三井グループ350周年を記念して開催された「三井みらいチャレンジャーズオーディション」。2024年に最終通過者が発表され、2年の歳月が流れました。チャレンジャーたちは現在どんな活動をしているのでしょうか。「チャレンジャー発表会」の模様をお伝えします。

  • 三井みらいチャレンジャーズオーディションの「チャレンジャー発表会」

    三井みらいチャレンジャーズオーディションの「チャレンジャー発表会」

夢や目標を持つ若者を支援する三井グループの記念事業

「三井みらいチャレンジャーズオーディション」は、三井グループの基礎を築いた「三井高利」が越後屋を江戸の日本橋に出店してから350年の節目となった2023年に開催された記念事業のひとつです。

夢や目標を持ってチャレンジを行う次時代の若者を発掘・応援するプロジェクトであり、大きく「事業・社会活動部門」「研究・留学部門」「カルチャー創造部門」という3つの分野で行われています。

最終通過者は支援金やプラットフォーム提供など、さまざまな支援を受ける権利を得ます。名乗りを上げたのは722名のチャレンジャーたち。2024年3月19日の最終通過者発表会で、ここから計30名が選出されました。プロジェクト終了は2027年度末を予定しています。

そして5月12日、夢の実現に向けて活動を続ける30名(1名は欠席)が中間報告を行う「チャレンジャー発表会」が開催されました。

  • 会場ではチャレンジャーたちの成果も展示されました

    会場ではチャレンジャーたちの成果も展示されました

開会にあたり、三井グループ350周年記念事業実行委員会(以下、実行委員会)の事務局長を務める弘中聡氏は「企画した当時は、『将来を担う原石が集まってくれるだろうか』『4年間応援できるだろうか』と不安でいっぱいでした。しかし今日みなさんの着実に成長されている姿を拝見し、日本そして世界の将来に向けて頼もしく思いました」とチャレンジャーを賞賛。

  • 三井グループ350周年記念事業実行委員会 事務局長 弘中聡 氏

    三井グループ350周年記念事業実行委員会 事務局長 弘中聡 氏

会わせて、実行委員会の大竹健介氏は、三陸南三陸での化石掘り体験や仙台での交流会、三井グループ各社での見学会など、チャレンジャーズや三井グループとの交流について報告しました。

  • 三井グループ350周年記念事業実行委員会 大竹健介 氏

    三井グループ350周年記念事業実行委員会 大竹健介 氏

チャレンジャーの成長が注目された「ブロック1」

ここからチャレンジャーズの報告がスタートします。海外で活動する方も多く、全体の約三分の一がオンラインもしくはビデオ参加となりました。

ブロック1のトップバッターは研究・留学部門です。局所ラングランズの証明を目指す鈴木健太さんは、MITを卒業後、プリンストン大学で博士課程を開始、イエール大学を行き来しながら、Bun_G上の定数層についての論文を執筆中と話します。

ニュートリノ検出器における電化検知技術の開発に取り組む久保田しおんさんは、ハーバード大学より博士号を取得し、ローレンス・バークレー国立研究所にて研究を続けていることを報告。また、「Forbes 30 Under 30 Asia 2025」に選出されたことも発表しました。

クラゲの無性生殖の研究を行う佐藤愛美さんは、一年間休学をしてフィールドワークを行い、研究と並行してネットワークを広げたと報告。そしてクラフトビール「クラゲクラフト」を発売し約1000本完売したと伝え、会場から歓声が上がりました。

  • クラゲのワッペン型バッヂをアピールする佐藤愛美さん

    クラゲのワッペン型バッヂをアピールする佐藤愛美さん

続いてカルチャー創造部門。アートを通じて社会問題を「自分ごと」化する活動を行う稲垣桃さんは、女性身体に関する新テーマの立ち上げ、スタートアップとの協業、作品のブラッシュアップという3つの柱で活動していることを報告します。

Z世代に向けた「Z落語」に取り組む桂枝之進さんは、LEDスクリーンを使った落語「落雷」など、各種講演について報告。「MATSUBA」というユニットで音楽活動を始めたことや、「Forbes 30 Under 30 Asia 2025」に選出されたことも発表しました。

そして事業・社会活動部門。3Dプリントによる特注インテリアデザインを行う株式会社 積彩の大日方伸さんは、工場の立ち上げについて報告。また大阪・関西万博のパナソニックパビリオンでインテリアを製作したことや、華道家とのコラボについて話します。

「五感にやさしい社会」の実現を目指す株式会社クリスタルロードの加藤路瑛さんは、カームダウンスペースの普及とセンサリーマップの開発について報告。2026年は「カームダウンチェア」開発を進めたいと語りました。

  • センサリーマップについて解説する加藤路瑛さん

    センサリーマップについて解説する加藤路瑛さん

ここでブロック1の発表は終了。三井住友銀行 頭取CEOであり、実行委員会の副委員長を務める福留朗裕氏は、「三国志の武将の言葉に『男子、三日会わざれば刮目して見よ』という言葉がありますが、1年ぶりにみなさんにお会いして、本当に成長されたと感じました。1~2年前と比べて顔つきも締まってきているように見え、本当に頼もしく思っています」と応援の言葉を述べます。

  • 三井住友銀行 頭取CEO / 三井グループ350周年記念事業実行委員会 副委員長 福留朗裕 氏

    三井住友銀行 頭取CEO / 三井グループ350周年記念事業実行委員会 副委員長 福留朗裕 氏

活動内容に大きな変化も見られた「ブロック2」

ブロック2は事業・社会活動部門からスタート。長期入院で闘病する子どもたちへの取り組みを続けている社団法人Child Play Lab.の猪村真由さんは、単発で遊びの支援から、自宅に訪問し暮らしの中で一緒の時間を過ごす方向に事業モデルを変更したと伝えます。現在は事例と論文を作成しているそうです。

  • 「自分の新しい家族もお腹の中で成長中」と話す猪村真由さん

    「自分の新しい家族もお腹の中で成長中」と話す猪村真由さん

昆布と牛のげっぶ(メタン)に注目し、漁業と酪農を繋げる「いーこんぶブランド」を展開する大砂百恵さんは、他分野への進出を報告。ニワトリ50羽を飼うための小屋を自力で作成中であるほか、昆布を食べた豚を昆布締めにして熟成させた「いーこんぶた」の生ハムづくりに取り組んでいると伝えます。

インフルエンサーによるフリマイベントを通じて衣類の廃棄問題などに挑戦する株式会社HAGIの岡本萌花さんは、一年の活動を伝えるとともに、「インフルエンサーのファンになるだけでなく、服好きの若者全体が参加するようなカルチャーのイベントにしていこう」と決意したと報告します。

サブサハラで農業改革の取り組みを行っている齋藤杏実さんは、アフリカとアジアの若者を繋ぐ一般社団法人Africa Asia Youth Nestを設立したことを報告。同時にガーナにおける散布ドローンの運用事業について伝えます。

研究・留学部門では、宇宙開発とサッカー研究の二足のわらじを履く王方成さんが、火星ローバー「Perseverance」の自立ナビを担当したことを報告。同時に、日本のサッカー界をテクノロジーで支える研究実装機関「ELEVEN X」を立ち上げたことを伝えました。

  • 火星探索に向けた取り組みについて発表する王方成さん

    火星探索に向けた取り組みについて発表する王方成さん

カルチャー創造部門では、ミャンマーで拘束された経験を持つ映像作家の久保田 徹さんは、「My Camera, My Gun」というドキュメンタリー映画の製作と、アーティストやジャーナリストなどを支援する拠点「ドキュ・アッタンスクエア」に関わっていることを告げました。

劇団あはひの劇作家・演出家として活躍する大塚健太郎さんは、俳優マネジメント事業の拡大を行い、舞台・映像・CMを多数獲得したと伝えるとともに、2026年10月に「流れる ―能“隅田川”より」を講演予定であると発表します。

人形浄瑠璃「乙女文楽」に焦点を当てた音楽作品を製作している向井響さんは、ポルトガルの「ポルト人形劇団」との共演のために帰国中と報告。同時に、2027年度の国際人形劇フェスティバルにおいて最終選考7作のなかに残っていると伝えました。

  • 「ポルト人形劇団」との共演を果たした向井響さん

    「ポルト人形劇団」との共演を果たした向井響さん

親子向けの絵本の読み聞かせコンサート事業を展開する、株式会社オトギボックスの梶本大雅さんは、同社初の沖縄公演を始めとした各地での公演について伝えたのち、ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスと共催で全国公演を開催することを報告します。

ブロック2の発表を終え、実行委員会の副委員長を務める三井物産 代表取締役社長の堀健一氏は、「みなさんがご自身の物語とナラティブをちゃんと押さえていれば、そこで変わることは理解できるので、そういったときは迷わず変わっていただきたいと思います。私どもも刺激を受けていろいろなことを考えていますので、もうそれだけで大変な価値があると思っています」と、取り組みを進めながら変化していくチャレンジャーたちを後押ししました。

  • 三井物産 代表取締役社長 / 三井グループ350周年記念事業実行委員会 副委員長 堀健一 氏

    三井物産 代表取締役社長 / 三井グループ350周年記念事業実行委員会 副委員長 堀健一 氏

ビジネスとして軌道に乗った活動も見られた「ブロック3」

ブロック3はカルチャー創造部門からの発表です。「接点の公園」をテーマにコミュニケーションについて考える高橋鴻介さんは、宮下公園で開催した「ごちゃまぜプレーパーク」について報告。触覚で遊ぶゲーム「よりボー」を全世界20カ国以上で販売開始したと発表しました。

  • お子さんが生まれたばかりのため、映像で参加した高橋鴻介さん

    お子さんが生まれたばかりのため、映像で参加した高橋鴻介さん

ミュージカル普及のため「学生ミュージカルガチバトルライブ」の企画・運営を行う田中亜希子さんは、8月の予選大会、2027年2月の決勝大会実施について伝えるとともに、ミュージカルスクールの立ち上げを報告します。

研究・留学部門では、ハーバード大学建築デザイン大学院でサステナブルな建築の可能性を追求する高井万弥さんが、不動産事業への挑戦を行っていると報告。サンフランシスコのダウンタウン再開発プロジェクトに取り組んだことを伝えました。

地方復興における文化観光の確立・普及と経済的意義について研究するため、イタリアのボローニャ大学で学んでいる水澤佑介さんは、イタリアのサクリ・モンティと山形県の出羽三山の比較研究を行っていると話します。

東京大学工学研究科でコンクリーション研究を進めているプラート・アルヴィンさんは、これまで宇宙資源の研究と平行していた研究をコンクリーション一本に絞ると宣言。2026年に入ってからもカザフスタンやニュージーランドなどさまざまな現場で調査を行ったと報告しました。

  • 化石を披露しながらコンクリーション研究を語るプラート・アルヴィンさん

    化石を披露しながらコンクリーション研究を語るプラート・アルヴィンさん

事業・社会活動部門は、始めに音声認識とAI要約によって診療中の会話からカルテを生成するアプリ「medimo」を展開する株式会社medimo(旧:pleap)の中原楊さんが登壇。2026年3月に採用が1,000施設を超えたことを発表し、次のチャレンジとして、ポストAI時代における人間の役割について取り組むと語りました。

医療と福祉を支えるモビリティサービス「mairu」を展開する株式会社mairu techの大村慧さんは、東京の羽田を拠点に車両5台体制で運行を開始したと報告。今年度中に30台体制まで到達することを目指すと発表しました。

  • モビリティサービス「mairu」の社会的意義を説く大村慧さん

    モビリティサービス「mairu」の社会的意義を説く大村慧さん

チャレンジャーや三井グループへの呼びかけも行われた「ブロック4」

ブロック4は、研究・留学部門からの発表です。ポストデジタル社会における人間と衣服の相互関係を研究している宮瀬環さんは、8月でロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業することを報告。博士課程を視野に入れ、今後の方向性を模索していると伝えます。

言語の視点からグローバルを再構築する活動を行う巴山未麗さんは、パリでことば収集を進めつつ、日本でことばのエンタメを作る活動を進めていると報告。「kotoha」プロジェクトの事業拡大への取り組みを話すとともに、ハイチやペルーなどでの先住民言語調査の予定を伝えました。

  • その言語にしかないことばの魅力を伝える巴山未麗さんはオンライン参加

    その言語にしかないことばの魅力を伝える巴山未麗さんはオンライン参加

細胞にセキュリティをかけるための、遺伝子発現ゆらぎの定量とシステム解明を研究する北井朝子さんは、あらためて研究内容について説明。論文発表を目指すとともに、卵子の排卵時期のばらつきはなにがコントロールしているのかについて研究を進めたいと話します。

カルチャー・創造部門からは、作曲家・A.アガジャーノフのメソッド普及を目指すピアニストの牛田智大さんが登場。昨年のショパン国際ピアノコンクールにおいてセミファイナル進出したことについて触れるとともに、活動拠点をフランス・パリに移したと報告。今年の夏前ごろよりWebでの先行連載などを始めると伝えます。

事業・社会活動部門では、食品残渣を活用したミルワーム生産システムによって持続可能な飼料・原料供給に取り組む株式会社Booonの橋爪海さんが、三井グループの会社とパートナーシップを結んだことを報告。会場で中古設備の販売依頼や販売代理店契約を持ちかけ、長時間の発表で疲れていた場に笑顔を届けました。

  • 食品残渣を再資源化することで持続な能な水産養殖を目指す橋爪海さん

    食品残渣を再資源化することで持続な能な水産養殖を目指す橋爪海さん

最後の発表となったのは、排水処理から水の価値連鎖を目指す株式会社Nocnumの大森美紀さん。トイレ排水から資源循環ができる同社の「EcoPhos」において、あらたに工場排水を活用するプロトタイプを開発したと報告。陸上養殖や畜産に取り組むチャレンジジャーや三井グループに連携を呼びかけました。

実行委員長もチャレンジャーたちを賞賛

こうして中間報告会はすべての発表を終えました。三井不動産 代表取締役会長であり、実行委員会の委員長を務める菰田正信氏は、チャレンジャーたちが1年間で大幅に成長し、スピード感とスケール感を持って成果を上げていることを高く評価します。

また、最初に決めたテーマにこだわらずに新たな可能性や課題に柔軟に対応する発展性と進化性、三井グループの経営資源や事業基盤、ネットワークを最大限活用している点を称賛しました。

そして最後に、「これから2年、みなさんはさらに進化を遂げて、新たなテーマを追い求め、新たな成果を上げていくわけですが、そのためにも資金だけではなく、三井グループの持っているさまざまな経営資源、事業基盤、ネットワークを、もっともっと活用することをお願いして、私の感想としたいと思います」と、チャレンジャーの背中を押しました。

  • 三井不動産 代表取締役会長 /  / 三井グループ350周年記念事業実行委員会 委員長 菰田正信 氏

    三井不動産 代表取締役会長 / / 三井グループ350周年記念事業実行委員会 委員長 菰田正信 氏

プロジェクトもついに折り返しを迎え、チャレンジャーのみなさんはより本格的に活動を進めることでしょう。2年後にはどのような報告が聞けるのでしょうか。期待が高まります。

  • チャレンジャーたちは休憩時間中もお互いに声を掛け合っていました

    チャレンジャーたちは休憩時間中もお互いに声を掛け合っていました