butajiが歌う、「私」の日常と「私たち」の社会が交差する瞬間──5年ぶり新作『Thoughts of You』を語る

butajiが、実に5年ぶりとなる待望のアルバム『Thoughts of You』を完成させた。2021年にリリースした前作『RIGHT TIME』は〈APPLE VINEGAR -Music Award-2022〉大賞を受賞。その後も、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」主題歌の「Presence」やSTUTSとの共作をはじめとして、卓越したソングライティングでお茶の間にも届くメロディと言葉を紡いできた。

充実した経験と並行して作られたニューアルバムには、多くの音楽家が集い、butajiのデモにそれぞれの体温を重ねている。岡田拓郎のプロデュース、篠田ミルやMETのアレンジ、町田匡や香田悠真のストリングスでの参加、等々。今作を聴いていると、当たり前のはずの日常が味わい深く、祈りのように響く瞬間がある。butajiに、今作における変化について、丁寧に言葉にしてもらった。

アルバムの起点と震災の記憶

―今回、アルバム制作自体はいつ頃から始めたんですか?

butaji:いちばん最初にできたのが「In silence」で、そこが起点ですね。2021年にNHKのショートドラマ『声がききたい。』という番組のために、butasaku(荒井優作とのユニット)として曲を提供したんです。相手の声は聞こえず電話で話す姿だけを10分間映し続ける実験的なドラマだったんですけど、映像を観たらすごく質感が良くて。「butajiのソロとしてこれにどんな音楽をつけるだろう?」と考えて作ったのが「In silence」でした。

―コロナ以降の5年をかけて、少しずつ形ができていったアルバムなんですね。私はまず今回のアルバムを聴いて、butajiさんにこれまであった「個人に寄り添って歌う」姿勢を引き続き感じつつ、社会的な目線が強まっている印象を受けました。「阪神大震災を記録し続ける会」の方との出会いも重要だったそうですね。

butaji:震災を語り継いで記録する活動をまとめて、発信しているサイトがあって。それが去年、阪神・淡路大震災から30周年で公開されていたんです。僕は当時5歳くらいで、細部まで覚えているわけじゃないんですけど、でもあのタイミングから確かにいろいろ変わったとは思っていて。ただ、その「変わったこと」を突き詰めて考えたことはなかった。そういったことを捉え直す作業だったと思います。

―具体的に、震災をきっかけにどういった変化を感じていたんでしょうか。

butaji:僕はいわゆるハード面の被災はそこまでなくて、避難所に行ったり家の修繕を自分主体でやったりといった経験はないんです。幼すぎて、親がしてくれてたし。だからハード面というよりも、ソフト面の被災──家族が壊れていったという変化のほうが強い。もともと壊れそうだった家族の関係が、震災が決定打になって変化していった。それと同じような感覚を「阪神・淡路大震災を語る会」の手記で読んだんです。いろんな被災者の方の手記を一つひとつ読んでいくと、建物が壊れた話とは別に、「この人を助けられなかった」とか「ずっと心残りがある」とか、心の中に残り続けるものが書かれている。大きな枠で「被災があった」と語るだけでは触れられないものに、手記を通してようやく触れられる感じがあって。そこで初めて、自分もここに当てはまるんだと思えた。被災を再解釈していく作業だった気がします。

―以前からbutajiさんは、歌詞において”私たち”や”あなたたち”といった複数形はできるだけ使わないとおっしゃっていますよね。どこまでも”私”や”あなた”といった個に寄り添っていく。震災のような大きな出来事も、つい大衆的なもの/社会的な出来事として捉えがちだけど、手記や生活の変化というソフト面から捉え直すのは、すごくbutajiさんらしいなと思います。

butaji:そうかもしれないですね。大きな主語で語られていることの中に収められる、小さな生活音がすごく気になるんですよ。何事においても、「そこに実際に存在していた」と想像することによって見えてくるものがある。歌詞を書く時もそうです。四捨五入されたものの端数に関心が向く。

―たとえば「so far」には〈いくつの間違いが私を私にさせた?/私たちが何も知らずに通り過ぎていた道で/多くの犠牲が出た事件があの日起きていたらしい〉という歌詞もあって、「私」の視点から「私たち」という社会的な出来事に繋がる流れが新鮮でした。

butaji:出だしが〈あの日に戻れるならば何がしたかった?〉っていう、いわばポップスの定石みたいな始まり方なんですよね。そういう歌詞って、聴くと「まあ確かに」って思うじゃないですか。でもこの曲で言いたかったのは、一人ひとりが下した判断が「自分で決めたもの」だと思いきや、政治や社会の情勢と切り離せなくて影響を受けざるを得ない、ということです。無視できないよね、って。人生には、自分が色々と決断して歩いてきた道と、世界とが交わる圧倒的な瞬間がある。

―その圧倒的なイメージが、サウンドでも表現されています。篠田ミルさんと共作されたトラックがすばらしいですね。

butaji:篠田さんのトラックが上がってきてびっくりしました。お願いして良かったなと思った。僕はDTM育ちで、PCありきの世代なんですよ。DTMで作ると、一曲のトラック数が100〜200まで積み上がったりして、ミックスがカオティックになりがちじゃないですか。デモは僕が渡していて、イントロのアルペジオも大まかな展開も入ってる。それを篠田さんが再解釈して、音色を選び直してくれた感じです。METさんのミックスもすごく良くて、アルバムの中でも特に好きなサウンドになりました。

―このサウンドは、篠田さんとはどういう方向性で話していたんですか?

butaji:ニュージーランドのシンガーソングライターのロードを聴きながら、「こんな感じかな?」って二人で作っていきました。

Photo by Kana Tarumi

失われたものをどう回復するか

―「remission」も、このアルバムの肝となる曲だと思っています。タイトルは直訳すると……?

butaji:「寛解」という意味で付けました。うつや癌の、寛解。

―〈一通りの用事が済んだら/気になったドラマ見ようよ〉といった歌詞にある日常の描写がとても印象的でした。震災の話ともつながるというか、「失われたものをどう回復するか」という話ですよね。用事が済んだらドラマを見ようって、当たり前の話なのに、あえて歌うことで日常の尊さが立ち上がる。

butaji:実はそれ、ドラマ『FARGO/ファーゴ』の最新シーズン最終話に近いニュアンスの台詞があって、そこから来ています。『FARGO/ファーゴ』の最終シーズンはシスターフッド的な面白さがあるんですよ。マッチョな村社会の圧に女性たちがどう対処して立ち向かうか、という話で。主人公の旦那さんが頼りない男性として描かれていて、村の権力者との対比もある。大筋の話には関わらないのでネタバレにはならないと思うんですが、最後のシーンで奥さんと並んで「これから何シーズンもあるドラマを二人で時間かけて観ようと思ってる」みたいなことを言うんです。すごくいい台詞だなと思って。それと、「緩やかな下り坂を下がっていく」ということをずっと曲にしたかったんですよね。加齢していくことについて歌詞を書きたい、という気持ちがずっとあった。去年の六月くらいに自分が発声障害になってしまったんです。それも、元の状態に戻るというより、別の枝を伸ばしていくような作業になった。もう元の状態そのままではない。そういう意味でも「寛解」だな、と思ったりしました。

―そういった、緩やかに変化を受け入れていくような姿勢は「Isolated blues」からも感じました。〈明日の朝の食パン買おう/年が明けたら鍵も作ろう〉という歌詞があって、日常の何気なさが歌われています。

butaji:そうそう。何気ない日常なんだけど、そこに揺らぎがあるというか。でも「Isolated blues」には、ちょっと狂気もあると思います。怖くないですか?

―というか、以前からbutajiさんの作品って、基本的には優しいんだけどところどころ怖さがある(笑)。

butaji:そういうのが好きなんですよね(笑)。驚かせたいし、ちょっと恐怖を感じさせたいところもある。恐怖するけど惹かれてしまうというのは大事な感情だと思うので。

―「失われたものをどう回復するか」とか「緩やかな下り坂を下がっていく」とか、今作では全体的にbutajiさんなりの成熟が表現されていますよね。

butaji:今はパートナーと一緒に暮らしていて、それが最優先という点で日常の暮らしそのものが大事になっている感覚はあります。同性のパートナーと暮らしていると、異性と暮らすよりも「日常の暮らしを大事にしないと」って思わざるを得ない。同性婚が認められていない日本では、契約を交わす書類を作って終わり、という状態になりづらい面もあるので。婚姻制度自体の問題点ももちろんありますが、そもそも同性婚という選択肢がない状態なので。

Photo by Kana Tarumi

―そういう面においては、世の中的にはどうやって希望を持ったらいいか分からない時もありますよね。政治的にもどんどんそういう社会になってきている。でも、butajiさんは「In silence」で〈明るくはないけど暗すぎじゃないよ〉と歌ってるんです。最後にそうやって希望を歌えるのは、今おっしゃったような、日常の暮らしを大切に過ごしているからこそなんでしょうか。

butaji:もちろん、暮らしを大事にしきれない時もありますけどね。だから、短いタームで浮き沈みを捉えるより、もう少し長いスパンで捉えるべきなんじゃないかなと自戒も込めて思います。感情の浮き沈みについても、状況についても。あと希望については、誰かがいないことを悲しいと思っている人がいて、その悲しさを共通の言語にして言葉を交わしはじめることができるのであれば、それが希望なんじゃないかと思います。何かを失っていない人はいないので。1曲目の「In silence」でも、死──ここにいない誰かを歌っています。アルバムタイトルになっている『Thoughts of You』の”You”は、ここにいない人なんですよね。

―この”You”が単数か複数なのかは、気になっていました。基本的には一人ひとりの”You”だと思うけど、今作ではそれが積み重なって、少し大きな塊みたいに見えてくる感じもありました。

butaji:そうですね。とはいえ、「Birthday」は同性婚の曲で、あれは一人と一人の曲という側面もあります。企業がダイバーシティ施策をやめていく反DE&Iの流れや、トランスジェンダー排除の空気といったことへの問題意識が強かった。だから、色んなバリエーションがありますね。

岡田拓郎との共同作業、butajiのポップス観

―今回、前作以上にいろんな方が参加していて、音楽を誰かと作るというテーマについても考えることが多かったんじゃないでしょうか。

butaji:考えました。昔は一人でPCで作ってMySpaceに上げたりしていたけど、そこから考えると変わりましたよね。今も音楽を作る時に理想のイメージはあるんだけど、みんなで作っていきながら、当初思い描いていたものと少し違ったとしてもそれも正解だよねと思えるようになりました。人とやる時のブレや誤差って、もう全部を把握しきれないんですよ。最後「どうなってるんだろう」って。

―butajiさんの中で、理想の音楽のイメージはあまり固定されたものではないですか?

butaji:理想って、挫折から生まれますよね。理想ができないからずっとやる。理想ができていたら、やめちゃうかもしれない。ずっと手に入れられないから追い求める。

―描きながらも、ずっと手に入らないものが理想であると。今回、誰かと作ることで「全然違う方向に行ったぞ、でもそれもいいかも」と思った曲は、具体的にいうとどれでしょう。

butaji:「Lost Souls」は完全に投げましたね。岡田拓郎さんに投げたらこうなった、という感じ。

―それは分かります、「Lost Souls」は岡田拓郎さんのカラーがとてつもない(笑)。すばらしい曲だと思いました。

butaji:そうですよね(笑)。ベックのお父さん──デヴィッド・キャンベルのストリングス・アレンジが入っている曲を聴きながら、岡田さんと「こういうのいいよね」って話してアレンジしてました。でも、BPMとコード以外はかなり委ねましたね。元のデモはもう少しダブっぽい感じでした。

ベック「Paper Tiger」、デヴィッド・キャンベルが弦アレンジを担当

―他のミュージシャンと共作する時は、委ねることが多いですか? これは嫌だ、という線引きは?

butaji:結局、あんまりないんですよね。聴いたら、これも好きだよって思っちゃう。うんうんこれも好きこれも好き、って。でも、以前「これはbutajiのアートになってる?」って聞かれたことがあって。確かに、「これも好きだけど、今回の自分のアートではない」みたいな言い方はできるかも。ただ、コードを変えられるのはちょっと……。

―コード進行は守りたい。

butaji:うん、コードは柱ですね。僕は全体のベースラインとトップラインの流れでコードを書いていて、ブロックごとには書いていないんです。だからコードを変えられるとメロディが消えちゃうし、トップのメロディとも噛み合わなくなる。

―butajiさんの中で、曲全体を貫くストーリーやメロディが重要だと。

butaji:曲の柱としてね。でもそれで難しかったのが、「In silence」ですね。アレンジにオーガニックなものが欲しくて岡田さんにお願いしたんですが、岡田さんに任せるなら全部任せたほうがもっと味が出たかもしれないという気持ちもあります。というのも、「In silence」は僕がだいぶかっちり構築して、コードは絶対変えないでって言いながらお願いした。でも、岡田さんには岡田さんの美学がある。岡田さんって、最初にコードのテンションを全部取っ払って、メジャーとマイナーだけに置き換えて作業していくらしいんですよ。僕にとっては地獄みたいな話で(笑)。それは本当に困るから、絶対変えないでって言いました。

―なるほど、それを知らずに声をかけた?

butaji:知らなかったです。だからお互い「どうしよう……」って感じだったかもしれない。

―それは痺れますね。でも岡田さんが関わっている曲、「In silence」も「Lost Souls」もどっちも好きです。

butaji:僕も好きです。

Photo by Kana Tarumi

―でも、コードやメロディへのこだわりが分かって納得しました。だから、butajiさんの曲は常にポップソングであり続けられるんでしょうね。

butaji:そうなんでしょうね。自分にとってのポップスって……自分がクィアだからなのかはわからないけど、そもそも一人で作って一人で楽しいという世界から始まったんです。そこに色んな人を招くようになって、「招くってどういうことだ?」って考えていくうちに、ポップスの解釈が自分の中で広がっていったんですよ。だから、器が大きくて当然、みたいな感覚もある。クィアであることを表明する時点で「自分にはこういう側面があって、あれもこれも受け入れています」ということを示すじゃないですか。それと同じで、音楽ジャンルについても「これも好き、あれも好き」と取り入れていく。アレンジを受け入れていくのも、それに近い感覚です。

―それこそマドンナみたいに、大きな器で色んな人の色んな音楽性をどんどん取り入れていく作り方に近いかもしれないです。

butaji:確かに、そうかもしれない。マドンナは器が大きいし、エキセントリックさもありますよね。僕もエキセントリックになりたいんですよ。もっとキテレツな存在でいたい、エルトン・ジョンみたいに。意味がわからない格好をしたい。生肉ドレスとか(笑)。

―butajiさん、そんな願望があったんですか(笑)。

butaji:そういう思いはあるんですよ。華やかな場所に出る時とかに、そういうことをしたくなる。アーティストとは何かを考えると、そうしたある種の狂気が訴求力を生み出しているのかなと。狂気は恐怖にも繋がる要素だと思います。

Photo by Kana Tarumi

「変化」や「衝突」を受け入れる勇気

―もうひとつコラボ関連だと、「点灯」は三浦透子さんに提供した曲のセルフカバーで、三浦さんは今回コーラスで参加していますね。

butaji:「メリー・ポピンズ感」というか「ラ・ラ・ランド感」というか、ミュージカル映画の一曲みたいなイメージで、ジャズ・スタンダードに近い解釈でアレンジを作りました。三浦さんともデュエットしたかったので、ドラマチックに作って。ちょっと昔感がありますよね。

―今回、ナット・キング・コールにすごくハマったという話がプレス資料に書かれていて。

butaji:はい。「In silence」を作る時に、ナット・キング・コールの時代の音楽をぱらぱら聴いていて。時間がゆっくり進んでいて、聴いている最中に忙しくない時間が生まれることで自分がどれだけ忙しいかを改めて意識するということがありました。そういう、安らげるような曲を作りたかった。あとはね、「永遠」も、3〜4年前くらいに沖縄の海辺を歩いていてザ・ビートルズの「In My Life」がアメリカンビレッジのスピーカーから流れていた時に、「こういう曲ってやっぱりずっといいよな」と思って作ったんです。

―なるほど。さっきコードの話が出ましたけど、DTM起点のミュージシャンの方で、歌やメロディの話をここまで語る方ってあまり多くないのでは。butajiさんはメロディをすごく重視していますよね。それは、昔のクラシックなポップソングの影響も大きいですか?

butaji:そうですね。そもそもクラシック音楽育ちで、バイオリンを習っていたんですよ。楽譜に残すって何だろう、楽譜に残るものって何だろう、って考えてきた。前作はまさに、スコアだけ書いてアレンジは他の人に投げる、みたいなコンセプトもあった。だから、逆にDTMこそが憧れなのかもしれないです。最初に好きになったのがジェイミー・リデル

なんですよ。〈Warp〉から出てきて、それなのに歌がうまくて、機材オタクで……。僕の中のレジェンドはジェイミー・リデル。ああいう人ってなかなかいないですよね。

―なるほど。だからbutajiさんみたいな人も音楽シーンにあまりいないんですよね。しかも、butajiさんのアイデンティティからくる懐の広さみたいなところから色んなアーティストとのコラボレーションが始まって、それを受け入れつつ、プロジェクトとしても大きくなってきている。

butaji:あぁ、その話はなるほどなと思いました。でも、人間的に大丈夫ですかね?(笑) いや、ちゃんと適性があるか不安なんです。たとえばボン・イヴェールって、コミュナルなイメージがあるじゃないですか。あれって結局、人がいいんだと思う。能力もあるけど、人が悪かったら呼ばれない。だから人柄って大事だなと思う。そういう意味で自分は大丈夫かなって……。

―ぶつかったりしながらも、たくさんの人とコラボレーションしていこうと思えるモチベーションはどこにありますか?

butaji:すごい時はすごい! という、それに尽きますね。ダメな時もあるかもしれないけど、人とやるとすごい時は本当にすごい。それが楽しい。でもそれってやらないと分からないから、やり続けないといけない。毎回リスクはあるし、「こんな感じだよね」に落ち着く時もある。でも、やったら何かしらある。毎回成功するわけでもないけど、それでいいとも思います。挑戦や試行錯誤が、別のところで生きることもあるし。例えば、その時のメロディを別の作品に使うとかね。

―相手に合わせたり、相手の良さを引き出すために自分を削ったりというのは、突き詰めるとアイデンティティの話になりますよね。結局、絶対に譲れない核がどこにあるのかという。

butaji:そもそも衝突するって、期待してるから衝突するんですよね。いいことだと思います。逆に、何も言わないほうが怖い。

―基本的なスタンスとして、皆に期待しているから声をかけているわけですもんね。

butaji:そう、期待している。初めから期待しなければイライラしない、みたいなライフハックも見るけど、いやいや、期待しますよ。傷つきますけど。でもそれでいい。期待する。

Photo by Kana Tarumi

―butajiさん、指揮者みたいになってきましたね。責任を持って指揮はとるけど、基本は任せる。そういった関係性を築いていく上で、アイデンティティも再解釈されていくんじゃないでしょうか。

butaji:再解釈って面白いですね。僕は毎回、デモをちゃんと構築してがっちり固めた第一稿をアレンジャーに投げる。全然違うものが返ってきたら、それもそれで受け入れていく。それって再解釈というか、リミックスみたいなことかもしれない。

―指揮をとることは、自分で自分をリミックスし続けることであると。

butaji:僕、DTMやってる人とあまり付き合いがないんですよ。パソコン音楽クラブとも知り合いじゃないし……(笑)。フォーク的な弾き語り系のコミュニティともつながってないし、シンガーソングライターでも知り合いがあまりいない。音楽シーンの中で、変な存在だなと思っていました。だから、自分が「おいでおいで」ってやる人になるとは思っていなかった。

―butajiさんの場合、いわゆるDTMの人たちとも、弾き語りの人たちとも、確かにちょっと立ち位置が違いますもんね。

butaji:最近、ラッパーのSieroさんが好きなんです。歌がうまいのと、ミックスが好きなんですよね。自分はラップのスタイルだとSOCCERBOYさん(現・Otagiri)が好きなので、勝手に共通点を見出したりしてます。

―これまた意外ですね! でもそういった独自の立ち位置のbutajiさんが、「おいでおいで」とやりながら色んな人とポップソングを生み出していくのってやっぱり面白いと思います。今作が全体的に円熟味があって、味わい深いアルバムになっているのも、そういったbutajiさんの変化が関係しているのかもしれない。日本の音楽シーンって、円熟していくアーティストがあまり多くない気がするんですよ。みんな永遠に若いことが是とされる、みたいな。

butaji:紅白とか見てても、若々しいのが良いという空気がありますよね。海外だとボブ・ディランみたいに魅力的に変化していくケースがあるけど。若くあり続けなきゃいけないというのは、不安につながる。変わることは怖いけれど、それを受け入れるのは大事だと思います。

―ライブの予定もありますね。個人的には、「Lost Souls」がライブでどのように表現されるのか楽しみです。

butaji:バンド用のアレンジ、結構いいのが浮かんでます。ストリングスを抜いたらこうなるよねということよりも、バンドで全く新しいものとしてアレンジする感じです。楽しみにしていてくださいね。

butaji

4th Album『Thoughts of You』

2026年3月4日(水)デジタルリリース

2026年4月15日(水)LPリリース

配信:https://butaji.lnk.to/thoughtsofyou_1

butaji、待望の4thアルバム『Thoughts of You』が3月4日にリリース決定。先行シングル「In  silence」は2月4日にデジタル配信、リリースツアーの開催も発表。 | SPACE SHOWER MUSIC

”Thoughts of You” Release Tour

2026年4月17日(金)兵庫・music zoo KOBE 太陽と虎

2026年4月18日(土)愛知・金山ブラジルコーヒー

2026年4月22日(水)東京・WWW

『Thoughts of You』特設ページ:https://butaji.lnk.to/thoughtsofyou