飛行機に乗っていると様々な疑問が浮かんでくるはず。「機内食ってコストはどれくらい? 」「行きと帰りでは味にすごく差がある気がするけど? 」などなど。そんなエアラインにまつわる偉大なる無駄知識(トリビア)をご紹介するのがこの連載。第1回は、座席指定のないエアラインのメリットについてお話しよう。
座席指定のないLCC
エアアジアは事前に追加料金を払うことで座席指定ができる。そういうLCCは少なくない |
日本の国内線ではあまり聞かないが、海外では座席指定なしのフライトに遭遇することがよくある。日本人にはノーショー(予約しているのに搭乗当日に来ない、いわゆるドタキャン)をする旅行者が少ないという民族的な理由もあるのだが、一番大きな理由は、海外ではLCC(Low Cost Carrier=ロー・コスト・キャリア)と呼ばれる格安航空会社が一般的になっているためだ。LCCは座席指定なし、が常識なのである。
それでよく混雑なく時間通りに飛び立てるものだと不思議に思うかもしれない。でも、考えてみてほしい。もし自分の席が決まっていないとしたら、あなたならどうするだろうか。「両側に乗客のいる真ん中の席になったらイヤ! 」「トイレが近い私は窓側じゃないと困る」などと不安にかられて、他の人より先に機内に入れるように早めにゲートへ向かうだろう。みんながそう考えるので、搭乗時間に遅れる人は圧倒的に少ない。よって、「定時運航率」が高まるというわけである。
早く席を確保するために、ゲートの一番前に陣取る乗客。バンコク・スワンナプーム国際空港にて |
今はなきノースウエスト航空は、異常に早い時間からゲートに来ない乗客の名前をアナウンスして搭乗を急がせていた。そのやり方はどうかと思うが、そこまでして早めに出発していたのも、定時運航率の高さが航空会社の評価を決める大きなポイントだからだ。
超高級エアラインよりLCCのほうが定時出発率が高い?
ここに、ある航空会社がまとめた具体的な数字がある。ヨーロッパ各地に飛んでいるライアンエアはLCCだが、2009年の定時出発率は90%。これに比べ、大手エアラインのルフトハンザ ドイツ航空は85%、エールフランスは83%などとライアンエアを下回る。ルフトハンザといえば、時間にうるさいビジネスマンから高い支持を得ている超一流のエアラインだが、ライアンエアの定時運航率はそれを上回っていたということだ。
LCCの先駆者であるアメリカのサウスウエスト航空も、定時運航率が優秀だと米国運輸省から表彰を受けるほどである。年によって多少の数字のずれはあるだろうが、総じてこれらのLCCは定時運航率が高いと見ていいだろう。
ヴァージンアメリカは高級志向のLCC。エコノミークラスでも機内食は無料でファーストクラスも設置。ロサンゼルスやラスベガスなど人気都市に飛んでいる |
ANAと共同でエアアジア・ジャパンを設立したエアアジア |
LCCは今や世界に120社ほどあり、中には定時運航率がよくないところもある。しかし、座席を早い者勝ちにしている航空会社には定時運航率が向上する効果があるといえるだろう。日本でもANA系のピーチ・アビエーション、エアアジア・ジャパン、JAL系のジェットスター・ジャパンなどLCCの設立が相次いでいるが、はたして座席指定ありなのか、なしなのか。あるいは有料での座席指定なのか、注目だ。
ちなみに、出発時刻(Departure Time)は正確には、乗降口のドアが閉められる時間を指す。