
イタリア・マラネロに、新たな医療拠点が誕生した。フェラーリは2026年3月3日、従業員と地域住民に予防医療と先進的な検査サービスを提供する診断センターを開設したことを発表した。施設はフェラーリの長年の医療パートナーであるメド・エックスが運営し、医療分野のイノベーションで知られるフィリップスの機器を中心に、最先端の医療技術を導入している。
【画像】フェラーリが従業員と地域住民のための診断センターを開設(写真23点)
この診断センターは、医療機関以外の企業が公的機関と協力して高水準の医療施設を設立するという点で、イタリアにおいても例のない取り組みだという。州や自治体との協力体制のもと、地域社会に具体的な利益をもたらす基盤として整備された施設であり、フェラーリの企業活動が地域社会と深く結びついていることを示すプロジェクトでもある。
開設式典には、フェラーリCEOのベネデット・ヴィーニャ、ロイヤルフィリップスCEOのロイ・ヤコブス、モデナ地域保健所長のマッティア・アルティニが登壇し、プロジェクトの概要を紹介。エミリア・ロマーニャ州知事ミケーレ・デ・パスカーレ、マラネロ市長ルイジ・ジローニ、メド・エックス創業者兼CEOのフレッド・フェルナンドも出席した。
この施設では、地域住民を対象とした予防医療プログラムも展開される予定だ。モデナ地域保健所と3年間の契約を結び、マラネロ、フォルミージネ、フィオラノに住む女性を対象に乳房マンモグラフィー検査を実施する計画で、自治体プログラムでは約8300件の検査が予定されている。検査結果は地域保健所の専門家が提供する仕組みだ。
さらに、メド・エックスがこれまで蓄積してきたデータ収集活動を基盤として、同センターを疫学研究の中核施設とする申請も行われる。イタリアの主要な公的医療センターと連携し、診療情報を分析するセカンドオピニオンの提供も遠隔で実施される予定である。
特徴的なのは、このセンターからフェラーリが直接利益を得ない点だ。地域社会に価値を還元するという理念のもと、施設の運営で生まれる利益のうちフェラーリに配分される分は再投資され、医療・技術スタッフの育成や若い医療専門家への奨学金などに充てられる。
診断センターにはAIと統合されたソフトウェアを含む最新技術が導入され、全身MRI、スペクトラルCT、トモシンセシス機能付きマンモグラフィー装置、デジタルX線撮影装置、骨密度測定装置などの先進機器が備えられる。これらの設備により、迅速で精密な診断を可能にする体制が整えられている。
今回の施設は、フェラーリが長年取り組んできた従業員の健康支援プログラムの延長線上にあるものでもある。同社では福利厚生プログラム「フォーミュラ・ベネッセレ」を展開しており、2024年からは年1回の包括的健康診断も導入された。2025年には4000人以上の従業員が利用しているほか、従業員の子どもを対象とした医療支援プログラム「フォーミュラ・ベネッセレ・ジュニア」も実施されており、同年には1000件以上の利用があったという。今回の診断センター開設により、従業員はさらに幅広い専門家へ相談できるようになり、包括的なヘルスケア体制が一層強化されることになる。
フェラーリCEO、ベネデット・ヴィーニャは次のように述べている。
「診断センターは、共栄の理念を具現化した好例です。企業と公共機関と地域コミュニティーが価値を生み出し、分かち合うため、スキル、リソース、イノベーションを結集したのです。当施設は、新記録となる2カ月足らずで建設されました。これは、官民両分野が手を携え、様々な企業が密接に連携した結果です。新センターは、多くの人々に支えられて、人々のために生まれたプロジェクトであり、その事実が、私たちに多くの大切なことを教えています。この機会に、重要なのはプロジェクトの目標達成よりも、達成する過程で得るものなのだということを、あらためて胸に刻みたいと思います」
ロイヤルフィリップスCEO、ロイ・ヤコブスは次のようにコメントしている。
「スピード、正確性、パフォーマンスはフェラーリの代名詞であり、フィリップスが重視する価値観でもあります。イノベーションで先頭に立つ両社が、その確立されたプロジェクト遂行能力や人間中心のアプローチを生かせば、ヘルスケア分野の進歩を加速させ、予防医療の向上、早期発見の実現、高度医療へのアクセス拡大に貢献できることを、このプロジェクトは証明しています。私たちは力を合わせてビジョンを具体的行動へと変換し、地元コミュニティーに恩恵をもたらして、よりよい医療をさらに多くの人々に提供していきます」
エミリア・ロマーニャ州知事ミケーレ・デ・パスカーレは、
「フェラーリが地域や公共機関と引き続き協力し、会社の従業員だけでなく地域住民全体に資する新施設にリソースを投じてくれたことに感謝する」
と述べ、官民協力による医療体制の重要性を強調した。
モデナ地域保健所長マッティア・アルティニも、
「高品質な予防医療を身近なものにするという具体的な目標を掲げた新しい公共インフラが動き出した」
と述べ、官民連携による医療システムの発展に期待を示している。
フェラーリといえば、モータースポーツやスーパースポーツカーの世界で知られる存在だ。しかし今回の取り組みは、その活動が工場の内側だけで完結するものではなく、地域社会や人々の生活にまで広がっていることを示すものでもある。マラネロという町とともに歩んできたブランドの、新たなかたちの貢献といえるだろう。