
8月29、30日の2日間、台湾・台北市の大型音楽拠点、臺北流行音樂中心(以下、Taipei Music Center)で、「2026 TRENDY TAIPEI 潮臺北 – JAM JAM ASIA 亞洲音樂節」が開催された。本イベントでは、台湾を軸に、日本、韓国、タイ、インドネシア、フィリピン、香港、シンガポールなどから80組を超えるアーティストが集まり、7つのステージで、2日間で計25時間以上にわたってライブを展開した。オフィシャルレポートを掲載する。
アジアの音楽を「見せる」だけでなく「つなぐ」フェスへ
JAM JAM ASIAは、Taipei Music Centerが展開する音楽エキスポ「TAIPEI MUSIC EXPO(TMEX)」から生まれたアジア音楽フェスティバルである。TMEXはブランド展示、国際フォーラム、産業マッチング、音楽ライブを柱とし、台湾と海外の音楽産業を結ぶプラットフォームを目指してきた。2026年は8月27~30日に開催され、JAM JAM ASIAはそのライブ部門として週末2日間を彩った。
今年の特徴は、台湾の人気アーティストを中心に据えながら、アジア各地のインディー/オルタナティブシーンと、日本の異なる世代の音楽家を一つの会場に並べたことにある。台湾からは、日本の音楽ファンからも熱烈な支持を受けている大象體操(Elephant Gym)をはじめ、告五人(Accusefive)、盧廣仲(Crowd Lu)、美秀集團らが出演。その他、HYUKOH(韓国)、H3F(タイ)、Voice of Baceprot(インドネシア)など、アジア各国からの多彩な実力派ミュージシャンが集まった。
また、日本からも、大貫妙子、ATARASHII GAKKO!(新しい学校のリーダーズ, 海外ではATARASHII GAKKO!名義)、Ann Sally、んoon、テレビ大陸音頭らが出演した。大貫妙子のように半世紀に及ぶキャリアを持つ音楽家から、海外のインディーシーンとも接続する新世代までが同じフェスに参加している点は、JAM JAM ASIAの射程の広さを象徴しているといえる。また、ノイズ、フリージャズ、ヒップホップ、ソウルなどをジャンルレスで横断するんoonもその一組であり、台湾のリスナーに日本のオルタナティブな現在地を届けた。
大貫妙子の台湾初公演から、台韓の越境コラボまで
2日間のライブの中でも、日本のリスナーにとって大きなトピックとなったのが、8月30日に行われた大貫妙子の台湾初公演だ。ソロデビュー50年にして初めて台湾のステージに立った大貫は、「Summer Connection」から幕を開け、「4:00AM」、「都会」など9曲を披露。1970~80年代から現在へと連なる自身の音楽史をたどるようなステージとなった。坂本龍一との創作上のつながりを持つ楽曲も含まれ、近年世界で再評価されてきた日本のシティポップを、その当事者の演奏で台湾の観客が受け取る時間となった。
ATARASHII GAKKO!
一方、JAM JAM ASIAが提示したのは過去の名曲の再発見だけではない。初日のBig Wave StageにはATARASHII GAKKO!が登場し、同じ日には台湾の楊乃文、告五人、Asian Dub Foundation(英国)らが出演。大型ステージからライブハウス、屋外の無料ステージまでを行き来すれば、台湾、韓国、日本、東南アジアの音楽がジャンルの境界を越えて次々と現れ、会場はまさに現在のアジア音楽を横断して聴くための巨大なプレイリストとなっていた。
また、JAM JAM ASIAでしか成立しない共演も注目ポイントとなった。
靠五人
初日のフィナーレでは、台湾の人気バンド・告五人と五月天(Mayday)のベーシスト瑪莎(Masa)が限定ユニット「靠五人」を結成。五月天の「星空」と告五人の「披星戴月的想你」を組み合わせたメドレーや、五月天の代表曲「擁抱」を披露し、会場を大合唱に包んだ。
HYUKOH&國國
2日目には、台湾を代表するシンガーソングライターの盧廣仲のステージに美秀集團の狗柏が飛び入りし、「手機錢包鑰匙菸」を初めてライブで共演。さらにフィナーレではHYUKOH(韓国)が約1時間のセットを披露し、台湾のインディー音楽シーンの雄であり、日本でも絶大な支持を得る落日飛車(Sunset Rollercoaster)のボーカル・國國(Kuo)がゲスト参加した。両者が2024年に共同制作したアルバム『AAA』で育まれた台韓の関係が、JAM JAM ASIAのステージ上で再び形になった。
アジアの音楽が「海外音楽」でなくなる場所
JAM JAM ASIAの面白さは、単に多くの国からアーティストを招くことではない。台湾のスターとアジア各地の新鋭、日本のベテランとオルタナティブな若手が、同じ時間、同じ場所に並ぶことで、それぞれの音楽シーンの距離を縮めていることにある。大貫妙子の楽曲が台北で大きな歓声を浴び、韓国のHYUKOHと台湾の國國が同じステージで音を鳴らし、日本の新世代が台湾のインディーリスナーと出会う。そこでは「台湾音楽」、「日本音楽」、「韓国音楽」という国や地域の区切りよりも、音楽家同士がどこでつながり、どんな新しい聴き手に届くかが重要になる。
日本から台湾までは飛行機で数時間。ストリーミングによって国境を越えて音楽を聴くことが当たり前になった現在、アジアの音楽はもはや遠い「海外シーン」ではない。JAM JAM ASIAは、その距離の近さをライブという身体的な体験に置き換える場所である。台北から見えてくるのは、アジアの音楽が互いを聴き、影響し合いながら、一つの大きなシーンとしてつながり始めている姿だ。
<イベント情報>
「2026 TRENDY TAIPEI 潮臺北 – JAM JAM ASIA 亞洲音樂節」
開催日:2026年8月29日(土)、30日(日)
主催:臺北市政府文化局、臺北流行音樂中心
会場:台湾・台北市 臺北流行音樂中心(Taipei Music Center)
会場構成:Big Wave Stage、Echo Stage、Groove Stage、Vibe Stage、Flow Stageほか全7ステージ
出演:大貫妙子、ATARASHII GAKKO!、んoon、Ann Sally、HYUKOH、告五人、楊乃文、盧廣仲、范曉萱&100%、大象體操、ADOY、H3F、Voice of Baceprotほか80組以上


