テレビや新聞、インターネットなどのメディアで旅客機の大きさの表現が微妙に違うことに気が付いたことはないだろうか。実際、大型機・中型機・小型機など大きさの区別は曖昧なのである。
747とA380とは文句なしの大型機
かつて日本国内線を飛びまわっていたジャンボジェットことボーイング747。それと総2階建てのエアバスA380。これらの飛行機は2階席があるくらいだから大型機としか呼ばれない。ワイドボディと称される2通路機で、エンジンが4基(4発機)なのも同じ。標準座席数は747が416~467席、A380は525席とどちらも自社最多だ。
これ以外の4発機にはA340シリーズがあるが、下がり気味とはいえ燃料代が経営を圧迫する現代の航空業界では、評判はそれほど芳しくない。燃油代が最もかさむ4発機であるのに関わらず標準座席数は平均で360席前後と747やA380よりも少なく、たとえ満席でも乗客からの運賃収入は単純計算で少なくなる。そのためA340は現在生産されていない。
全長37mも10m未満も同じ小型機!?
大型機の次に大きいのはもちろん中型機だが、その前に分かりやすいので小型機の話をしよう。
小型機と聞いてまず思い浮かべるのはプロペラ機のATR72(標準座席70席前後)のほか、映画でセレブが乗っているガルフストリームなどのいわゆるプライベートジェット、あるいは小型プロペラ機の代名詞となっているセスナ社の軽飛行機ではないだろうか。これらの飛行機は見た目も小さく、誰もが小型機だと思うだろう。
ところが、2012年から日本国内で運航をはじめた低コスト航空会社(LCC)が使っているA320や737も、一般に小型機と呼ばれている。しかし、A320や737の標準座席数は180席以上もある。見た目に分かりやすいのは機体の長さだが、例えばA320が全長37.57mなのに対し、ガルフストリームの最新機G500は29.4m、セスナ社のプロペラ機にいたっては10mに満たない機種もある。
LCCに乗る際、ボーディングブリッジ(搭乗橋)ではなく機体の下からタラップを上って搭乗することも多いが、A320などの小型機でも間近で見るとかなり大きく感じる人もいるだろう。
新型機多数の中型機が一番複雑
では、その180席クラスの機種を中型機と呼べばいいかというと、それも難しい。それより一回り大きい機種に250~300席前後の767やA330があり、その上には近年777やA350-900/1000といった300席~350席クラスの機種も登場している。さらにややこしいことに、それらの中間規模の787-8/9やA350-800といった300席弱の新型機も生産されるようになった。
最近の旅客機は路線ごとの需要(旅客数)に細かく対応して設計・製造されるため、規模や大きさのバージョンがより細かく分かれるようになっている。
航空管制ではヘビー・ミディアム・ライトの3種
ちなみに、大型機・中型機・小型機を明確に区別する基準は一応ある。それは、航空管制で定める基準で最大離陸重量がもとになっている。
最大離陸重量とは機体そのものの重さ、積める乗客や荷物、そして燃料を合計した重さのこと。航空管制用語は全て英語で表現され、最大離陸重量30万ポンド/136t以上をヘビー、同1万5,500ポンド/7t~30万ポンド/136t未満をミディアム、1万5,500ポンド/7t未満をライトと称する。
これに前述の機種を当てはめると、747、A380、777、767、787、A330、340、350などの2通路機はヘビー=大型機、737や320、ガルフストリームG550などのナロウボディ(単通路)機はミディアム=中型機、セスナのプロペラ機などの軽飛行機はライト=小型機に、それぞれ分類されてすっきりはする。
ただ、前述した総2階建てのA380のような525席旅客機と787-8のような300席弱の旅客機が、同じ大型機というのも違和感がある。例えば、747やA380のような2階席が機種を"超大型機"、777やA350-900/1000のような300席以上の機種を大型機、787-8/9や767、A330、A350-800 などを中型機、737やA320、ATR72などを小型機、セスナ機などを"超小型機"と分類すればしっくりくるように思えるがどうだろうか。