2023年8月に設立された「内航船の廃食油回収・バイオ燃料活用に関する連絡協議会」は、内航分野におけるカーボンニュートラルの推進のために多様な活動を実施。3月17日には、東京都千代田区の海運ビルにて、「内航船の廃食油回収・バイオ燃料活用に関する成果発表セミナー」が開かれた。
本セミナーは内航海運におけるバイオ燃料活用等の取り組みの成果や最新情報の共有を行い、今後の方向性を考える場として開催。本稿では、オンライン配信された内容をレポートする。
海運分野のカーボンニュートラルに向けた取り組み
独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下JRTT) 理事 有働 隆登氏による開会挨拶に続いて行われた、基調講演「海運分野のカーボンニュートラルに向けた取り組み」。国土交通省海事局 海洋・環境政策課 課長 河合 崇氏が登壇した。
政府が掲げる内航海運の温室効果ガス削減目標として、モーダルシフトを考慮した場合、2040年度に2013年度比で約36%(387万トン)削減することを紹介。目標達成に向けた対策の柱として、「省エネ船の導入」と「バイオ燃料の利用(10%相当)」、中小型船ではバッテリーや水素燃料電池(FC)、大型船ではe-メタノールといった「代替燃料船への転換」の3つを挙げた。
1つ目の省エネへの取り組みでは、経済産業省と連携した、リプレイス時の省エネ機器の導入・実施に対する金銭的支援や、今後結果を公表予定のハイブリッド技術の内航海運船への適応に関する調査について説明。
既存船への導入を実現しやすい主な省エネ技術としてプロペラ前方の付加物や低摩擦軸受、低摩擦塗料などを挙げ、船舶の環境性能を可視化し、PRしやすくする「内航船省エネルギー格付け制度」についても述べた。
2つ目のバイオ燃料については、令和5年に改定した「船舶におけるバイオ燃料取扱いガイドライン」を紹介。試験によってSVO(植物油を用いたバイオ燃料)の利用に特段の問題がないことが確認されたとしつつ、腐食・劣化等の留意点も指摘した。
そのほか、需要側と供給側双方で構成された勉強会による原料確保等の課題整理や、通常の油タンカーで運搬できるバイオ燃料の混合比を25%から30%へ引き上げる制度改定も行われている。
3つ目の代替燃料船の導入に向けた取り組みでは、ゼロエミッション船の導入費用を補助する支援事業や、代替燃料船への改造を見据えた船舶(Ready船)の、内航船における設計や経済分析の現状を紹介。
横浜港で行われたメタノールバンカリングのシミュレーションや、今後海外との調和を図るアンモニアバンカリングガイドラインについてもふれた。
連絡協議会の活動と鉄道・運輸機構の取組
講演「連絡協議会の活動と鉄道・運輸機構の取組」には、JRTTの伊崎 朋康氏が登壇。内航分野での脱炭素化においては水素やアンモニア等の導入のハードルが高い中、既存設備で使えるバイオ燃料への期待が高まっていると述べた。
冒頭ではまず、内航船の廃食油回収・バイオ燃料活用に関する連絡協議会について紹介。協議会は、これまで陸上で取り組まれてきた廃食油の回収の促進と、廃食油を原料とするバイオ燃料活用の拡大によって地産地消の仕組みを内航海運にも拡大するために設立された。
構成メンバーは日本内航海運組合総連合会・一般社団法人 日本旅客船協会・全国油脂事業協同組合連合会・一般社団法人 日本舶用工業会の4団体であり、オブザーバーとして国土交通省海事局が参加。事務局を独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構が担い、協力者として豊田通商株式会社・株式会社ダイセキ環境ソリューション・国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 (海上技術安全研究所)が名を連ねている。
セミナーでは図とともに2023年度から2025年度の活動概要も紹介され、その後、JRTTが行った2件の技術調査の成果報告がなされた。
JRTTは毎年度技術調査を実施しており、近年はバイオ燃料に関する調査も増加している。令和6年度に実施した「廃食油回収・バイオ燃料活⽤の地産地消トライアル実証調査」については、現状の課題として廃食油の回収を指摘。回収方法としてPETボトルやペール缶等の容器の使用は特段の問題がないとしているが、危険物である廃食油の保管・集積場所や、回収を効率よく行う手法の検討の必要性を述べた。
一方、バンカリングについては通常の燃料油と同じ手法で可能なことを確認。燃焼実験でも問題はなかったものの、発熱量がやや低い点には留意が必要とされた。
令和7年度に実施された「船舶におけるバイオディーゼル燃料の活用に向けた潤滑特性等に関する調査」では、バイオ燃料の潤滑特性が概ねA重油とC重油の範囲内に収まることを確認。総合的には従来の燃料に準じる潤滑特性をもつと推察した。なお、実運用においてはメーカーとの相談が推奨されるとしている。
各専門企業・団体による講演も
その後も、各分野の専門企業や団体による講演が実施された。NX商事株式会社 栗山 修平氏と株式会社さんふらわあマリン&エージェンシー 大島 歩氏は「海運業界におけるバイオ燃料活用・廃食油回収の取組」、ヤンマーパワーソリューション株式会社 折野 和昭氏は「脱炭素/ゼロエミッション化に向けたヤンマーの取り組み ~バイオ燃料による脱炭素化の実現~」、全国油脂事業協同組合連合会 塩見 正人氏は「廃食用油に関する取組と最新動向」に登壇。
その後、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所 高橋 千織氏による「バイオ燃料の舶用適合性に関する研究の概要と課題」、豊田通商株式会社 林 慎也氏による「廃食油回収の促進とバイオ燃料活用の拡大による内航カーボンニュートラルの推進」、三和エナジー株式会社 山田 貴帆氏による「バイオ燃料の市場供給に向けた取り組みと課題」、損害保険ジャパン株式会社 福原 幹人氏による「バイオマス燃料と船舶保険について」が行われた。










