4月は新生活のスタート。保育園や幼稚園への送迎のために、この春から電動アシスト付き自転車を使い始めるという方も多いのではないでしょうか。
坂道もラクラク、子どもを乗せてもスイスイ走れる電動アシスト付き自転車は、忙しい子育て世帯にとって心強い味方です。しかしその一方で、幼児を乗せた自転車の事故は、ちょっとした油断や身近な道路環境をきっかけに起きています。
そこで今回は、消費者庁が好評した事例(「幼児を乗せた自転車での事故に注意!」2023年3月17日発表)をもとに、子乗せ電動アシスト付き自転車を製造・販売するヤマハ発動機の担当者に、どのような点に注意すべきかを聞きました。
事故は「走行中」だけではない
「自転車の事故」と聞くと、走行中の接触や転倒をイメージしがちです。しかし実際には、停車中にバランスを崩して倒れたり、子どもを乗せたまま保護者が少し離れた隙に転倒したりするケースもあります。とくに電動アシスト付き自転車は車体が重く、前後に子どもを乗せると重心も変わるため、思わぬ場面でふらつきや転倒が起きやすくなります。
また、幼児は自分で身を守ることが難しく、転倒時に頭部を打ちやすい傾向があります。ヘルメットや座席ベルトを着用していたかどうか、正しく装着できていたかどうかが、被害の大きさを左右することも。生活に欠かせない便利な移動手段だからこそ、「まだ慣れていない最初の時期」に基本を押さえておくことが大切なのです。
【事例1】ハンドルに掛けたリュックがガードレールに引っかかり……
自転車の前座席に下の子、後部座席に上の子を乗せて走行中、ハンドルに掛けていたリュックがガードレールに引っかかり、左側に自転車ごと転倒した。子どもは二人とも投げ出され、下の子は頭蓋骨骨折、硬膜外血腫等により、集中治療室で全身管理となり、約10日間の入院が必要となった。ヘルメット・座席ベルトはしていなかった。(1歳)
リスクと対策
――この事例ではガードレールに引っかかったとのことですが、ハンドルに物を掛けて走行することで起きる危険は他にもあるのでしょうか。
ヤマハ発動機担当者:弊社製品の取扱説明書では、荷物をハンドルにぶら下げることについて、車輪に巻き込まれたり、バランスを崩して転倒したりする恐れがあるとして注意喚起しています。なお、なお、警察庁HPでも安全運転義務違反にあたるとされています。
――ヘルメット、座席ベルトを未着用だったとのことですが、重要性を教えてください。
ヤマハ発動機担当者:令和6年中の自転車乗用中の死者の約5割が頭部を負傷しており、頭部を保護することは極めて重要です(警察庁HPより※1)。また、弊社製品の取扱説明書の安全上の注意でも「乗車の際は必ずヘルメットを着用する」と記載しております。加えて、改正道路交通法の施行により、すべての自転車利用者のヘルメット着用が努力義務となっています。
荷物が多くなりがちな保育園・幼稚園への送迎や買い物では、つい荷物をハンドルに掛けたくなるかもしれません。また、ヘルメットや座席ベルトを嫌がる子もいるでしょう。しかし「ちょっとの距離だから」が大きな事態につながることもあるのです。
※1警視庁交通局「令和6年における交通事故の発生状況について」(令和7年2月27日)
【事例2】保護者が離れた隙にバランスを崩し……
自転車の前座席に乗車していた。保護者が離れた隙に自転車が左側に倒れ、頭蓋内出血により2週間以上の入院が必要となった。ヘルメットは装着していたが、転倒時には脱げてしまっていた。(4歳)
リスクと対策
――自転車の前座席から倒れた場合、どれくらいの高さに匹敵するのでしょうか。
ヤマハ発動機担当者:具体的に公表している諸元はありませんが、例えば子どもを前に乗せるタイプの電動アシスト自転車PAS kissに関しては、ハンドルの高さが980mmです。お子さまの身長にもよりますが、約1mの高さから落下することになります。
――一般的な子乗せ自転車は重心が低いタイプが多いですが、やはり子どもだけを乗せて離れるのは危険なのでしょうか?
ヤマハ発動機担当者:弊社の取扱説明書では、チャイルドシートにお子さまを乗せるときも降ろすときも、「万が一自転車が倒れそうになっても、すぐに手で支えられる位置に立つことと」しています。いずれも駐輪中はお子さまの乗車有無にかかわらず転倒リスクがあるためです。
「荷物を置いてくるだけ」「鍵を取りに行くだけ」――ほんの数秒でも、子どもを乗せたまま自転車から離れることは避けましょう。
【事例3】抱っこひもで抱っこしたまま走行し、風にあおられて……
子どもを抱っこひもで抱っこして走行中、風にあおられ自転車が右側に転倒した。保護者は前のめりに倒れ、とっさに子どもの後頭部を押さえたものの、右頭部を打撲し、頭蓋骨骨折で1週間の入院が必要となった。(0歳7か月)
リスクと対策
――子どもを抱っこひもで抱っこした状態で自転車を走行してもいいのでしょうか?
ヤマハ発動機担当者:道路交通法では、子どもを抱っこして同乗させることは禁止されており、「4歳未満の幼児」かつ運転者は「16歳以上」でおんぶであればOKとなっております。しかし、弊社製品については安定性の観点からチャイルドシートの使用を前提としております。
上の子の送迎に下の子を抱っこして……という場面も多いかと思いますが、チャイルドシートの対象月齢に満たないお子さんの場合は、自転車以外の移動手段を検討することも大切な選択肢です。
【事例4】道路の段差につまずいて転倒
子どもを前座席に乗せて自転車を走行中、道路の段差につまずき右側に転倒した。手に小さなけがを負い、3回嘔吐し、脳しんとうと診断された。子どもはヘルメットと座席ベルトをしていた。(1歳)
リスクと対策
2026年4月から自転車が原則車道走行となり、事故に遭わないためより一層注意深い運転が求められます。ヤマハ発動機の担当者によると、以下のようなポイントでとくに注意が必要だそうです。
とくに子どもを乗せているときは、段差を無理に乗り越えようとせず、危ないと感じたらいったん降りて押して歩くことも大切です。
4月からは「自転車は原則車道」通園ルートの下見を
2026年4月からは、自転車の車道走行が原則となります。これまで歩道を走っていた方にとっては、車道ならではの路面状況に慣れる必要があります。車道の端には、排水溝のふたや段差など、徒歩や車では気付かない障害が。
おすすめしたいのは、お子さんを乗せる前に、一度通園ルートを自分だけで走ってみること。段差や危険な箇所を事前に把握しておくだけで、日々の送迎の安全性は大きく変わります。また、ヘルメットや座席ベルトの正しい装着、荷物の載せ方など、忙しい毎日の中でつい疎かになってしまうことこそが、命を守る大切なポイントです。正しい知識と習慣を身につけて、安全で快適な新生活をスタートさせましょう。
【出典・参考】
- 消費者庁「子ども安全メール from 消費者庁 Vol.622 幼児を乗せた自転車での事故に注意!」(2023年3月17日)
- ヤマハ発動機株式会社 PASシリーズ 取扱説明書


