
モナコ公国と自動車。この二つの単語が並ぶとき、我々の脳裏には反射的にグランプリの熱狂やエレガンスの極みが浮かび上がる。2026年夏、モナコのグリマルディ・フォーラムにて、この類稀なる関係性を130年にわたって紐解く壮大なエキシビション「Monaco & the Automobile, from 1893 to the Present Day(モナコと自動車、1893年から今日まで)」が開催される。
【画像】約50台の歴史的車両で表現される、モナコと自動車の途切れぬ密な関係(写真18点)
総面積4,000平方メートルの会場に集結するのは、約50台の歴史的車両である。これは単なる車両展示にとどまらない。モナコ自動車クラブ(ACM)の全面的な協力のもと、未公開のアーカイブ資料や映像、公室ゆかりの品々が、彫刻のようにライトアップされた名車たちと対話する空間が構築される。キュレーターを務めるのは、2011年にパリで15万人を動員した「ラルフ・ローレン・コレクション」展を成功に導いたロドルフ・ラペッティだ。
展示の幕開けを飾るのは、1956年にレーニエ3世とグレース王妃の結婚式で使用されたロールス・ロイス・シルバーレイスである。さらに、1893年にモナコに姿を現した1892年製パナール&ルヴァッソール・タイプP2Dが続き、19世紀末のモナコにおける自動車の黎明と、歴代大公がいかに機械的革新に先見の明を持っていたかを明示する。
モータースポーツの熱狂は、この地の歴史から決して切り離せない。モンテカルロ・ラリーとモナコ・グランプリの歴代優勝車、実に20台以上が顔を揃える。ウィリアム・グローバー=ウィリアムズのドライブにより1929年の第1回モナコGPを制したブガッティ35Bを筆頭に、グラハム・ヒルが駆った1968年のロータス49B。さらにはラリー界の伝説である1964年のモーリス・ミニ・クーパーSや、サンドロ・ムナーリを勝利に導いた1977年のランチア・ストラトスHFなど、モータースポーツ史そのものを形作ったマスターピースが立ち並ぶ。
会場には巨大なサーキットの模型やプロジェクションによる演出が用意され、モナコの市街地という特異な地理とレースの記憶を重ね合わせる没入型の体験も提供される。本来は2020年に予定されながらパンデミックによって延期となっていたこの企画は、モータースポーツ、歴史、そして遺産が交差する、2026年を代表する文化的祭典となる。
エキシビション開催概要
名称:「Monaco & the Automobile, from 1893 to the Present Day(モナコと自動車、1893年から今日まで)」
会期:2026年7月1日(水)〜 9月6日(日)
会場:グリマルディ・フォーラム・モナコ(エスパス・ラヴェル)
所在地:10, avenue Princesse Grace, 98000 Monaco
開館時間:毎日 10:00〜20:00(木曜日は22:00まで夜間営業)
文:櫻井朋成 写真:ピーターオート
Words: Tomonari SAKURAI Photography: Peter Auto