
MLB1年目から好スタートを切った村上宗隆と岡本和真。数字だけ見れば順調な滑り出しだが、その中身は大きく異なる。スイング、打球、打撃スタイル――各種データが示す“2人の違い”とは何か。メジャーでの現在地と今後の課題を読み解く。(文・八木遊)
対照的な環境で迎えたMLB1年目
2026年のメジャーリーグは開幕から1週間が経った。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の余韻も残る中、侍ジャパンのメンバーとして共闘した2人の和製スラッガーも好スタートを切っている。
昨季のア・リーグ覇者、トロント・ブルージェイズに入団した岡本和真と、2年連続ア・リーグ最低勝率で再建モードのシカゴ・ホワイトソックスに入団した村上宗隆だ。
昨季までセ・リーグのライバル球団でプレーし、毎年のように本塁打王を争った2人は対照的なチームを移籍先に選んだ。それでも2人の志に大きな差はないだろう。
開幕からそれぞれ6試合を消化。様々なデータなどから見えてきた2人の立ち位置を分析していこう。
中身は別物──村上と岡本、打撃スタイルの違い
【今季打撃成績、日本時間4月2日現在】
村上宗隆 6試合 打率.238(21打数5安打)、3本塁打、4打点、OPS1.027
岡本和真 6試合 打率.292(24打数7安打)、2本塁打、3打点、OPS.912
村上は開幕から3試合連続、岡本はチーム3試合目と4試合目に一発が飛び出した。まだサンプル(打席数)は少ないが、ともにNPB時代に匹敵するOPSを残している。
ここからはさらに細かいデータを用いて2人を比較していきたい。
スイングスピード
ともにNPBでは屈指のスイング速度を誇っていた2人。メジャーリーグのデータサイト「Baseball Savant」によると、村上は全体の上位21%、岡本も同36%に位置しており、1年目からしっかりバットを振れている。
特に村上は、FastSw%と呼ばれる、75マイル(約120.7キロ)以上のスピードでスイングした率が46.7%にも上る。スイング2回のうち1回が、“速いスイング”に分類されていることになる。
一方で、岡本のそれは21.9%。村上ほど“速いスイング”が多いわけではない。言い換えれば、ヒット狙いの軽打も少なくないということか。
打球の速度&角度&種別
スイングスピードでは「村上>岡本」という結果が出たが、ボールがバットに当たった際の結果は岡本に分がある。2人の平均打球速度は岡本が93.3マイル(約150.1キロ)、村上は91.2マイル(約146.7キロ)だった。この打球速度が2人の打率にも反映されているといえるだろう。
また、打球角度は岡本が17.8度、村上は8.7度と約2倍の差が生まれている。2人の打球種別の内訳も対照的で、岡本はゴロ4本、フライ5本、ライナー4本と、3種別がほぼ同数なのに対して、村上はゴロとフライが6本ずつ。まだライナーに分類される打球が出ていない。
2人に共通して言えることだが、いくつかのゴロがライナーに変わるようなら、成績はさらに上がっていくだろう。
打球方向
2人の打球方向にも顕著な差が出ている。岡本は左中右のどの方向にも打球を飛ばしており、左から順に5本、4本、4本。2つの本塁打はどちらもセンターから右方向だったように、フィールド全体を満遍なく使う打撃ができている。
一方の村上は左から順に2本、5本、5本。逆方向への打球が少なく、岡本に比べて引っ張る意識が強いことがデータから読み取れる。逆方向へのパワーも十分あるだけに、その意識付けが重要になってきそうだ。
BABIP
5分以上の差が出ている打率の違いは、BABIP(Batting Average on Balls In Play)と呼ばれる指標で説明がつく。
BABIPとは本塁打を除くインプレーの打球のうち安打となった割合のこと。最終的に.300前後に収束するとされるが、現時点の2人のBABIPは岡本が.455、村上は.222と大きな差がついている。
つまりこれは、岡本がかなり運に恵まれていて、村上はそうでもないということ。今後は2人とも.250前後の打率に落ち着いていくのではないだろうか。
fWAR
最後は勝利への貢献度を示す総合的な指標「WAR」を比べておこう。ここではFanGraphs社が算出する「fWAR」を取り上げる。
2人のfWARは岡本が0.4、村上が0.3とほぼ同数。シーズン序盤にWARを語るのはやや無理があるが、オフェンス(打撃&走塁)とディフェンス(守備)の貢献度をそれぞれ見ると、岡本は2.0と0.7で、守備での貢献度が高い。
対する村上は2.5と-0.2。打撃面では岡本をしのいでいるものの、DHでの出場もあって守備ではマイナス値が出ている。
今後のカギは?村上と岡本の課題
ここまでいくつかのデータを用いて2人の大砲を比較してきたが、最後に1つずつ今後のポイントを挙げておきたい。
村上はまだ左投手との対戦が3打席だけ。そしてそのすべてで三振を喫している。今後はサウスポー対策をしっかり打てるかどうかが大きなカギとなりそうだ。
一方の岡本はチャンスでどれだけ走者をかえせるかがポイント。ここまでの走者状況別の打率を見ると、走者なし時は.357と高打率だが、走者ありだと.200、得点圏時は.143と抑え込まれている。打順的に打点が求められる立場だけに、状況次第で一発を捨てることも必要になってくるだろう。
2人は162試合のうち6試合を終えたところ。それでもここまで垣間見せた打棒はメジャーでの成功を予感させるには十分。日本時間4日から始まる直接対決3連戦にも注目が集まる。
【著者プロフィール】
八木遊(やぎ・ゆう)
1976年生まれ。スポーツライター。米国で大学院を修了後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLなどの業務に携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬記事を執筆中。
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【了】