝える『小さな習慣』

今回話題に上がった翻訳書籍は、スティーヴン・ガイズ著『小さな習慣』。この本は「毎日これだけはやると決めて必ず実行する」、その方法をわずか224ページで紹介している。

この『小さな習慣』では、「すべてのことは、習慣化し、目標を達成でき、夢を叶え、人生を変えることができる」ことをエビデンスをもって伝えているという。

自己啓発本の多くは書いてあることに「なるほど」と納得しても、実践にはなかなかたどり着けないもの。しかし同書では、良い習慣を身につける方法、悪い習慣を捨てる方法を非常にシンプルかつ力強く説明しており、「実際にやってみよう」という意欲が湧いてくるのだという。

ビジネス翻訳書らしからぬ小さなクマの表紙が生まれた理由

土江氏は自身が担当する書籍選びのポリシーについて、「心を揺さぶられる考えに出会い、読者の方がその考えを実践して目標や夢に近づくイメージができる書籍を企画したい」と語る。『小さな習慣』も、このポリシーに基づいて選書されたものだ。

このほか、書籍のタイトルと表紙のデザインにも注力しているという。本の内容が面白くとも、店頭で読者に興味を持ってもらえなければ、その本は読者の目に留まることはないとの考えからだ。

  • 徳本昌大と土江英明氏

    「『小さな習慣』は、これまで本を読む習慣を持っていなかった人にも読んでもらえました。それがヒットにつながった理由ではないかと思います」と土江氏は述べる

『小さな習慣』の原著は、表紙がリアルな鳥の写真で飾られていた。アメリカでは"ありがち"な表紙といえるが、これでは日本人受けは難しい。そこで土江氏は、"小さなクマが本を読む"というシンプルなイラストのデザインを選び、日本人が手に取りやすい形にアレンジして世に送り出した。「このデザインはビジネス翻訳書としては異色で、編集部でも評価が二分されました」と土江氏は語る。

このビジネス書らしからぬ表紙の効果もあり、ビジネス翻訳書のコア層となる30~40代男性ビジネスパーソン層だけでなく、女性をはじめとしたこれまでとは違う読者層の心を掴んだそうだ。

さらに『小さな習慣』は、読みやすさへの工夫も施されている。「翻訳本は、章の構成が複雑なことが多いんですね。見出しの立て方などが代表例です。今回の翻訳では、理解しにくい見出しは省略してシンプルにしたり、逆に読みやすいように見出しを追加したりしています」と土江氏は振り返る。『小さな習慣』が9万部もの売り上げを達成し、2017年のヒット作となった理由は、このような工夫にあったといえよう。

目標を細分化して、一日一個達成しよう

この翻訳書で語られる"小さな習慣"を身につけることは、ビジネスパーソンにとっても大きな前進となる。例えば、通常業務から一歩踏み出して新しい企画書を作るのは非常に負担を感じるもの。だが、企画書にタイトルをつけるだけでも、そこからさらにイメージが広がる。そうしたら次は、見出しを付ければいい。毎日必ず前に進めること習慣化すれば、いつか必ず目標は達成できるのだ。これは日常的な習慣、例えば読書でも掃除でも、筋トレでもダイエットでも言えることだろう。

『小さな習慣』は、ビジネスパーソンはもちろんのこと、「何かをしたいのだけれど、何からしたらいいかわからない」そんな悩みを抱える老若男女に薦めたい一冊となっている。一歩踏み出して、新しいことを始めたい方は、ぜひご一読いただきたい。

小さな習慣

小さな習慣とは、毎日これだけはやると決めて必ず実行する、本当にちょっとしたポジティブな行動。この方法を使えば、すべてのことは、習慣化し、目標を達成でき、夢を叶え、人生を変えることができる。何しろ「小さ過ぎて失敗しようがない」のですから。


スティーヴン・ガイズ 著/田口未和 訳
定価:本体1,400円+税
発行年月:2017年4月