伊藤匠叡王への挑戦権を争う第11期叡王戦(主催:株式会社不二家)は本戦トーナメントが大詰め。3月12日(木)には挑戦者決定戦の永瀬拓矢九段―斎藤慎太郎八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀のねじり合いから抜け出した斎藤八段が128手で勝利。難敵を下して2年連続での叡王挑戦を決めています。
準決勝の修正案
振り駒が行われた本局は後手となった斎藤八段が角換わり△3三金型の秘策を披露してスタート。同戦法を用いた藤井聡太竜王・名人に対して永瀬九段が先手番で攻め倒し快勝した準決勝の対局を踏まえた選択で、斎藤八段はここから足早に右四間飛車に構える新構想で前例を離れます。細かい間合いの計り合いののち、先手の永瀬九段が単騎の桂跳ねで仕掛けて中盤へ。
右辺一帯を戦場とする両者手探りの押し引きが続くなか、リードを奪ったのは斎藤八段でした。先手の飛車をいじめる要領で、いわゆる「B面攻撃」に出たのが実戦的な好着想。先に角を失うものの、先手が飛車を逃げ回る間に駒の補充に回れば十分にお釣りがくるという大局観です。結果的に先手としては、好機に飛車を取らせて中央に転戦する必要がありました。
自陣角の妙手で勝負あり
黙っていてはジリ貧とみた永瀬九段は角を大きく使って逆転を目指しますが、斎藤八段の受けは一分将棋においても冷静でした。自玉横に腹銀を打たれた局面はピンチを思わせましたが、スッと金を寄って攻めを催促したのが読み切りの妙手。数手後に打った攻防の自陣角との連携で、相手の攻め駒の勢いを完全に抑え込むことに成功しており、先手からの攻めは続きません。
自身の劣勢を悟った永瀬九段はガクっとうなだれます。終局時刻は17時1分、最後は斎藤八段が先手玉を長手数の即詰みを読み切って勝利。守勢の後手番ながら、丁寧な指し回しで優位を築いた斎藤八段の充実ぶりがうかがえる快勝譜となりました。昨年に引き続き伊藤叡王への挑戦を決めた斎藤八段は「前期の反省を生かせれば」と謙虚に抱負を語りました。
注目の叡王戦五番勝負は4月3日(金)にシンガポールの「日本人会」で開幕します。
水留啓(将棋情報局)
