発電所、と聞いてどんなものを思い浮かべるだろうか?
風車を使った風力発電やダムを使った水力発電、原子力発電や火力発電といったさまざまな発電方法を想像する人が多いだろう。
しかし近年では、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、さまざまな新しい発電方法が注目されている。
今回筆者は、北海道電力が運営する「石狩湾新港発電所」を訪れた。石狩湾新港発電所は、LNGを燃料とする同社最新の大型火力発電所であるが、DX(デジタルトランスフォーメーション)や将来のカーボンニュートラルに向けたさまざまな取り組みを進めており、本稿では、その発電所内の様子をレポートしていく。
「LNG火力発電所」ってなに?
今回筆者が訪れた石狩湾新港発電所は、北海道内の既設火力発電所の経年化に対応するとともに、発電用燃料種の多様化と電源の分散化を目的とした、LNG(液化天然ガス)を燃料とする「ガスタービン・コンバインドサイクル発電方式」を採用した火力発電所。
北海道の小樽市と石狩市にまたがる場所に位置しており、2019年に1号機の営業運転を開始したのを皮切りに、2030年度に2号機、2033年度に3号機の営業運転開始を予定している新しい発電所だ。
この発電所の特徴は、北海道電力として初となる「LNG火力発電所」である点。
石狩湾新港発電所で燃料に利用されているLNGとは、メタンを主成分とする天然ガスを約-160℃程度の極低温に冷却・液化した液体のこと。
LNGの特徴としては、無色無臭であり、CO2排出量が石炭火力と比べて少なく、ばいじん・硫黄酸化物・窒素酸化物等の大気汚染物質の発生量も極めて少ない環境性に優れたクリーンなエネルギーであること。また、液化させることで、気体の状態に比べて体積が600分の1になるため、長距離輸送・大量貯蔵が可能という特徴を持っている。
これまで北海道電力では、大型の発電所として、石炭火力・石油火力・原子力・水力などの開発に取り組んできたが、新たにLNG火力を加えることで、発電に使える燃料の多様化を図り、将来の電気の安定供給を確実なものにしたい考えだという。
また、発電方式として採用されている「ガスタービン・コンバインドサイクル発電方式」も石狩湾新港発電所の特徴の1つ。
この発電方式は、「ガスタービン」と「蒸気タービン」を組み合わせて発電機を回転させるもので、従来型の蒸気タービンによる発電方式と比べて、発電効率が高く、エネルギーの有効利用を図りやすいという特徴を持っている。
また、石炭・石油火力発電所に比べて、発電出力の調整速度が速く、さらに発電設備の起動にかかる時間も短いため、刻一刻と変化する電力需要に即対応できるとともに、太陽光発電や風力発電といった発電量が天候に左右される電源の調整役としても運用性の面で優れた特徴を有している。
石狩湾新港発電所 所長の石川淳介氏いわく、この「石狩」という土地が選ばれたのには理由があるという。
「既設の大型発電所の多くが太平洋側に位置しているため、日本海側に設置することで電源の分散化を図る目的があります。また、電力の消費量の多い札幌圏でありつつ、港湾インフラが設備されていることからこの石狩湾新港地域が選定されました」(石川氏)
発電所の概要が分かったところで、早速、発電所内を見学してみよう。
石狩湾新港発電所のDXの取り組み
初めに案内してもらったのは、運転員が発電設備を24時間体制で監視・操作している発電所の頭脳ともいえる「中央操作室」。
この中央操作室は、従来、運転員が常駐していたそうだが、DXの取り組みの一環として、2024年より遠隔常時監視制御方式を導入した。
この遠隔常時監視制御方式は、遠く離れた別の発電所から監視制御をするもので、現在石狩湾新港発電所の中央操作室は無人で運営している(設備不具合の初動対応や保安確保のための防災要員は現地に常駐)。
この遠隔常時監視制御方式のように、近年北海道電力では、トラブル未然防止や効率的な業務運営を目的としたDXの取り組みを積極的に進めているのだという。
その内の1つが「自動巡視点検ロボット」の導入だ。
石狩湾新港発電所で導入されているこの自動巡視点検ロボットは、自動で発電設備を巡回し、搭載されたセンサーやカメラにより、設備の計器データの確認・解析やさまざまな異常検知を行うロボットである。
このロボットの導入により「巡視点検の時間短縮」「点検業務の品質向上」「異常の早期発見」といった導入効果が出ているそう。
筆者が訪れた日は、生憎、点検中ということで実物を見ることはできなかったが、普段はたくさんの従業員に交じって、一生懸命働いているそうだ。
プロジェクションマッピングでタービンの中に潜入!
続いて訪れたのは、発電所のメインともいえる「タービンフロア」。ガスタービン・蒸気タービン・発電機などを一気に見ることができる圧巻のエリアだ。
向かって1番左手に設置されているのが「ガスタービン」。ガス導管から供給された天然ガスを、空気圧縮機で圧縮した空気と合わせて燃焼させることで発生する高温の燃焼ガスでタービンを回転させる仕組みだ。
続いて右手側に設置されているのが「蒸気タービン」。ガスタービンから排出される燃焼ガスの熱を回収するボイラーから送られる高温・高圧の蒸気でタービンを回転させている。
最後に真ん中に設置されているのが「発電機」。ガスタービンと蒸気タービンの回転力から電気エネルギー(電力)を作る装置で、ガスタービンと蒸気タービンに直結する形で中央に設置されている。
普段なかなか見ることができない大きな機械が見られただけでも興奮するが、この石狩湾新港発電所では、それに加えて、ガスタービンなどの内部の様子のイメージを、プロジェクションマッピングで映し出し、発電の仕組みを紹介する取り組みも行っている。
通常は外観しかみることのできない機械で何が起こっているのかを学ぶことができ、より一層、ガスタービン・コンバインドサイクル発電についての理解が深まること間違いなしだ。
屋上からは「石狩LNG基地」が見える
屋上に上がると遠くの方に見えてくるのが、発電所の燃料であるLNGを貯蔵している「石狩LNG基地」だ。
この石狩LNG基地は北海道ガスが運営している、外航船の受入ができる北海道で唯一の大規模LNG輸入基地。石狩湾新港発電所への燃料供給は、この石狩LNG基地に設置された北海道電力所有のLNGタンクから行われている。
北海道電力が調達してきたLNGは、まず輸送船によって、約-160℃という極低温にも耐えられる強い金属を使った内槽を有する2重構造のLNGタンクに届けられる。
そしてタンクで保管されたLNGは、ポンプで送り出され、天然ガスに戻すために気化器によって気化される。そして、地下に敷設されたガス導管を通って石狩湾新港発電所へ供給されるという仕組みだ。
さらに石狩LNG基地から少し手前に目を向けると、今後建設が予定されている2号機用の地盤改良工事の様子と3号機の建設予定地も見ることができた。
カーボンニュートラルの実現に向けて
今回はLNG火力発電所を訪れたが、北海道電力では、電力の安定供給の確保・経済性・地球環境保全を前提として、経年化した火力発電所の休廃止を進めているという。
それに加えて、二酸化炭素回収・有効利用・貯留技術(CCUS)や水素・アンモニアの利活用などによる火力発電の脱炭素化も進めていくという。
「ガスタービンで導入しやすいとされている脱炭素燃料は『水素』です。水素を効率的に輸送、貯蔵するには液化させて体積を小さくするのが望ましいですが、水素は-253℃という極低温で液化するという特性を持っているため、商用運転の実現には未だ課題が多い技術です。まだ時間がかかるかと思いますが、水素をエネルギーとした発電が行えるように技術開発動向を見極めながら、2040年代に水素混焼を開始し、2050年頃までには水素専焼に移行できたらと考えています」(石川氏)
アンモニアの利活用については、すでに苫東厚真発電所などで取り組みが動き始めているそうで、2030年度にはアンモニアを混焼した発電を始める考えだという。
今後も発展していく北海道電力の石狩湾新港発電所。北海道の電力を支える最前線から目が離せない。









