ワニブックスは、このほど『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』(1,650円/竹内康二著)を発売した。本書は、85年間の研究成果から導き出された「行動の技術」で、「後回し」「手に付かない」「気が乗らない」を解決する一冊。

  • 『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』(1,650円/ワニブックス刊)

著者は、明星大学心理学部心理学科・教授の竹内康二氏。学校や企業において、一般的な対応では改善が難しい行動上の問題に対して、応用行動分析学に基づいた方法で解決を試みている。

今回は同書の中から、行動分析学的に正しいToDoリストの使い方を紹介。ぜひ自身のやり方と比較しながら、読んでみてほしい。

■行動分析学的に正しいToDoリストの使い方

予定通りに行動するためにToDoリストを使うのも、スケジュール帳の活用と並ぶ王道の方法でしょう。セルフマネジメントのツールとしての、ToDoリスト活用法を考えていきましょう。

まず、ToDoリストをつくるには、自分がやるべき行動を端的に箇条書きする必要があります。これは、セルフマネジメントで最初にやるべき「標的行動の定義」そのものと言えます。

先にご説明した死人テストを思い出しながら、標的行動をリストに記入していきます。「〇〇を頑張る」ではなく、「○○までに△△さんに□□する」というように、「期限」と「相手」を「明確な行動」を記入することができれば効果が高まります。

明確な行動を記入するためには、行動を細分化するのが一番です。たとえば、「〇〇について企画を考える」という行動には、その前段階の「資料を集める」とか「△△さんに相談する」といった行動が含まれます。

たとえば、相談するには△△さんにアポイントを取ることになるので、「メールで相談日時を調整する」行動が必要になります。企画を考えるということを細分化すると、いくつかの行動が並行して、かつ連続的に行なわれることがわかります。

記入方法、運用法、ツールの選び方

そのため、ToDoリストの記入の方法には、いくつかのやり方が存在することになります。

【方法1】 「企画を考える」などと大枠のやるべきことをToDoリストに記入して、そのために必要な行動はその都度頭の中で考えて行動する。
【方法2】 難易度が高くて行動を起こしにくい行動や、忘れてしまいがちな行動など、細分化された行動の中で、特に重要と思われる行動だけをToDoリストに記入する。
【方法3】 細分化された行動をできるだけたくさんToDoリストに書いて、あとは深く考えずにそれを順番にこなしていく方法。

予定通りに行動できそうなときは【方法1】でいいでしょう。しかし、作業が思うように進まないと感じたら【方法2】を使い、それでも動き出せない自分に気づいたら【方法3】を使うといった、段階的な運用をするといいでしょう。

また、行動の期限に応じて、どのようなツールを使って記入するのかも考えたほうがいいでしょう。たとえば、期限が1カ月以上先ならスケジュール帳やカレンダーにToDoを記入するのでも良さそうですが、数日以内にやるべきことなら付箋に書いて机やパソコンなど目につく場所に貼っておくのがいいでしょう。

ToDoを見ることは行動を促す"キッカケとしての自己教示"になるので、貼る場所はかなり重要です。その日のうちにやらなければならないことなら、手の甲にToDoを記入する方法もいいでしょう。なんといっても手の甲に書かれた文字は、毎日数十回以上視界に入るための行動のキッカケとしての効果は抜群です。

記入するペンが油性であったとしても、徐々に消えてしまうため、文字が消えてしまう前に作業を終わらせたいという動機も生まれる可能性があります。手に書いたToDoのメモを他人に見られるのは少し恥ずかしいかもしれませんが、その恥ずかしさがあるからこそ、早く行動を完了させて手の甲の文字を消そうとも思えるでしょう。

■削除の喜びも重要!

ToDoリストは、終了したら削除することも重要です。

自分のパソコンや机や手帳にたくさんのメモや付箋が貼られ、増え続けて処理できなくなってしまっては良くありません。ToDoリストは、作業終了時に、記入内容に二重線を引いたり、付箋を剥がして捨てましょう。それが強化子となるからです。

視覚で認識できるToDoリストは溜めてしまうと、それ自体が嫌悪刺激になります。その逆に、削除したり、捨てたりして、ToDoが減っていくと、手ごたえを感じられます。リストの行動項目が減ることで次の行動が促されるなら、それは「除去型強化」です。

ToDoリストは、「企画を考える」のような行動の強化子(企画がひらめいて文書化される)が生じるまでに、やらなければならない動き出すために負担のある行動を促す役割を持ちます。

つまり、「即時結果VS遅延結果」の問題への対策なのです。ポジティブな将来の結果を手にするまでに、やらなければならない数多くの行動をやり抜くために、除去型強化(達成したリストの削除)を自分で行なっているのです。

この理屈がわかれば、リストを削除することの重要さも理解できると思います。リストの行動が完了できたら、できるだけ早く達成感を味わいつつ、二重線を引くなり付箋を剥がすなりして、ポジティブな即時結果を自分に与えてあげましょう。「よしよし」と頷うなずきながら付箋を剥がして、ゴミ箱に捨てましょう。

小さな喜びがこまめに得られる機会を大切にすることが、先延ばしをせずに予定通りに行動するためのコツです。


書籍『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』(1,650円/ワニブックス刊)

  • 『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』(1,650円/ワニブックス刊)

同書では、本稿で紹介した以外にも「すぐやる人」「後回ししない人」に変われるヒントを行動分析学に基づいて解説。気になる方はチェックしてみてはいかがだろうか。