
中日ドラゴンズは4月28日から5月10日までのゴールデンウィーク期間中、6勝5敗と1つ勝ち越した。4月の低迷があまりに深かっただけに、竜党も少しだけ胸をなで下ろしたのではないか。依然として最下位ながら、先発投手陣の粘りには確かな光が見え始めている。Aクラス浮上へ必要なのは、チャンスで臆せず振り切れる打者の台頭だ。(文・チャッピー加藤)
連敗ストッパー・大野雄大が呼び込んだ流れ
[caption id="attachment_263712" align="alignnone" width="1200"] 中日ドラゴンズの大野雄大【写真:産経新聞社】[/caption]
ゴールデンウィークが明けたが、竜党の皆さんは連休中、いかがお過ごしだっただろうか? 4月28日から始まった横浜DeNA・広島・阪神との9連戦、結果は○●●→●○雨→○○●で4勝4敗のイーブン。続く5月8日からの巨人戦は○○●と勝ち越して、GW中の成績はトータル6勝5敗となった。借金は連休前より1つ減って「9」。依然として最下位(5月10日時点)ではあるが、4月の信じられない低迷ぶりを思えば雲泥の差。とりあえず投打が噛み合い始め、勝てるようにはなってきた。今回はこのGW中の戦いぶりを、ちょっと振り返ってみよう。
4月28日、DeNAとの初戦に金丸夢斗先発で勝った時点では、その前の東京ヤクルト戦3タテと合わせて4連勝。「よぉし、これで一気に波に乗れる!」と思ったら、そこから3連敗……。「ああ、行って来いか」とガックリしかけたところ、いい流れを再び引き戻してくれたのが、4月に開幕5連敗を止めた連敗ストッパー・大野雄大である。
5月2日、広島戦に先発した大野は、6回99球を投げ4安打無失点。ドラゴンズも6回まで無得点という苦しい展開だったが、大野は打線の援護を信じて耐えた。7回、その奮投が実る。ドラゴンズは板山祐太郎の三塁打と細川成也の二塁打などで一挙4点を挙げ、ウンベルト・メヒア→杉浦稔大→藤嶋健人の完封リレーで逃げ切って勝利。大野は3勝目を挙げた。
この大野の勝利は、ただ連敗を止めただけでなく「投手-野手間の信頼関係」を取り戻してくれた。5月4日の阪神戦は、ドラフト1位ルーキー・中西聖輝が初回にいきなり3点を奪われたが、その裏、ドラゴンズ打線は阪神先発・門別啓人から福永裕基のタイムリーと、細川の3ランで4点を挙げて逆転。これで中西は別人のように立ち直り、2回から7回まで阪神打線をわずか1安打に抑えると、打線もさらに3点を追加して7-3で快勝。中西は待望のプロ初勝利を挙げ、今季6戦全敗だった阪神戦の連敗も止めた。
阪神打線相手に20代先発トリオが奮闘
[caption id="attachment_261880" align="alignnone" width="1200"] 中日ドラゴンズの髙橋宏斗【写真:産経新聞社】[/caption]
翌5日の阪神戦は、金丸夢斗が先発。初回、金丸は森下翔太にソロホーマーを浴び先制を許したが、すぐに打線が取り返す。2回、阪神先発・早川太貴からジェイソン・ボスラーがホームランを打ち返して同点。3回、1死満塁から村松開人が走者一掃の三塁打を放って勝ち越すと、4回にも2点、7回にも1点を加え、前日と同じ7-3で阪神に連勝した。金丸は7回2失点で3勝目。若い2人に白星が付き、チームも3連勝となった。4月のちぐはぐな戦いがウソのような投打のかみ合いぶりに、ついホッペをつねったりして。
続く6日は、3日の登板が雨で流れた髙橋宏斗がスライド登板。ぜひ虎に“3タテ返し”をしてもらいたかったが、ただいま無双状態の阪神・髙橋遥人に打線が3試合連続完封を許してしまった。宏斗は8回2失点、15三振を奪いながら負け投手に。これで今季1勝4敗となったが、内容自体は決して悪くない。リフレッシュのためいったん登録抹消となったが、戻ってきたら本来のエースらしいピッチングを見せてくれるはずだ。ともあれ、阪神打線相手に20代の先発3人が踏ん張ってみせたことは大収穫で、大野が背中で後輩たちに示したものは大きかった。
GW期間中、すべての先発が試合を作った
[caption id="attachment_256942" align="alignnone" width="530"] 中日ドラゴンズの柳裕也(写真:産経新聞社)[/caption]
1日おいて、8日の巨人戦には柳裕也が先発。今季は安定したピッチングを見せている柳は、7回1死まで投げて2失点。彼はいつも援護に恵まれないが、この日は2回にボスラーが2ラン、7回に細川が3ランを放ち9-2で快勝。柳はようやく2勝目を挙げた(ホントは5勝していてもおかしくないのだが)。
9日の巨人戦は再び大野が先発し、7回4安打無失点の好投。打線もしっかり援護して4-2で巨人に連勝。阪神戦は若手、巨人戦はベテラン勢で勝ち越しと、なんとも理想的な展開だった。10日はドラフト2位ルーキー・櫻井頼之介が5回3失点と責任回数を投げきり、勝ち投手の権利を手にして降板したが、中継ぎ陣が打たれて4-9で敗れ、惜しくも3タテはならず。櫻井のプロ初勝利もお預けとなった。
こうして振り返ってみると、2日に大野がチームの連敗を止めて以降、先発投手が5回を待たずKOされた試合が1つもないことに気づかれたと思う。2日以降の5勝はすべて先発投手に白星が付いているし、さらにいうと4月29日〜5月1日の3連敗時も、先発の3人(櫻井、カイル・マラー、柳)は責任回数の5回を投げきっている。つまりGW中の11試合はすべて先発投手が5回以上投げ、試合を作っているのだ。
求められるのは、好機で縮こまらない打者
[caption id="attachment_222751" align="alignnone" width="530"] 中日ドラゴンズの土田龍空【写真:産経新聞社】[/caption]
ならば打線が打つべきところで打てば、自ずと勝てるはず。阪神戦・巨人戦と2カード連続で勝ち越せたのは、つまりそういうことだろう。というか、もっと勝てたんじゃないかと思う。ピッチャーは頑張っているのだから、借金完済〜Aクラス浮上に必要なのは、チャンスで臆さず打てる選手だ。ドラゴンズは、なぜだか知らないが、塁が埋まれば埋まるほどバッティングが縮こまってしまう選手が多い。その結果「10安打も打ったのに、わずか1得点で負け」みたいなことがよく起こる。野球は残塁の山を競うゲームではない。それより歓喜のホームインをもっとたくさん見せてくれ。
チャンスに強いといえば、岡林勇希離脱後センターに抜擢され10試合に出場。10安打5打点、得点圏打率.455と勝負強さを見せたルーキー・花田旭の負傷離脱は痛かった。代わってセンターに名乗りを上げたのが、今年6年目の土田龍空だ。
土田は2020年、滋賀・近江高校からドラフト3位で入団。2年目の2022年、ショートではチーム最多の59試合に出場。3年目の2023年は登録名を名前だけの「龍空」に変え、自己最多の114試合(うちショートで96試合)に出場した。しかし打率は.187と低迷。レギュラーの座を完全につかむには至らず、2024年は故障などもあって出場数が17試合と激減。昨季から登録名を「土田龍空」に戻したが、課題の打撃は上向かず20試合出場、打率.137にとどまった。
背水の陣で臨んだ今季、土田は外野挑戦を宣言。ファームで外野手として17試合に出場。打率.314と活躍し、4月24日に1軍昇格を勝ち取った。5月10日現在、1軍では9試合に出場。16打数3安打で打率.188と数字だけ見ると昨季までと変わらないが、注目は3本のヒットのうち、2本がホームランなのだ。ちなみに過去5年間で土田が打ったアーチは、たった1本だけだ。
5月1日、マツダスタジアムの広島戦で実に3年ぶりの一発を放った土田は、5日にバンテリンドームで行われた阪神戦で、初めて外野でスタメン出場。右翼ホームランウイング席に今季2号を叩き込んだ。とにかく試合に出たい、出た試合は何でもいいからアピールしよう、という必死さが伝わってくる。こういう選手にどんどんチャンスを与え、競わせてほしい。
チーム内競争がAクラス浮上への近道
[caption id="attachment_263713" align="alignnone" width="1200"] 中日ドラゴンズの土田龍空【写真:産経新聞社】[/caption]
土田は9日、巨人戦の試合前練習でも話題を呼んだ。ホームランウイング上部のラバーを確認した際に、垂直に飛んだ写真がスポーツ紙のインスタグラムに掲載され、異常な跳躍力が「合成じゃないんだ!」と驚きをもって拡散されたのだ。もともと身体能力は抜群だし、私は土田がルーキーの年、2021年にフレッシュオールスターゲームに出場した試合を、松山坊ちゃんスタジアムで生観戦している。晴れ舞台でヒットを放ち、躍動する土田の姿を観て「早く1軍で観たい」と思ったし、1軍昇格後は遊撃のレギュラーに定着するものだと思っていた。
ところが聞こえてくる話は、コーチと衝突したとか、ネガティブな話ばかり。ドラゴンズはおとなしい選手が多いだけに、こういうヤンチャな選手がいたっていいと思うのだが、出場機会が激減したのは残念だった。だが、ともかく再びチャンスは巡ってきた。今季はまだ得点圏で打席に立っていないが、その必死さが必ずや勝負所での得点につながると思う。
もともと守備力には定評があるし、土田が内外野両方守れて、2割7分ぐらい打てるユーティリティプレーヤーになってくれたら最高だ。外野陣はもちろん、村松・福永だってウカウカしていられないだろう。高いレベルの競争は、チーム力の底上げにもつながる。いずれ岡林、上林誠知らも戻って来るだろうが、そのとき指揮官が誰をどこに使おうか迷うような状態になっていてほしい。さすれば、Aクラス浮上は決して夢物語ではない。
【著者プロフィール】
チャッピー加藤(Chappy Kato)
1967年生まれ。愛知県名古屋市出身。上智大学卒業。構成作家、コラムニスト、ラジオDJ。幼少時より半世紀以上野球を観戦。特に球場巡りがライフワーク。贔屓のドラゴンズ戦を中心に、毎年プロ野球全12球場での公式戦を生観戦。2006年から20年連続で継続中。落合監督時代、5度出場した日本シリーズの最終戦をすべて球場で見届けた。歌謡曲のレコードコレクターでもあり、昭和文化にも造詣が深い。
【動画】弾丸ライナー!土田龍空の今季2号がこちら
DAZNベースボールのXより
龍が空を翔ける
弾丸ライナーがウイングへ
土田龍空 第2号ホームラン
⚾️中日×阪神
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【了】