
ブルーノ・サッコがデザインしたSLは、クルージングとシャープなルックスを楽しめて、最高のコストパフォーマンスを誇る。
【画像】メルセデス・ベンツが最新技術を過剰なほど盛り込んだ時代の、今となってはコスパ抜群のSL(写真7点)
伝統的なメルセデス・ベンツは、ドライバーに特別感を味わわせてくれる。軽いが積極的なステアリング、余りあるパワー、あえてゆったりとした設定のATによって、目的地に着いたときには出発時よりリラックスしている。R129型はその典型だ。スポーティーではないが、実に深みのある走りを体験できる。メルセデス・ベンツが最新技術を過剰なほど盛り込んだ時代のSLだから、今ではコストパフォーマンスが抜群だ。
ブルーノ・サッコがデザインしたこのコンバーチブルは、1988年に登場し、ドラマ『ダラス』でお馴染みのR107型から大きく進化していた。短縮したW124型プラットフォームをベースに、リアサスペンションにはマルチリンクを採用。シャープなルックスに、安全性と快適性を高める最先端の装備を満載していた。その筆頭がロールオーバーバーだ。
当初、エンジンは3種類が用意された。3リッターの直列6気筒は2種類あり(188bhpの12バルブSOHCと、228bhpの24バルブDOHC)、ギアボックスは4段ATか5段MT。最高グレードの500SLは、322bhpの5リッターV8を搭載した。1992年には、怪物級の6リッター、48バルブのV12を擁するSL600も登場した。6気筒のパフォーマンスも悪くはないが、スピードを求めるならV8をお勧めする。ルーフを開けたときのサウンドも段違いだ。燃費に大きな差はない。
1994年に車名の付け方が変わり、300SLはSL300になった。1996年のフェイスリフトでは、もっと意味のある変化が起きる。ボディと同色のバンパーの外観がアップデートされ、新型の5段ATが導入された。
1998年に最後のマイナーチェンジがあり、直列6気筒は消えて、新たにM112型V6エンジンとなり、500も同種のM113型V8に変わった。大径ホイールと様々なトリムの変更も行われたが、これはメルセデスがコスト削減に励んだ時期だから、必ずしも新しいほうが望ましいとはいえない。
高性能モデルのAMGバージョンは複数あるので、詳細は別の機会に譲る。最も一般的なのは6リッターV8を搭載するSL60で、1993~98年に生産され、その後、5.4リッターのSL55に置き換えられた。最も評価が高いのはV12モデルだ。7.1リッターと最大の7.3リッターがあり、このエンジンはのちにパガーニ・ゾンダに搭載された。
先代のR107型は、どちらかといえば高齢のジェントルマンが愛用してきた印象だが、現在、R129型はクールな若い世代から支持を集めている。なにしろ、AMGホイールさえ装着すれば、80~90年代のカーショー、ラドウッドで注目を集められるのだ。
バイヤーズガイド
●価格帯
入門用にぴったりなのが6気筒モデルで、コストパフォーマンスが最高だ。6000~8000ポンド(約126万~168万円)の予算があれば、そこそこの走行距離で整備の行き届いたものが豊富にある。状態の悪いものなら、5000ポンド(約105万円)以下で見つかる。低走行距離で最高のコンディションのものは1万~1万5000ポンド(約210万~315万円)で、特別な1台はそれ以上になる。
V8の場合はもう少し高くなり、良~優の範囲は8000~1万5000ポンド(約168万~315万円)、最高のものは2万ポンド(約420万円)以上。V12モデルは、標準仕様でも滅多に市場に出てこないが、最高の1台ともなれば4万ポンド(約840万円)を超える。AMGモデルは、V8で2万5000~5万ポンド(約525万~1050万円)。V12になると完全に別格で、2024年のオークションに出品された最後のSL73は、なんと61万ドルだった。
●注意点
6気筒エンジンは、きちんと整備すればトラブルなく40万マイルは使えることで有名だ。ただし、ヘッドガスケットからのオイル漏れだけはチェックしよう。V8はもう少し注意が必要だが、同様に頑丈だ。
当初、”永遠に密封状態”でよいとされていたギアボックスは、のちに4万マイルごとにフルードの補充が必要になったので、作業済みか確認しよう。1994年以降のSLはワイヤーハーネスに問題があるから、交換した証拠があれば安心だ。
V12はスーパーカー並みの維持費を覚悟しよう。とくにサスペンションの可変ダンピングシステムだ。一般にパーツは手に入りやすいが、高額になる場合がある。
編集翻訳:伊東和彦 (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵
Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) Translation:Megumi KINOSHITA
※この記事は『Octane』UK版274号(2026年4月号)を翻訳したものです。記載されている相場はその時点におけるイギリス国内のものであり(1ポンド=約210円で換算)、日本での流通相場とは異なる場合があります。