未来を賭けるのか、ただのギャンブルか──予測市場アプリ、違法賭博で刑事訴追 米

アメリカで、「未来の出来事に賭けて利益を得る」ことをうたう新しいタイプのサービスが、規制当局との衝突に直面している。

アリゾナ州は、将来の出来事の結果に金銭を賭けられる「予測市場(プレディクションマーケット)」アプリを展開するKalshiを刑事訴追した。同社が無許可で実質的なオンライン賭博サービスを運営し、州内の住民に選挙結果などを対象とした賭けを行わせていたとのこと。

アリゾナ州司法長官クリス・メイズは現地時間17日、ニューヨークに拠点を置くKalshiに対し、全15ページにわたる訴状で20件の罪状を提示した。うち16件は賭博行為に関するもので、2025年12月から2026年2月にかけて、スポーツの試合結果や観客動員、さらには特定の法案が成立するかどうかといった”未来の出来事”に対し、1ドルから30ドルの賭けを受け付けていたとされる。

さらに4件は選挙に関する賭けに関するもので、2028年の大統領選でJD・ヴァンス副大統領が勝利するか、あるいは2026年のアリゾナ州務長官選で民主党候補が勝利するかといった政治的イベントも対象になっていた疑いが持たれている。

アリゾナ州法では、無許可の賭博事業の運営は禁じられており、選挙を対象とした賭けも明確に禁止されている。今回の罪状はいずれも軽犯罪に分類されるが、1件あたり最大2万ドルの罰金が科される可能性があり、総額では最大40万ドルに達する見込みだ。企業価値が約110億ドルとされるKalshiにとっては金額以上に、ビジネスモデルそのものが問われる形となる。

メイズ司法長官は声明で、「Kalshiは自らを『予測市場』と称しているが、実態は違法なギャンブル事業であり、アリゾナ州の選挙に対する賭けを受け付けている。いずれも州法に違反している」と指摘。「どの企業であっても、従う法律を自分で選ぶことはできない」と強調した。

これに対しKalshi側は、Rolling Stoneへの声明で今回の訴追を「根拠のないもの」と否定し、法廷で争う姿勢を示している。同社の広報担当者は「州による今回の訴追には重大な欠陥がある。これは司法プロセスを歪めるための駆け引きだ」と述べ、連邦裁判所での審理を回避しようとする動きだと批判した。

実際、Kalshiは今月初め、アリゾナ州から業務停止命令を受けたことを受けて、州による訴追を阻止するため先手を打って提訴していた。ロイターによれば、州が同社を刑事訴追するのは今回が初めてとみられている。

メイズはさらに、「Kalshiは州法に従う代わりに州を訴えることを常態化させている。この3週間だけでもアイオワ州、ユタ州、アリゾナ州を相手取って訴訟を起こしている」と指摘。「各州が定めたルールの中で事業を行うのではなく、連邦裁判所に持ち込むことで責任を回避しようとしている」と批判した。

2018年に設立されたKalshiは、近年急速に拡大する予測市場サービスの代表格で、競合にはPolymarketなどがある。ユーザーは、映画の評価スコアから国際政治の動向まで、あらゆる出来事の結果を対象に”賭け”を行うことができる。

こうした取引は「イベント契約」と呼ばれ、企業側はこれを商品先物取引委員会(CFTC)の管轄下にある金融商品だと主張している。だが規制当局側は、これが実質的に無許可のギャンブルに当たるのではないかと問題視している。

「未来を当てれば稼げる」という新しい投機の形は、どこまで許されるのか。Kalshiを巡る今回の訴訟は、テクノロジーが生み出した”新しい稼ぎ方”と既存の法制度との衝突を象徴するケースとなりそうだ。

from Rolling Stone US