苦杯をなめた2014年ブラジルW杯 [写真]=Getty Images

 FIFAワールドカップ2026、グループステージ初戦のオランダ代表戦がいよいよ一週間後に迫ってきた。5月25日からスタートした国内合宿とキリンチャレンジカップ2026を経て、6月2日にメキシコ・モンテレイ入りした日本代表の事前合宿も間もなく終了。あとはベースキャンプ地であるアメリカ・ナッシュビルでのブラッシュアップを残すだけとなっている。

 そこで気になるのが、選手たちのコンディションだ。千葉、モンテレイ、ナッシュビルと短いサイクルで場所を変えながら、トレーニングを積み重ねるという方法を選択している。千葉に関しては「欧州でやっていた選手が再始動するための一週間」と前キャプテン・吉田麻也が語ったように、調整の意味合いが強かった。アイスランド戦は出番のなかった前田大然も「帰ってきたばっかりだったこともあって、森保さんともしっかり話をして、ここ(モンテレイ)に照準を合わせてきた」と発言。事前合宿からギアを上げていく狙いがあったという。

 そのモンテレイだが、想定よりも気温が低い日が続いている。始動日だった3日は午前10時練習開始だったこともあって、気温33度超の猛暑の中で練習できたが、17時開始に移行したその後は気温30度以下。選手たちは「蒸し暑い」とは口々に言うものの、日本の真夏のような暑さではない。伊東純也も「(昨年7月のスタッド・ランスの)ジャパンツアーの方が暑かった」と話していて、暑熱対策が十分にできたかどうかという点は不安もつきまとう。「天気は難しいですよね。どんなに視察をしていいと思っていても、そういうことも起こり得る。大事なのは、今ある手札の中でどうやって自分たちがいい状態を作っていくかということ。これでブレるなら、そもそも目的にはたどり着かないでしょう」と吉田も神妙な面持ちで話したが、今は与えられた環境でベストを尽くすしかない。

 日本代表の暑さ対策不足の失敗例として真っ先に思い浮かぶのが、2014年のブラジル大会だ。12年前の日本代表はまず鹿児島県指宿市で国内合宿を実施し、この時は国内組・欧州組に関係なく猛烈な走り込みを行った。そこで追い込みすぎたのが、最初の躓きだった。続いてアメリカ・クリアウォーターへ移動して、事前キャンプに突入。同地の気温はもちろん高かったが、メキシコ湾からの風が入ってきて割と涼しい印象もあった。しかも、ホテルの冷房が効きすぎて岡崎慎司が体調を崩す問題も発生。そのままベースキャンプ地だったブラジル・イトゥへ移動し、冷涼な気候の中で最終調整を実施することになり、試合会場のレシフェ、ナタル、クイアバの猛暑への適応に失敗した。結果的に0勝1分け2敗と惨敗に終わっているのだ。

「今回モンテレイやナッシュビルを選んだのも、2014年の経験を踏まえてのこと。もうあのようなことはないんじゃないかと思います」と長友佑都は強調したが、モンテレイ合宿の気象条件を踏まえるとやはり懸念はある。ただ、8日から移動するナッシュビルの週間天気予報を見ると、最高気温が30度〜33度前後となっており、午前練習開始というスケジュールを考えても、十分暑い中で調整できるのではないか。

 しかも、オランダ戦とスウェーデン戦の会場であるダラススタジアムは屋内だ。チュニジア戦のエスタディオ・モンテレイは屋外だが、キックオフは夜22時。そこまで気温は高くない見通しだ。グループリーグの間はある程度、乗り切れるのではないか。ただ、問題はその後だろう。決勝トーナメントでニューヨークやマイアミなど東に行った場合、日本代表は困難に直面するかもしれない。今回のチームは「優勝」という目標を掲げているため、最大8試合を戦わなければいけない。過去7回のW杯では最大4試合しか消化していないチームが2倍の試合数を戦い抜こうというのだから、やはりコンディショニングミスは許されないのだ。

 ここから先は疲労を貯めない程度に暑い中で負荷を調整し、本番でトップの状態に持っていくことに集中するしかない。そこは松本良一フィジカルコーチの手腕による部分が大きいだろう。欧州で過密日程を経験してきた選手たちも自分なりにアプローチ方法を持ち合せているはず。その経験値もフル活用していくべきだ。

「ここからはいろんなピッチ外のアクシデントとかを想定しながら戦っていかなければいけない、図太さは必要です」とも吉田は語気を強めたが、本当にその通り。2014年の主力だった長谷部誠コーチ、長友とともに当時を振り返りつつ、足りなかった部分を他のメンバーに伝える努力を続けているに違いない。失敗を知る面々がチームにいて、適切な助言ができるのも12年前との違い。そのアドバンテージは大きいだろう。長谷部、長友、吉田の3人が中心となって、過去の失敗を成功の源にしていくことができれば一番いい。本当の勝負はここからだ。

取材・文=元川悦子

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