
メジャーリーグ 最新情報
WBCが終了し、開幕が近づくメジャーリーグ。今季は投手としてもフルシーズンに臨む大谷翔平がサイ・ヤング賞を狙えるのかにも注目が集まっている。だが、その評価を左右するのは防御率や奪三振だけではない。ロサンゼルス・ドジャースが採用する6人ローテーションや慎重な投手運用は、投球回数という点で不利に働く可能性がある。今回はデータを基に、大谷のCY賞争いにおける条件と課題を整理する。(文:Eli)
”サイ・ヤング賞”受賞の条件とは
[caption id="attachment_255613" align="aligncenter" width="990"] 近年のサイ・ヤング賞投手[/caption]
言うまでもないがどんな投手であってもサイ・ヤング賞を獲得するには、質と量の両面でメジャー屈指の成績を残す必要がある。
昨年を例にとるとALCY受賞のタリク・スクバルは195.1回(MLB6位)を投げ、防御率2.21(2位)、FIP2.45(2位)、NLCY受賞のポール・スキーンズは187.2回(10位)、防御率1.97(1位)、FIP2.36(2位)を記録した。
近年は投手に制圧力がより重視される傾向にあり、200回到達が必須というわけではない。
それでも162試合を通じて32先発前後をこなし、各登板で6〜7回を安定して消化することが、依然として一つの目安となる。
個別のケースを見ると、2021年のコービン・バーンズや2022年のジャスティン・バーランダーのように、投球回は比較的少ないながら質で頂点に立った例もある。
特にバーンズは、規定投球回(162回)をわずかに上回る投球回ながら、過去10年でもわずか3人しか記録していないFIP1点台を達成。
さらに同期間2位のジェイコブ・デグロムの1.99を大きく引き離す1.63という圧倒的な数字で受賞を果たした。
一方で、2022年のサンディ・アルカンタラや2023年のゲリット・コールのように、200回以上を投げる「量」で評価されたケースもある。
アルカンタラは現代ではあまり主流ではないゴロピッチャータイプで、この年のK%は23.4とリーグ平均程度だった。それでも6完投を記録するなど、とにかく多くのイニングを投げ抜くことでサイ・ヤング賞を手にした。
サイ・ヤング賞を目指す上での“一番の障壁“は…?
[caption id="attachment_227654" align="aligncenter" width="530"] 写真:Getty Images[/caption]
大谷翔平がサイ・ヤング賞を目指すうえで不利に働く可能性があるのが、ドジャースの投手運用だ。
大谷翔平を先発陣に抱えるチームは、二刀流としての負荷管理を考慮し、週1登板を基本とする6人ローテを採用する傾向にある。
162試合を6人で回すと、1人あたりの先発は約27試合となる。これはメジャーの標準である中4〜5日の5人ローテによる30〜32先発と比べると、先発数の面で少ない。
また、登板間隔が空いても100球を大きく超えるような起用は基本的に行われない。そのため、投球回数も先発数の差に応じて減ることになり、量の面では不利になりやすい。
加えて、ドジャース特有の事情もある。チームの最大の目標はワールドシリーズ制覇であり、この点ではチームと大谷翔平を含む投手陣も同じ方向を向いている。
そのため、山本由伸、ブレイク・スネル、タイラー・グラスノー、大谷といった先発陣の主力を、ポストシーズンが始まる10月まで無理をさせずに起用していく必要がある。
こうした事情から、ドジャースは特に4月から7月頃までは保守的な投手運用を行う傾向がある。春のランプアップの延長線上にある4〜5月の運用では、90球前後で降板させたり、マイナー投手を活用して登板間隔に余裕を持たせたりするなど、慎重な起用が予定されている。
さらに、わずかでも故障の兆候が見られた場合には、登板回避や予防的な故障者リスト入りもためらわず行われるだろう。
「量」を「質」でカバー出来るか…?
[caption id="attachment_255614" align="aligncenter" width="685"] 大谷翔平投手成績指標[/caption]
また大谷個人に目を向けてもクリアすべき課題はある。
昨季6月にメジャーでの登板を再開した大谷は、イニング数や登板間隔を徐々に通常の形へ戻していった。シーズン最終盤の9月には投球回も5〜6回程度まで伸びたが、この時の登板間隔は平均8日と、通常のローテーションとは言い難いものだった。
プレーオフでもこの運用は大きく変わらず、ワールドシリーズを除けば各シリーズで登板は1試合のみ。登板間隔も平均10日前後と、依然としてイレギュラーな起用が続いていた。
単発的には素晴らしい登板を見せていたものの、中5、中6日の通常運用が開始された際に大谷がどのようなパフォーマンスを見せるかは不透明な面がある。
復帰後の大谷は平均98.1マイル(約158キロ)のフォーシームを筆頭に全球種が平均以上の球速で、球威に頼った投球で防御率2.87、FIP1.90、K%33.0とリリーバーのような制圧力を武器にした投球をしていた。
一方でLocation+は101と平均的で、また歴史的にも大谷は球威優先・制球二の次の投手であった。
今後、中5,6、各登板6-7回を想定した運用を開始するにあたって、平均98マイル(約158キロ)を出すことは無いだろう。前述したように「量」でハンデを抱える大谷は「質」でカバーする必要がある。
球速がすべてではなく大谷には多球種という武器もあるためカバーできるかもしれないが、課題となることは確かだ。
伝統的な指標に加え、球威や制球を評価するモデルであるStuff+、Location+、Pitching+を組み込んだOOPSY Projectionによれば、大谷翔平の来季成績は23先発114回、防御率3.08、FIP3.35と予測されている。
さらに、ナ・リーグのサイ・ヤング賞争いを想定した先発投手の中では、2.7fWARで15位前後と見込まれている。
防御率やFIPといった質の面ではリーグ上位の成績が予測されているものの、やはり課題は量にある。ここ数年は十分なイニングを投げていないことから故障リスクが織り込まれ、投球回は114回と先発投手としてはかなり少ない水準にとどまると予測された。
その結果、fWARでは量と質をある程度両立しているポール・スキーンズやクリストファー・サンチェスに大きく水をあけられると予測されている。
【著者プロフィール】
Eli
主にXでドジャース、MLBに関する情報を発信。
X:@byeli_dodgers59
note: https://note.com/lim33
【データ一覧】大谷翔平はサイヤング賞を取れる…?
[caption id="attachment_255613" align="aligncenter" width="990"] 近年のサイ・ヤング賞投手[/caption]
[caption id="attachment_255614" align="aligncenter" width="685"] 大谷翔平投手成績指標[/caption]
【関連記事】
【了】