NTTグループ主要会社の女性役員が発起人となり、2022年6月に立ち上げられた「チームSelf as We」。このチームが名古屋市内の大学に通う学生とともに、2025年7月開業のIGアリーナを、スポーツやエンターテインメントの拠点としてだけでなく、地域とともに成長し名古屋の魅力を世界に発信する起点とするためのアイデアを創出するワークショップを開催した。

  • ワークショップの参加者一同

    ワークショップの参加者一同

「個人が他者や社会とつながり、ともに未来をつくる」がチームの理念

2026年2月15日(日)に、名古屋市内で開催された、(IGアリーナを起点とした)「未来の名古屋の街づくりを考える」アイデア創出ワークショップは、『「働きたい」「暮らしたい」と思える“未来の名古屋の街づくり”を考える』がテーマ。“名古屋の強み”と“次世代テクノロジー”を掛け合わせ、学生自身が「働きたい」「暮らしたい」と思える魅力的な街づくりのアイデアを創出するというものだ。金城学院大学と名古屋工業大学の在学生約30名が参加し、「チームSelf as We」に所属するNTTグループ主要会社の女性役員とともに、未来の名古屋を見据えた、魅力的な街づくりのアイデア創出に取り組んだ。

「チームSelf as We」は、グローバルサステナブル社会の実現に向けたダイバーシティ&インクルージョンの取り組みの一環として、NTTグループ主要会社の女性役員が中心となって立ち上げた活動。NTTドコモ 執行役員 中国・四国・九州担当で九州支社長の和田あずさ氏はチームSelf as Weの活動を「単なる『女性活躍推進』を超えて、経営改革×D&I、社会貢献の推進により、『サステナブルな社会の実現』と『NTTグループの変革を加速させる』ことを目的とした取り組み」と紹介する。「“Self as We”の名の通り、“個人(Self)が他者や社会(We)とつながり、ともに未来をつくる”ことを基本理念に、NTTグループの価値創造や社会的インパクトを社内外へ広げていく役割」を果たしているという。

  • NTTドコモ 執行役員 中国・四国・九州担当で九州支社長の和田あずさ氏

    NTTドコモ 執行役員 中国・四国・九州担当で九州支社長の和田あずさ氏

そして、「IOWNなどの最新技術を活用することによって、世の中がどういうふうに変わっていくのか」と問いかけ、「変わっていった先に、自分たちはどういう未来を描けるのか、どういう世界を作っていけるのか、それによって、これから先の生活がどういうふうに変わっていくかというところについて、ぜひアイデアを出していただきたい」と、ワークショップに寄せた期待を語り、「皆さんと一緒になって検討したい」との自身の意気込みを明かした。

名古屋への宿泊を促すために「モ活」を提案

続いては愛知国際アリーナ 代表取締役 寛司久人氏が登壇し、「IGアリーナから始まる新たな観光・まちづくりへの挑戦」をテーマとした談話を行った。 2025年7月に開業したIGアリーナのラウンジの様子をドローンで撮影した映像で紹介しつつ、「日本全国にアリーナがどんどん増えている」ことを、エンタメ業界の変化のひとつとして紹介。アリーナを起点とした街づくりが、全国各地で議論されているという。

  • 愛知国際アリーナ 代表取締役 寛司久人氏

    愛知国際アリーナ 代表取締役 寛司久人氏

また、IGアリーナの開業前後の変化を、ドコモが持つ決済額のデータやLocation AIによる位置情報データなどから分析。IGアリーナへの来訪をトリガーとした人流には、食事や宿泊を目的とした“必須来訪先”が紐づけられるが、「この2つの場所を直接結びつけることは、街の賑わいにはつながらない」と、寛司氏は指摘。そういったケースは、IGアリーナがトリガーとなった“自然増”に過ぎず、「この2つを結ぶ目的地としての“立ち寄り先”を新たにデザインする」ことによって、エリア全体の賑わいを創出することで、“計画増”を狙うことの重要性を示唆する。

また寛司氏は、「IGアリーナからの提言」として、ワークショップに先駆けて、自身のアイデアを披露。観光庁調べによる日帰り旅行消費額と宿泊旅行消費額の比較では宿泊旅行消費額が3.55倍に達することから、「宿泊させることを考えないと、街にお金は落ちない」ことを示し、特に名古屋では両者の差が12.59倍と非常に大きくなることから、「泊まりたいまち 名古屋」をしっかりとデザインする必要性を訴えた。

しかし、IGアリーナイベントだけでは宿泊行動に繋がらない。そこで、名古屋の特色ともいえる喫茶店のモーニングを充実させる「モ活」を提案。泊まって(早起きして)体験しないと損、という「泊まらないとできない体験」を喫茶店以外にも広げていくことで、“名古屋といえば「モ活」”というブランディングを推進していくことを提唱した。

NTTアーバンソリューションズは街づくりの事例を紹介

続いては、「街づくり事例紹介」として、NTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部の池田陽夏氏が登壇。NTTアーバンソリューションズは、NTTグループにおける街づくりの推進主体として設立された会社で、日本全国にあるグループの資産を活用しながら、そのエリアを中心とした街づくりを展開している。

  • NTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部の池田陽夏氏

    NTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部の池田陽夏氏

そんな同社の取り組みの中から、NTTアーバンソリューションズ発足後の次世代型オフィスビル第一号として「街づくり×デジタル」に取り組んだ「アーバンネット名古屋ネクスタビル」を中心とした「名古屋市東桜街区」の事例や、都心主要エリアの結節点でありかつてNTT日比谷本社が所在した“聖地”ともいえる「日比谷地区」の事例、さらには「品川港南」エリアなどでの事例が紹介された。

同社の基本は「ひと中心」で、誰に対してどんな価値を提供するかをデザインし、「空間」「運営」「デジタル」がそれを具現化。開発時に定めたビル・街区のコンセプト・ビジョンが竣工後も失われずに継承され価値を創出することを重視する姿勢が示された。

未来の名古屋の街づくりを考える!アイデア創出ワークショップ

ワークショップは、参加した約30名の大学生が6つのグループに分かれて、“未来の名古屋”を見据えたアイデアを創出。各グループには「チームSelf as We」のメンバーが1~2名ずつオブザーバーとして参加し、活発な意見交換が行われた。

  • 参加者を6つのグループに分けてディスカッション

    参加者を6つのグループに分けてディスカッション

各チームともに、名古屋の強み、名古屋の魅力を洗い出しながら、「働きたい」「暮らしたい」と思わせる工夫を検討。IOWNをはじめとした最新技術、次世代テクノロジーを組み合わせたり、大河ドラマ『豊臣兄弟!』などの最新トレンドを取り入れたり、自分自身の経験も交えたりしつつ、寛司氏や池田氏のプレゼンも参考にしながら、熱いディスカッションが展開された。

  • ワークショップの様子1

    「チームSelf as We」のメンバーもオブザーバーとして参加

  • ワークショップの様子2
  • ワークショップの様子3
  • ディスカッション結果の発表1

    ディスカッションの結果をグループごとに発表

  • ディスカッション結果の発表2
  • ディスカッション結果の発表3

各グループによる発表を受けて、NTT執行役員の関根万紀子氏が全体を総括。同じような考え、まったく異なる意見など多種多様なアイデアが生み出されたことについて、「みんなで集まることで、こういう目線もあるんだという気づきがたくさん得られる」一方で、「同じアイデアが集まるということは、それだけ仲間が多いということ」であるとし、「ぜひこの出会いを大事にしてほしい」とのメッセージを贈った。

  • NTT執行役員の関根万紀子氏(NTT西日本 東海支店提供)

    NTT執行役員の関根万紀子氏(NTT西日本 東海支店提供)

そして、「誰かがおすすめする場所や街を訪れて、ご飯を食べて、話をして、可能であれば発信してほしい」と提案。「皆さんの発信力は、皆さんが思っている以上に高いので、それが名古屋が良い方向に向かっていく一歩になる」と、参加者のこれからの活動にも期待を寄せた。

今回のワークショップがアクションのきっかけに

「チームSelf as We」は、年一回をめどに街づくりに関するイベントの企画を行っており、今回開催されたワークショップは3回目のイベントとなる。前述の和田氏はチームの活動について「設立当初は、女性役員が女性社員の活躍をサポートする、“女性活躍推進”を目的とした活動がメインでした」と振り返る。そこからターゲットの幅を広げ、女性活躍推進とは別枠で、「技術系を中心として、未来をどのように作っていくかを発信していく」ことを念頭に、地域社会への貢献を目指した活動を展開しているという。

  • NTTドコモ 執行役員 中国・四国・九州担当で九州支社長の和田あずさ氏(右)とNTT西日本 執行役員 東海支店長の児玉美奈子氏(左)

    NTTドコモ 執行役員 中国・四国・九州担当で九州支社長の和田あずさ氏(右)とNTT西日本 執行役員 東海支店長の児玉美奈子氏(左)

そのため、「我々の活動は女性のみを対象にしたものではありません」と話すのがNTT西日本 執行役員 東海支店長の児玉美奈子氏。今回のワークショップの参加者はすべて女性だったが、「それはあくまでも偶然」とのこと。実際、最初に横須賀市でイベントを開催した際は、小学生が対象だったこともあって男女比は5:5だった。前回、神戸市で開催した際の男女比も3:7となっており、女性役員有志による企画ではあるが、決して女性のアイデアのみを求める取り組みではないという。

今回のワークショップでは、前述のとおり「チームSelf as We」のメンバーがオブザーバーとしてグループのディスカッションに参加している。「皆さんのお話を聞いていると、本当に名古屋が好きなんだと思った」という和田氏。名古屋愛あふれる熱いディスカッションを振り返りつつ、「『名古屋は非常に住みやすい』という意見が多い反面、何か物足りなさを感じている様子でした」と、何らかのプラスアルファが求められている現状を指摘し、「それに対してどんなお手伝いができるか」が議論の切り口になっていたという。

名古屋出身者はもちろん、名古屋以外の愛知県出身者、そして愛知県外の出身者も、「皆さん、名古屋が好きなんだけど、やはり何らかの物足りなさを感じている」と同意する児玉氏。「愛知県には、明治村やリトルワールドなど、さまざまな施設があり、みんな子供の頃に一度は訪れているのですが、大人になってから何度も足を運ぶ人は非常に少ない」という現状に対して、「何度も行きたくなるような何かが必要」であり、「そういった課題意識を参加者の方が持ってくれて、そういった観点から、IOWNなど通信をさらに活用するアイデアなども議論された」と、非常に意義深いディスカッションになったという。

また、これからの未来をつくる若者の意見として興味深かったのは、実際のビジネスの現場ではなかなか出てこないワードが飛び交ったところ。「我々の感覚からすると“推し活”というのはなかなかターゲットになりにくいのですが、話を聞いてみると、参加者の大半が何かしらの“推し活”をやっていて、少し驚きました」と振り返る和田氏。「我々だと少し違うかなと引っ込めてしまいがちなワードであっても、ストレートに出してくる姿勢は、驚きとともに、頼もしさもありますし、何より面白かった」と、世代間/立場間のギャップについて言及する。児玉氏も「我々にない視点での意見は、やはり考えさせられる」と関心を示すが、その一方で、「どうしても、興味の対象が自分の周辺に偏ってしまう」ところは、学生ならではの特徴だという。

あらためて、今回のワークショップに参加した感想として、「若い人たちの発想の違いに驚かされつつ、我々も新たな視点をいただけたのではないか」と振り返る和田氏。「今後も、さらに世の中に貢献できるようなかたちで、いろいろな企画に取り組んでいきたい」と意欲を見せる。一方、「今回、2つの大学の学生さんに参加いただき、本当に初めましてという方が多かったのに、最初からグループ内が和気あいあいとしていて、若い方のコミュニケーション能力の高さに感心した」という児玉氏は、「本日参加していただいた皆さんにとって、今回のワークショップが、名古屋の街を盛り上げ、活性化させるためのアクションを起こすきっかけになってほしい」と、参加者の今後の活動に期待を寄せた。

「『チームSelf as We』として、地域社会の活性化や課題解決は当然ですが、これから先の少子高齢化を考えると、女性の方がなかなか理系に進まない」ことを大事な課題として捉える和田氏。「我々としては、なかなか足掛かりがなく、非常に難しい」としつつも、「今後、AIなどの技術が進展すると、そのベースとなるところを理解している人材が必要となる。だからこそ、女性の方も理系に進んで、技術的なポイントをしっかりと押さえていただきたいですし、我々としても力を入れていきたい」との考えを明かした。