自治体による自転車保険への加入義務化を受けて、自転車事故への備えについて真剣に考えはじめた方も多いのではないでしょうか。前回は、自転車を取り巻く現状についてお伝えしました。今回は、自転車保険の内容と保険を選ぶ際に注意していただきたいポイントをお伝えします。
自分と相手への備え、両方セットが自転車保険
自転車保険とは、傷害補償と個人賠償責任補償がセットになったものです。自転車乗車時の事故による自身のケガや、相手にケガを負わせてしまったり、物を壊してしまったりした場合などに備えることができます。
保険料は月額数百円程度から加入でき、保険会社だけではなく、インターネットやコンビニエンスストアで気軽に加入申し込みができるものもあります。
保険料も安く、加入も手軽となると、内容を理解しないまま安易に加入しがちです。しかしいくら保険料が安いからといって、必要のない保険に加入するのはもったいないですよね。加入内容を理解していなければ、もしものときにも保険を活用することができない可能性もあります。
しっかりと保険の内容を理解し、本当に自分に必要な内容なのかをよく検討した上で加入したいものです。
自治体の加入義務化は個人賠償保険のみ
自治体の自転車保険への加入義務化の流れは、今後ますます加速すると思われます。しかしこの加入義務化をきっかけに自転車保険への加入を検討している方は、少し注意が必要です。自治体で加入が義務付けられているのは、先程挙げた傷害補償と個人賠償責任補償のうち、"個人賠償責任補償のみ"なのです。
全国で初めて加入が義務化された兵庫県の条例にも次のように明記されています。
第13条 自転車利用者は、自転車損害賠償保険等(その自転車の利用に係る事故により生じた他人の生命又は身体の損害を填補することができる保険又は共済をいう。以下同じ。)に加入しなければならない。ただし、当該自転車利用者以外の者により、当該利用に係る自転車損害賠償保険等の加入の措置が講じられているときは、この限りでない。
引用:兵庫県 自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例
つまり、自転車事故による他人への損害を補填する保険への加入を義務付けているのであって、自分自身のケガに対しては義務付けられていない、ということになります。万が一自転車事故で加害者になってしまった場合に、被害者の損害をきちんと賠償できる保険にすでに加入しているのであれば、必ずしも自転車保険に新たに加入する必要はありません。
自転車保険を選ぶ前に頭の中を整理しよう
自治体による加入義務は個人賠償責任補償に対してだけですが、それだけでご自身の自転車事故に対する不安が解消されるかどうかはまた別の問題です。
自転車保険への加入を検討する際に大切なことは、保険商品を比較検討する前に、ご自身がどんなことに対してどれくらい備えたいかを具体的にしておくことです。
- 補償金額はどれくらい必要?
- 相手への補償だけではなく、自分のケガにも備えは必要?
- 自分のケガは入院・通院ともに補償は必要?
- 相手との交渉を引き受けてくれる示談代行サービスは必要?
- 故障時に搬送してくれる自転車ロードサービスは必要?
といったように、自分の求める補償内容をより明確にしておくことで、保険を選ぶ際の基準ができて、比較もしやすくなります。
また備えたい内容によっては、すでにご自身が加入している保険でカバーできる場合もあるので、新しく保険へ加入する前にすでに加入している保険の補償内容をもう一度確認してみることをおすすめします。ご自身でわからない場合は、加入した保険代理店や保険会社へ確認してみましょう。
今回は自転車保険ついてご紹介しましたが、実は自転車事故への備え方は自転車保険以外にもあります。次回は、自転車保険以外で自転車事故に備える方法をお伝えします。
筆者プロフィール: 長谷部敦子
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ラーゴムデザイン代表 長谷部敦子 ファイナンシャルプランナー、マスターライフオーガナイザー、メンタルオーガナイザー。父親の看取り介護、自身の結婚を通して、「心」と「お金」の整え方を知ることの必要性を感じ、学びを深める。2012年・2014年の出産を経て、2015年に「しなやかな生き方をデザインする」をコンセプトに起業。家計・起業・扶養などに関わるお金の悩みや、働きたい女性のメンタルについての相談・講師業を中心に活動。働く母の目線で、日々のくらしを快適にする仕組みづくりについての執筆も行っている。「生き方デザイン.com」