
2025年度のFIA世界ラリー選手権(WRC)で、圧倒的な強さを見せた”FIT-EASY”のロゴを纏ったGRヤリスの活躍は記憶に新しい。全国にアミューズメントフィットネスクラブを展開するフィットイージー株式会社。代表である國江仙嗣氏はクラシックカーコレクターと知られており、なかでも圧倒されるのは、いわゆるワークスカーと呼ばれる本物のコンペティションカーたちである。
【画像】ヘリテージ クラフト ミュージアムとして利活用される旧岐阜県庁舎に展示予定の國江氏の圧巻のワークスカー・コレクション(写真14点)
トヨタチーム ヨーロッパ(TTE)の歴代のWRC参戦車や、サザンクロスラリー優勝のスタンザといったラリーカー。ル・マン24時間レースやデイトナ24時間レースといったロングディスタンスレース出場車といった海外で活躍したマシンに加え、富士グランチャンピオンレース(GC)、全日本GT選手権出場車といった日本にゆかりのあるレーシングマシンたちが並んでいる。
すべて動態状態での保存というマシンたちは積極的にイベントで走行させるだけでなく、後世へ残すべく2025年5月には一般財団法人ワールドヘリテージ財団を立ち上げ、ミュージアムの設立を目指していた。
そうしたタイミングで、岐阜県の”サウンディング調査”から、國江氏の生まれ育った岐阜市に残る歴史的建造物”旧岐阜県庁舎”の利活用事業者を”公募型プロポーザル”により募集するという発表があった。
”公募型プロポーザル”とは、国や自治体が業務委託先を選定する際に広く提案を募り、企画力、技術料、専門性など総合的な評価で最も有益となる事業者を選ぶ、公平性もあり近年増加している方法だ。
対象となる”旧岐阜県庁舎”は1924年(大正13年)に建設され1966年(昭和41年)まで岐阜県庁舎として県民に親しまれていたが、平成25年に閉庁した。
太平洋戦争時の1945年(昭和20年)7月9日、129機のB29による岐阜空襲では、旧岐阜県庁舎も被弾。コンクリートの屋根を突き破って落下した焼夷弾を、10人程の宿直員が木桶の水をバケツリレーで運び消火し、周囲は瓦礫の山の壊滅状態となるなか、最小限の被害に食い止め消失を免れる。戦前から現存している道府県庁舎24棟の中でも8番目に古く歴史的な価値もあるのだが、耐震補強などの課題もあり自治体による活用法は閉ざされていた。
そうした状況下、周囲では2015年に岐阜市中央図書館(通称メディアコスモス)が完成した。2021年には岐阜市内を一望できる無料の展望スペース「つかさデッキ」を備えた新庁舎へと岐阜市役所が生まれ変わるなど、新しい時代へ変化する官公庁街にポツンと取り残されていた”旧岐阜県庁舎”に「いつかは解体されるのではないか」と危惧していた國江氏が、この公募型プロポーザルに応募した。
1階には岐阜県の工芸品、クラシックカーとゴルフのミュージアム、カフェ、2〜3階にはスポーツジム、レストランとホテルを整備し知事室はバーとして運用したいという提案は、競合4社の提案のなかから最も高い評価を受け、優先交渉権者に選ばれる。そして2026年1月には基本協定が結ばれ、正式に複合施設として再構築されることが決まったのである。
正面玄関左右にあるヒマラヤ杉の巨木と共に、100年以上、岐阜の街を見守り続けた”旧岐阜県庁舎”は往時の姿のままでリニューアルされる事となり、県民にとって馴染み深い岐阜のシンボルは、これからも地域の交流の場所として、またホテルやレストランを備えたミュージアムとして文化を発信の場となる、新たに岐阜県への観光拠点として2029年4月のオープンすることが発表された。3年後が非常に楽しみである。
文・写真:奥村純一 Words and Photography: Junichi OKUMURA