皆様こんにちは、マネックス証券の益嶋です。「目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場」第7回をお届けいたします。本コラムでは、「これから投資を始めたい」「投資を始めてみたけれどなかなかうまくいかない」といった方向けに、投資家としてレベルアップするための色々な知識をお伝えしていきます。今月もまずは最近のマーケット動向を簡単にご紹介します。

冴えない日本株

日本株が軟調です。2月に入って急落し一時は2万1,000円を割り込む場面もあった日経平均はその後持ち直し一時は2万2,500円近辺まで値を戻しました。しかしその後下げ基調となり再び2万1,000円どころまで下落しました。その後やや上昇しましたが本格反発からは程遠い弱々しい展開で、このコラムを書いている3月19日の前場終了時点で日経平均は2万1483円となっています。

日本株が冴えない最大の要因は、円高の進行とそれに伴う企業業績の鈍化懸念でしょう。19日現在米ドル/円は105円台で推移しています。ドル円がこの水準で推移すると、輸出企業を中心に来期の業績が鈍化するのではとの懸念が出ています。原則として企業は通期決算の発表時に今期の業績予想を発表します。元々企業の予想は保守的になりやすいもの。もしかすると来期の企業利益は今期に比べて減益になるのでは……? という悲観的な予想も出てきているようです。

さらに、もしかするとより深刻になりかねない、財務省の決裁文書書き換え問題が明るみに出ました。この問題を受け既に複数の報道機関の調査で安倍内閣の支持率が30%台まで急落しています。より事態が深刻化してもし安倍総理が退陣に追い込まれるような事態になれば、日本株は一段の下落に見舞われる可能性が高そうです。「アベノミクス・マーケット」という言葉に象徴されるように、この数年間の日本株の上昇は大規模な金融緩和や財政出動などの「アベノミクス」に支えられてきました。やや過剰に悲観的かもしれないと筆者自身も思いますが、リスク要因として「アベノミクス・マーケットの終了」ということは頭に入れておいたほうが良いかもしれません。

会社四季報が最新号に更新

では今月も本題に入っていきましょう。このコラムをお読みいただいている方であれば「会社四季報」という言葉を1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?東洋経済新報社が制作している投資書籍で、上場企業のビジネスの内容や過去の業績、今後の業績予測まで掲載されているまさに日本の投資家の「バイブル」とも言える存在です。筆者の所属するマネックス証券に口座をお持ちであれば、会社四季報はどなたでも無料でご覧いただけます。3月16日に会社四季報の最新号が発売されたということもあり、今月は会社四季報を投資に活かす方法を3つのポイントにまとめて簡単にご紹介します。

ポイント1:「特色」と「連結事業」をチェック

短期・長期・ファンダメンタルズ重視・テクニカル重視と投資には色々なスタイルがありますが、どのようなスタイルの投資であれ、企業がどんなビジネスを展開しているかというのは最低限頭に入れておいたほうが良いでしょう。会社四季報の「特色」欄を見れば、企業がどのようなビジネスを展開しているのかすぐにわかります。以下に示したロイヤルホールディングス(8179)の場合、「ロイヤルホスト」などの外食ビジネスの他にホテルや機内食も展開していることがわかります。また、「連結事業」欄を見れば各ビジネスの売上比率と利益率がわかります。ロイヤルホールディングスの場合売上の45%は外食で、20%が外食です。そしてカッコでくくられた数字がそのビジネスの利益率です。外食は5%、ホテルは15%とホテルビジネスの方が利益率が3倍も良いということです。

ロイヤルホールディングスの「特色」と「連結事業」

  • 最近、冴えない日本株

    (出所)マネックス証券に掲載されている会社四季報2018年2集のデータ

ポイント2:売上や利益の伸びをチェック!

このコラムで何度かお伝えしている通り、企業の業績と株価は中長期的に見ると見事に連動します。今後の企業の業績を予測する上で、過去の業績を把握することは非常に重要です。また、会社四季報には東洋経済新報社が独自に予想した今後の業績予想も掲載されています。ロイヤルホールディングスは過去から業績がしっかりと伸びてきており、今後も業績が伸びていく見込みであることがわかります。(もちろんこの予想は外れる場合もあります。)

ロイヤルホールディングスの業績推移

  • (出所)マネックス証券に掲載されている会社四季報2018年2集のデータ

ポイント3:「有利子負債」と「現金等」を比較する!

会社四季報には企業の「有利子負債」と保有する「現金等」が掲載されています。この2つを比較して「現金等」の方が多ければ、その企業は「実質無借金経営」を行っていることになります。そのような企業であれば例えば「リーマン・ショック」のような経済危機に見舞われた際にも資金繰りに行き詰まるリスクが低いと考えることができます。以下に示したのは日本テレビホールディングス(9404)の「有利子負債」と「現金等」です。単位が違うため少しわかりづらいですが、有利子負債が51.42億円であるのに対し保有する現金等は370億円あります。つまり日本テレビホールディングスは実質的に無借金であるというわけです。

日本テレビホールディングスの財務状況

  • (出所)マネックス証券に掲載されている会社四季報2018年2集のデータ

いかがだったでしょうか。とっつきにくそうに思える会社四季報も実はポイントを押さえることで簡単に企業分析に活かすことができます。ぜひ今回ご紹介したポイントを活用して銘柄分析をしてみていただければと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。ではまた次回!

執筆者プロフィール : 益嶋 裕

マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年4月にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。2017年8月より現職。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。
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