「いきなり会社から追加で税金を支払うように言われて戸惑っているのですが……」というご相談を時々いただきます。ほとんどの場合は、働き者のお子さんがいることが原因。働き者なのはいいけれど、親サイドの税金が増えるのはちょっと困りますよね。防ぐ方法を考えてみましょう。

高校生・大学生の子供のアルバイトは要注意

所得税を計算するにあたり、所得から差し引くことのできる14種類の所得控除のうち、扶養控除というものがあります。所得税の計算の仕組みについては以前に以前に源泉徴収票の見方に関する記事でご紹介していますので、ぜひ目を通してみてください。

16歳以上の人を扶養している場合に適用できる扶養控除ですが、特に大学に行く年齢である19歳以上23歳未満の子供を扶養している場合には、実際に大学生かどうかに関わらず控除額が38万円から63万円に引き上がります。

ですがこの扶養控除は、扶養されている人に収入がある場合には"扶養しなくても大丈夫でしょう"ということで適用できません。

ここで考えなくてはいけないのが子供のアルバイト。アルバイト収入は給与とみなされます。受取給与額から給与所得控除額を引いた金額を給与所得といいますが、この給与所得が38万円を超えると扶養控除を適用することができません。給与所得控除額の計算は下表の通りですが、結論をいうと年間の給与収入が103万円を超えると給与所得が38万円を超えます。

  • 給与所得控除の計算

子供が年間103万円を超えてアルバイトをすると、その子供は扶養控除の対象にはなりません。

親サイドへの影響

扶養している親側にどのような影響があるのかというと、親の所得控除が38万円または63万円分少なくなります。

■所得税率が10%である場合……

・高校生の子供の場合(16歳以上19歳未満)
 38万円×10%=3万8,000円
 所得税が3万8,000円増額されます。

・大学生の子供の場合(19歳以上23歳未満)
 63万円×10%=6万3,000円
 所得税が6万3,000円増額されます。

この試算は、所得税率10%で行っていますので、所得税率が高い方は増額がもっと大きくなります。

  • 所得税率

また、住民税での控除額は33万円または45万円です。住民税の税率は一律10%ですので、3万3,000円または4万5,000円の増額となります。

会社に子供を扶養の対象として申告していても、マイナンバー等から子供の所得が38万円を超えていたことが分かり、追加で税金を支払うことになるという仕組みです。であれば、あらかじめ子供と相談をしてアルバイトを減らしてもらいましょう。

子供が納得しない……

ですが、大学生からの相談で一番多いものが「親からあんまりアルバイトをするな」と言われたというもの。子供側からすると「あんまり」とはどのくらいかよく分からない上に、自由に使えるお金が減るというデメリットしかないのです。その結果、親に黙ってアルバイトをひそかにせっせとしてしまうのです。でもマイナンバーによって後からバレるという結果に……。

所得税では年間で103万円以下の給与収入であれば扶養控除の対象となるので(住民税では100万円以下)、アルバイト収入は毎月8万円まで、というように具体的な数字を示しましょう。「もっとアルバイトできるのに……」と不満を示された場合は、年間の収入が130万円を超えると国民健康保険に自分で保険料を支払って加入しなくてはならないため、手取りが減ることを伝えましょう。

また、子供自身も所得が多いと税金を支払わなくてはいけません。その額によっては手取り額が減ってしまいます。これで子供をねじ伏せるのもアリですが、家族円満でいい両親になるためには、増えてしまう可能性のある税金の範囲内でお小遣いをあげるという提案をしてみてください。親サイドも子供サイドもハッピーです。ぜひ家族でタッグを組んでトータルで得になる方法を選択しましょう。

国分さやか

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お金の教室 おさいふほんわか心もほんわか 代表
創価大学教育学部を卒業後、旧日本興業銀行の保険代理店や政府系金融機関に従事。"得をする方法を知りたい!"という一般生活者が多いものの、実は金融知識の不足から損をしている場面、しかも損をしていることにすら気付かない場面があまりに多い現実に問題意識を抱く。これを解消することを決意し、金融教育に携わる仕事を希望してFPの資格を取得。金融資産が増やすことだけでなく、幸福度数も増えることを大切にしている。現在、個人相談業務と並行して、金融の基礎知識を学ぶためのセミナーやFP資格講座、高校・大学、企業への出張講義などで活動中。


2013年
・第4回日本一のマネー講師決定戦E1グランプリにてグランプリ受賞
・第4回FP向上のための小論文コンクールにて奨励賞受賞
2014年
・三省堂より初めての出版(その後、学研出版等より計5冊の出版)
・日本FP協会電話相談員
・資格の学校TAC専任講師
2015年
・NHKラジオ「午後のまりやーじゅ」「ごごラジ!」お金のコーナー担当
2016年
・日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター

<保有資格>:CFP、FP技能士1級、相続アドバイザー2級、小学校教諭第一種、幼稚園教諭第一種