
トロント・ブルージェイズの岡本和真が、日本人右打者として新たな歴史を刻んだ。日本時間15日のデトロイト・タイガース戦で33号3ランを放ち、日本人右打者のシーズン最多本塁打記録を更新。8月は速球からの本塁打が0本だったが、9月はすでに4本。メジャー1年目、相手の対策に岡本はどうアジャストしてきたのか。球種データからその軌跡を追った。(文:八木遊)
[caption id="attachment_271360" align="aligncenter" width="1200"] トロント・ブルージェイズの岡本和真(写真:Getty Images)[/caption]
岡本和真が、日本人右打者として新たな歴史を刻んだ。
現地9月14日(日本時間15日)のタイガース戦。岡本は7回に一時逆転となる33号3ランを放ち、昨季の鈴木誠也(カブス)が記録した32本を上回った。
メジャー1年目の日本人最多記録も、現在進行形で更新中だ。これまでの最多は2018年、大谷翔平(当時エンゼルス)が放った22本だったが、岡本はすでに、その数字を11本も上回っている。
ただ、33本の道のりは決して平坦ではなかった。壁にぶつかりながら、そのたびにアジャストしてきた半年間だったと言えるのではないだろうか。
その変化は、球種ごとの数字にも表れている。
MLB公式データサイト『Baseball Savant』では、フォーシーム、シンカー、カットボールなどをFastballに分類している。本稿ではこれらを「速球」とする。
春先の岡本はその速球には比較的対応できていたものの、スライダーやカーブなどの曲がる球に手を焼いていた。相手もそこを見逃さず、そうした球を増やしていた。
ところが岡本も黙ってはいなかった。4月中旬には打席内で立つ位置を約17センチ後方へ移し、そこから打撃成績は上昇。5~6月には計14本塁打を量産し、1つ目の壁を越えたように見えた。
ところが、メジャーはそんなに甘くはなかった。
夏場に入って勢いが鈍ると、今度は春とは逆の問題が浮かび上がった。8月は速球に対して打率.160、長打率.200。本塁打は1本も出なかった。
一方で、曲がる球からは3本塁打。春に苦しんだ球には対応できるようになった一方で、今度は速球を仕留め切れなくなっていた。
そして9月。岡本の打撃は再び上昇気流に乗っている。14日の33号を含めて今月はすでに5本塁打。そしてそのうち4本が速球を仕留めたものだ。
速球からの本塁打は8月はゼロ。それが9月は4本。少なくとも数字には、はっきりと変化が表れている。
シュナイダー監督も今月、岡本の打撃について、曲がる球に対応しながら「速球をしっかり芯で捉えている」と評価していた。首脳陣が感じていた変化は、数字にも表れていた。
33号の打席は、まさに岡本の現在地を映していた。
最初の2球はスライダー。追い込まれてから94.8マイル(約152.6キロ)のフォーシームをファウルにすると、続く95.0マイル(約152.9キロ)を左翼中段へたたき込んだ。
曲がる球で追い込まれ、最後は速球を仕留める。春から続いてきた相手投手との攻防を、わずか4球に凝縮したような打席だった。
しかも場面は2点を追う7回2死一、二塁。一時は試合そのものをひっくり返す逆転3ランだった。
ただし、ブルージェイズはそのリードを守り切れず、5-6で敗戦。75勝76敗と再び借金生活に入り、最後のワイルドカード圏までは1ゲーム差のままだ。
岡本の33本という数字は文句なしに派手である。だが、残り11試合のブルージェイズにとって本当に心強いのは、相手から対策されるたびに岡本が答えを出してきたことだろう。
メジャー1年目はいよいよ最終盤。その「答え」が、ポストシーズンへの道を切り開くか。
【著者プロフィール】
八木遊(やぎ・ゆう)
1976年生まれ。スポーツライター。米国で大学院を修了後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLなどの業務に携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬記事を執筆中。
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