最強ホットハッチ5台を徹底比較|ルノースポール・メガーヌR26.R編

この記事は「最強ホットハッチ5台を徹底比較|フォード・フォーカス RS編」の続きです。最終回として、ホットハッチの現状についても総括!

【画像】「この25年で最も重要なホットハッチ」と評されるルノースポール・メガーヌR26.R(写真4点)

ルノースポール・メガーヌR26.R

トラックデイという現象が注目を集めるようになったのは、新世紀のはじめ頃だった。ニュルブルクリンクのラップタイムが馬力自慢に取って代わり、8分切りを追うあまり乗り心地は後回しにされた。そうして生まれた無数のモデルのなかには、英国のBロードに持ち出した途端、オーナーがカイロプラクター(整体)に電話したくなるようなものもあった。サーキットで高い評価を得ながら、ほかで犠牲を強いない車はごくわずかだった。

2008年、すでに十分優れていたメガーヌR26を徹底した減量にかけるというルノースポールの決断が、R26.Rを生んだ。外見もコンセプトも極端なR26.Rは、好景気の時代であっても売るのは難しかったはずだ。それが発売されたのは、世界的な金融危機の真っただ中である。ディエップ工場は、全450台のうち英国へ230台を送るという当初から控えめな計画を、わずか159台にまで縮小した。それでも世界販売への影響はごく小さかったが、『evo』誌は近年、このR26.Rを「この25年で最も重要なホットハッチ」と評している。なかなか大胆な評価だ。

サーキットの原理に基づいてホットハッチを仕立てること自体は、すでに見てきたシビックが示すように目新しいものではない。だが、後席を取り払い、ロールケージまで備えた一台を作るとなると話は別だ。日常の買い物車に911GT3RSさながらの手法を持ち込んだことで、このジャンルは一段引き上げられた。ルノースポールは、ドライバーとの一体感をあらゆる要素より優先させ、その結果として性能の頂に据えられるホットハッチを作り上げた。

座るという話でいえば、このR26.Rで最初の試練となるのは、窮屈なドライバーズシートに身体を収めることだ。その次に待つのが、サベルト製6点式ハーネスとの格闘である。まず、ドアを閉めておくのを忘れてはならない。こうした一連の所作が独特の緊張感を生む。ロールケージとハーネスを目にすれば、ほんの小さなミスがそのまま救急外来行きにつながりかねない、という結論に否応なく行き着くからだ。

驚かされるのは、R26.Rは乗りにくいどころか、運転しやすく、しかも見事にしなやかだということだ。カーボンファイヤー製ボンネット、樹脂製の側面および後部ウィンドウ、防音材の削減、軽量ホイールなどによって123kgを削りながら、スプリングレードは約10%落とされている。適切に調律されたダンパーが、この見た目からは想像しにくい一体感ある乗り味を生んでいる。R26の227bhpエンジン自体は変わらないが、余計な重さを引きずらなくなったことで、この荒々しいルノーを0-60mphわずか5.9秒へと押し出す。

この顔ぶれの中では1230kgでも決して軽量とは言えないが、R26.Rは広いトレッドと225mmの太いタイヤ、そして見事に見極められたサスペンションによって、まるでマジックテープのような機械的グリップを生む。ペースがどれほど上がろうと、−実際、かなりの速さを引き出せるのだが−R26.Rの正確さは揺るがない。さらに踏み込めば、最良の競技志向マシンがそうであるように、ますます応えてくる感触がある。結局、このルノーの物理的限界を確かめるには、サーキットへ行くしかない。もちろん、それこそがR26.Rの大きな魅力でもある。

新車当時、この限定版ルノーの価格は2万3815ポンド(フル装備なら2万7000ポンド)だった。これほど特異な車にしては高くきこえないかもしれないし、実際にそうであった。だが、その相対的な割安さにも関わらず、ルノースポールは十分な台数を売り切れなかった。売れ残った英国向け在庫をスイスへ回したとも言われている。それから後、この車は本来そうであるべき評価通りの傑作として認められるようになった。相場もまた、それに見合うものになっている。いま手に入れるなら、4万~5万ポンドは必要だ。

ルノースポール・メガーヌR26.Rのライバル車は?

アルファ・ロメオ147GTA

R26.Rほど狂気じみたハードさはないが、250bhpの3.2リッターV6エンジンを前輪駆動のハッチの鼻先に無理やり押し込んだこのアルファは、そのすり減りの早さからタイヤタイヤメーカーの株を押し上げた。1万ポンドから狙える。

フォード・フォーカスRS Mk2

2代目では5気筒で350bhp−しかもそれを前輪で受け止めるという前代未聞の構成だったが、巧妙な”Revoナックル”によってそれを制御する。非常に速いが、ややターボラグはあり、クワトロより安価である。それでも状態の良い個体は今なお3万ポンド級だ。

ホンダ・シビック・タイプR(FN2)

常軌を逸したVTECの2.0リッターは9000rpmまで回る−そして相対的にトルクが薄い分、どうしても回して使いたくなる。すべてはフロントエンドにかかっており、非常に集中度の高いドライビング体験を提供してくれるが、荒れた英国のBロードではしなやかさが試される。価格は5000ポンドから。

VWゴルフGTI MkⅤ/Ⅵ

見事な復活を遂げたモデルであり、現在も続く2.0リッター直4ターボ時代の幕開けとなった。6速マニュアルで味わうのが最良だ。攻めるほどに良さが引き出されるが、その価値はすでに市場も見抜いている。それでも5000〜1万2000ポンドで選択肢はまだ豊富にある。

ホットハッチの現状

受け入れ難い話ではあるが、2008年はもう18年前になる(2026年現在)。メガーヌR26.Rの登場以後、このセクターは進化を続けてきたが、その間に”伝統的な”ホットハッチは次第に姿を消していった。

四輪駆動、さらなる複雑さ、そして常識外れとも思える馬力競争が、軽量な前輪駆動ホットハッチの素朴で心を掴む楽しさをほとんど置き換えてしまった。200bhpが立派な数値だった時代は、そう昔の話ではない。だが、現行勢の中でも屈指の存在であるメルセデスAMG A45Sは、421bhpとその倍以上を誇る。もっとも、1680kgという車重は205GTIのほぼ倍である。

ルノースポールのような名門はすでに姿を消し、ブランドは閉鎖され、アルピーヌへ統合された。フォードはフィエスタSTを打ち切り、ホンダの最新シビック・タイプR(FL5)も、少なくとも従来の意味でいえば最後のモデルになりそうだ。残念ながら、いまの自動車市場はドライバーへのフィードバックや楽しさよりも、直線加速性能やスマートフォン連携の方に重きを置いているように見える。

現在の厳しい状況にも関わらず、近年にも際立った名車はいくつか存在する。たとえば、2012年の見事なフォード・フィエスタSTや、2017年のヒョンデi30Nだ。後者は韓国メーカーから現れた意外なドライバーズカーであり、同社はさらに同じく魅力的なi20Nも生み出している−この車は現在販売されている数少ない”本物の”ホットハッチの一つだ。6速マニュアル、4気筒エンジン、前輪駆動という構成を持つi20Nは、最後の砦のような存在である。もちろん、あまりにも当たり前の存在となったゴルフGTIも健在で、とりわけクラブスポーツ仕様(いまや296bhpに達している)は格別に楽しい。

2020年に登場したトヨタGRヤリスの成功は、小さなラリー志向モデルにもまだ居場所があることを示した。そして、その改良版は昨年末に登場している。2020年型は四輪駆動ではあったが、比較的軽い1280kgの車重と275bhpの出力は、なお我々の琴線に触れるものだった。この初代モデルはあまりにも成功し、ホモロゲーションに必要な2500台という台数を約29500台も上回った結果、トヨタのショールームに定番モデルとして定着するに至った。

たしかに、いま残っているホットハッチは、数字の上では今回の最も新しいモデルを除けば、ここで取り上げた車たちを容易に凌駕してしまうだろう。しかし、問題はそこではない。悲しいことに−そして言い繕いようもないことだが−このジャンルでは、ステアリングの向こうにある楽しさが脇へ追いやられてしまったように見える。時代遅れと呼ばれることを承知で言えば、こうして過去の名車たちを並べてみると、昔のほうが良かったと認めざるを得ない。

翻訳:オクタン日本版編集部 Translation: Octane Japan

Words: John-Joe Vollans Photography: Jonathan Jacob