
プロ2年目のシーズン開幕を前に、山中稜真がアピールを続けている。ルーキーイヤーだった昨季は開幕一軍入りを果たすも、19試合出場、打率.122という成績に終わった。プロのレベルの高さを体感した1年目を今季へとつなげるべく、山中はオフシーズンから準備を続けてきた。(取材・文:野口航志)
プロフィール:山中稜真
木更津総合高では甲子園に2度出場。青山学院大、三菱重工Eastを経てドラフト4位でオリックス・バファローズに入団した。捕手登録ながら、一塁や外野も守れるユーティリティープレーヤーで、ルーキーイヤーだった昨季は開幕一軍入りを果たした。
「テーマを持って」アピールを続ける2年目
3月6日の巨人とのオープン戦。山中稜真は6回の守備から途中出場すると、9回に2点タイムリーツーベースを放った。限られた打席、限られた出場機会の中で結果を残す見事な一打だった。
昨年一軍で19試合に出場した山中にとって、2年目はアピールの年になる。負傷中だがチームの主軸・頓宮裕真や新外国人のシーモアが守る一塁や、西川龍馬、中川圭太、杉本裕太郎など実績のある選手が数多く守る外野布陣の中に割って入る立場。今回のように途中から試合に入り、少ないチャンスで結果を出すことが求められる場面は増えていくだろう。
山中自身は、このオフからキャンプにかけての積み重ねに手応えを感じている。「去年のシーズンが終わってから台湾ウィンターリーグにも行きましたし、他の選手よりも長く実戦する期間がありました。去年は夏あたりにちょっと疲れも感じましたし、周りが見えてきて慣れてきた分、体の面でもいろいろ感じるところがあったので、今季はしっかりバットを振り込もうと思ってオフを過ごしました」。
ルーキーイヤーだった昨年の反省を踏まえながら、今年は体の面でも気持ちの面でも、昨年とは違う準備をして春を迎えている。
「去年は何も分からない状態で入って、本当に一日一日を必死に過ごしていました。今年は入る前から、こういうことをしようというテーマを持って入れました。バッティングならまず振る量を増やして、しっかり強く振る。守備でも内外野どっちでやるか分からないので、どっちも量をこなして体に染み込ませる。そういう準備をして入れたのは大きかったです」
その積み重ねは、体の感覚にも表れている。「去年より疲れていないというか、少し余裕がありますね。周りも見えるようになってきたかなと思います」。プロ2年目は地に足をつけて、着実に成長を続けている。
「ダメだったらやめよう」ウィンターリーグから継続する意識
昨年は初めて対戦するプロの投手相手にうまく合わせようとする分だけ、打球が弱くなったり、正面を突いたりすることも多かった。「きれいなヒットにしようとしすぎていた部分がありました。結果として正面を突いたり、なかなか数字にもつながらなかった」。結果を欲しがるあまり、"当てるだけ"のスイングが目立った。
その反省から、台湾ウィンターリーグでは打撃への意識を大きく変えた。
「強く振るということを一つのテーマにして臨みました。ダメだったらやめようかなとも思っていたんですけど、思ったよりいい数字が出たので、このままキャンプでも継続しようと思いました」
山中の言う"強く振る"は、ただ力任せにフルスイングをするということではない。
「(打球が)詰まったと思ってもスイングをやめない。泳いでも空振りでも、しっかり振り切る。よくない時は、どうしてもきれいに打とうとしてしまうので、そうならないように意識しています」
途中で止めずに最後まで振り切ることで、内外野の間に落ちるヒットや外野の頭を越える打球といった形で、結果に結びつく実感があった。
台湾ウィンターリーグではもうひとつのテーマとして"数字を残す"ということにもこだわった。
「一つ結果を残しにいこうというか、数字を出しにいこうと思っていました。シーズン中はなかなか継続して試合に出られる立場でもなかったので。色々試せる機会でもありましたし、強く振るというテーマと、数字を求めることの両方を持って入っていました」。14試合出場、打率.340(50打数17安打)と言葉通り"数字"を残した。
新しい取り組みを試し、その上で結果も残す。感覚だけで終わらせず、数字という形で手応えを持ち帰れたことは大きい。
結果が出たことは、もちろん自信にはなった。だが山中はその結果と今は別だと言う。
「頭で考えているイメージと、実際の動画を見返した時に…」
[caption id="attachment_256649" align="alignnone" width="480"] オリックス・バファローズの山中稜真(写真:野口航志)[/caption]
「台湾でやってきたことが、そのまま今のオープン戦に直結しているかと言われたら全く別です。ああいうやり方もあるんだという引き出しにはなったと思います。ドツボにはまった時に戻れる場所というか、一つの糧にしなきゃいけないと思っています」
調子が良い時ばかりではない長いシーズンだからこそ、引き出しを増やしておくことが重要になる。そういう意味でも、昨オフに実戦の場で試行錯誤できた経験は非常に大きい。
実際に状態が上がらない時、山中はどう立て直すのか。「ひたすら振ることです。自分は練習しないとダメなタイプなので」。
映像でフォームを確認することもある。「頭で考えているイメージと、実際の動画を見返した時に、もっとこうできるんじゃないかっていうのはありますけど、やっぱり数をやらないと自分は分からないし、染み込まないと思っています」。最後はやはり量が必要だという。
悪い感覚のまま終わることも嫌だという。「良くないまま終わるのが気持ち悪いので。結果的に量になるんですけど、良くなるまでやろうっていう日は、どのカテゴリーでもありました」。
高校、大学、社会人、そしてプロ。立場が変わっても、自分を立て直す方法の根っこは変わらない。山中の土台にあるのは、シンプルに「練習しかない」という考え方だ。
その姿勢は守備面にも通じている。山中のポジションは一塁と外野が主戦場だ。試合の流れやチーム事情に応じて、いつどこで名前を呼ばれてもおかしくない立場にいる。
「まず(試合で結果を出すために)やらなきゃいけないので、練習をしっかりやるだけです」試合前のノックから複数ポジションに入り、その日の起用を想定しながら動く。
キャンプではとにかく打撃も守備も徹底的にこなしてきた。「今日は外野を重視するとか、内野を重視するとか、その日の状況に応じて量を変えることは意識しています。キャンプの時は本当にどっちも100、100という感じでしたけど、シーズンが近づくとそうもいかないので」。
「ちょっと真似しよう」先輩を見本に、準備を怠らない
そうした中で参考にしている存在のひとりが、同じように複数ポジションをこなす廣岡大志だ。外野守備を「本格的に始めたのはプロに入ってから」と言っていた廣岡は、試合前の打撃練習で"生きた打球"を積極的に捕ることを意識していると話していた。ノックでは得られない打球の質や判断を、実戦に近い形で体に染みこませていく工夫だった。
山中もまた、そうした先輩たちの取り組みを自分の中に取り込もうとしている。「いろんなポジションをやっている先輩の動きを見て、ちょっと真似しようとか、そういうのはあります」
外野守備についても、自分なりに大事にしていることがある。「外野は打球判断が一番必要だと思うので、ノックでもそういう打球を受けるようにしています」。
複数ポジションを守るというのは、ただ器用であればいいわけではない。限られた練習時間の中で、どんな打球を受け、何を優先して準備するか。山中はそうした部分でも、試合に出続ける先輩たちの工夫を見ながら、自分なりの形を作ろうとしている。
社会人時代の三菱重工Eastで本格的に一塁をやり始めた時も、試合に出続ける中で少しずつ見える景色が変わったという。「最初はなかなか手につかない時もありましたけど、試合に出続ける中で落ち着いて見られるようになったと(チームメイトに)言ってもらえた。そういうのは練習だけではどうにもならない部分もあると思います」。
だからこそ、今回のように守備から途中出場し、そのまま打席で結果を残すことには意味がある。外野と一塁の争いの中で、スタメンだけでなく途中出場からでも流れに入って結果を出せるかどうか。そうした役割が今後さらに求められていくだろう。
「いきなりどこに行けって言われるか分からないので、両方やらないといけないと思ってます」
柔軟さと準備力。複数ポジションを守れることは、長いシーズンの中で確実に価値を持つ。
「全然違うな」痛感したプロの厳しさ
シーズンを1年通して戦う中で、プロの世界の難しさも痛感した。
「常に全力じゃないというか、同じパフォーマンスをシーズン通して出し続ける難しさをすごく感じましたね。アマチュアは夏に合わせる、大会に合わせるという感じですけど、プロは大きな波を少なくして長く戦わないといけない。試合に出続けている選手を見ると、その準備だったり、力の出し方だったりが全然違うなと思いました」
負けたら終わりの短期決戦ではなく、1年間という長いシーズンの中で、大きな波を作らずに戦い続けなければいけない。
技術だけではなく、体の強さ、メンタルの強さ、オンとオフの作り方。それがプロの基準だと知った1年目だった。だからこそ今年は、体力面の準備やキャンプでの過ごし方にも意識を向けた。「去年より余裕がある」「周りが見える」という感覚も、そうした昨年の経験が活きている。
今季の目標は、「まずは去年以上の試合数、去年以上の結果を残すのは当然だと思っています。具体的な数字というよりは、チームの勝利につながるプレーを増やしたい。打撃の打点もそうですし、守備もそう。全部において、もっと勝利に貢献する試合を増やしていきたいと思っています」
限られた打席で結果を残す。守備からでも自然に試合へ入る。複数ポジションをこなしながら、自分の武器を少しずつ研ぎ澄ませていく。いよいよ始まるシーズンで山中稜真は2年目を飛躍の年にする。
(取材・文・写真:野口航志)
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