
長谷川カオナシが17年間ずっと追い続けてきた夢が2026年2月27日(金)、都下・府中の森芸術劇場どりーむホールで開催したライブ「フシアナサンとロムの板~東京・府中スレ~」で、ついに長谷川曰く「凄い形」で実現した。
その会場の名称がどりーむホールだなんて、たまたまとは言え、ちょっと洒落ているが、そのライブは長谷川が昨年11月26日にリリースしたソロアルバム『お面の向こうは伽藍堂』のリリースライブの追加公演と謳った東名阪ツアーの初日となる東京公演。今回のツアーは3カ所それぞれに迎えたゲストの顔ぶれも見どころの1つだが、東京公演のゲストは、なんと小川幸慈と小泉拓によるギター&ドラム・ユニット、門出船出と尾崎世界観の2組。つまり、クリープハイプの盟友達がツアーの始まりを祝う格好になったのだから、確かに凄い。長谷川の感激も大いに頷ける。
門出船出(Photo by 岩本彩)
いつもの赤・白のポロシャツではなく、この日に限っては紅・白と表記したほうがいいかもしれないスーツでキメたダンディな装いで、リズムが跳ねるロックンロールをかき鳴らしながら、いきなりこの日の主人公である長谷川をひっぱり出して、彼のキーボードとともに「KORYAMEDETEEENA」を披露するという見どころを作った一番手の門出船出。

門出船出&長谷川カオナシ(Photo by 岩本彩)
一方、「ナイトオンザプラネット」他、クリープハイプのレパートリーをアコースティックギターで弾き語りしながら、その詩の世界に観客を誘い、最後は曲の余韻を味わわせるように長い沈黙さえもパフォーマンスの一部にして、凄みを見せつけた尾崎世界観。それぞれに動と静、あるいは陽と陰に振り切ったとも言える演奏を繰り広げながら、両者ともに新曲(門出船出は「変顔」と「記念日」、尾崎はタイトル未定)を持ってきたところに現在進行形のアーティストとしての矜持や、自分達を招いた長谷川の期待に応えようという心意気を感じたりもした。

尾崎世界観(Photo by 岩本彩)
そして、「どちらも素晴らしい演奏でした!」と2組を称えつつ、この日の主役である長谷川の演奏は、『お面の向こうは伽藍堂』からの先行配信曲「ハエ記念日」からスタート。谷山浩子と石井AQにアレンジを依頼した話題の1曲だが、昭和歌謡を思わせるノスタルジックなメロディーと、サビでリフレインする〈ご冗談を ご冗談を〉をはじめ、独特のワードセンスがたちまち観客をカオナシワールドにひきずりこむ。昨年11月30日に日本橋三井ホールで開催したアルバムのリリース記念ライブ「フシアナサンとロムの会~カオナシが丸腰で歌う夜~」を経て、楽器を持たずに歌ういわゆるピンボーカルスタイルにも自信が出てきたようだ。
マントを翻しながら歌う長谷川をバックアップするのは、11月30日のライブと同じチバソウタ(Gt)、福井健太(Ba)、星野菜名子(Key)、矢尾拓也(Dr)からなるフシアナバンドだ。そのフシアナバンドによるジャズロックな演奏も聴きどころだったボッサな魅力もある2曲目の「シャルルボネ彼氏」を演奏しおえたところで、2009年にサポートメンバーとしてクリープハイプに入った時からずっと、いつか自分のライブにクリープハイプに出てもらいたいと願っていたことを明かした長谷川は続けて、その夢がこの日ついに叶ったことを観客に伝え、その喜びを分かち合う。

長谷川カオナシ(Photo by 岩本彩)

チバソウタ(Photo by 岩本彩)

福井健太(Photo by 岩本彩)

星野菜名子(Photo by 岩本彩)

矢尾拓也(Photo by 岩本彩)
そんな記念すべき日に長谷川とフシアナバンドが演奏したのは、70年代に遡って、誰か女性歌手に歌わせてみたい「あなたはきっと」、谷山浩子から「黒い曲ばかりではなく、いつか白い曲も書いてみてください」と勧められ、書いたというフォーキーなバラード「かの森のペンフレンド」、『NHKみんなのうた』に書き下ろした「かくれんぼの達人」と似た雰囲気を持ちながら、バンドサウンドがプログレっぽい「ウサギとオオカミ」など、『お面の向こうは伽藍堂』の12曲に11月30日のライブで初披露した「シャルルボネ彼氏」と「縁切神社」、さらにこの日初披露となる新曲3曲を加え、類稀なる曲作りの才能を印象づけた全17曲。
「アルバムの曲でさえ、ライブアレンジされ、耳馴染みがないというのに、なぜ新曲を書いてきたのか。それは売れたいからです」と長谷川は嘯いたが、観客はアルバムのリリースに繋がった、このソロプロジェクトがまだまだ現在進行形で続いていると思ったに違いない。
ライブの前半で早速披露した新曲「僕はきみのともだち」は、谷山浩子とのメールのやり取りの中で、谷山から見せて(読ませて)もらった詩に長谷川が曲を付けたというエピソードも興味深かったが、この日、初めて耳にしたとき、踊るようなメロディーがどこか谷山っぽいように感じられたのは、谷山の言葉のリズムに導かれたからなのかとちょっと想像が膨らんでおもしろかった。そんなところも聴きどころだったと思う。
「アルバムを誰に届けるべきだろうと考えたとき、長谷川カオナシのような人だと思いました。どう考えてもクラスの1軍の人達を勇気づけたり、背中を押してあげたりできるものは作れないと思っていて。今日、たくさんの人に見ていただいているので、それに報いるしかないと思っています。私はたくさん傷ついて、たくさん絶望して、たくさん憎んで、それを言葉にして、歌にすることを続けるしかないと今のところ思っています」
今一度、なぜ自分が曲を作るのか自問自答してからの後半戦。直前に語った思いを裏打ちのビートとともに聴く者の気持ちに忍び寄るようなメロディーに込めた「僕の居ない明日に吠え面かきやがれ」では、曲の終盤、突然ふらっとステージに現れた尾崎が〈馬鹿馬鹿しいから歯ぁ磨こったら いち抜けた〉と3番のサビのパンチラインを歌い上げ、観客を驚かせる。
その「僕の居ない明日に吠え面かきやがれ」を含め、後半はライブの流れに弾みをつけるためか、前半以上にエキセントリックな個性が際立つ曲が揃っていたように思う。中でも「かかってきやがれって曲です」と七色に光る照明の中、音源のゲーム音楽を思わせるサウンドをソリッドなバンドサウンドにアレンジした「恋する千羽鶴」と、間にいわゆるアオハル感もある新曲「がたんごとん」を挟み、曲調の落差も使って、曲が持つおどろおどろしさを強調したムード歌謡ナンバー「鶏姫様を食べられない」はこの日一番のハイライトだったと言えるかもしれない。後者に加えた長谷川による芝居がかったセリフも鬼気迫るものがあった。

長谷川カオナシ(Photo by 岩本彩)
「私が誰を幸せにできるのか、ここに立っていても恥ずかしながらいまだにわからないけれど、お陰様で今日ライブがやれているので。来ていただいたみなさんに喜んでもらえるように最後歌います」
そう言うと、長谷川はさらに2曲、「馬の骨に候」と新曲「くすぐったいのはなんで」を歌う。『お面の向こうは伽藍堂』の最後を飾る、アルバムの中で最もクリープハイプに近いギターロックナンバー「馬の骨に候」で終わってもきれいにエンディングを迎えられただろう。しかし、アルバムのリリースとそのリリースツアーがソロプロジェクトの終わりではないことを示すためには、やはり新曲で終わる必要があったようだ。
「自分で歌わざるを得ないこと、歌わずにいられないことを曲にして、歌にして、アルバムを作りました。やりたいことをいっぱいやれて、すごく満足したから、これが出たら、きっと私の中で世界が変わるに違いないと思ったんですけど、全然変わらなくて、あぁ、何も変わらなかった。無力だと思ってました。そこからなんとか曲を書くことによって、気持ちを再燃させ、今日に向けてやってきました」
何も変えられなかった無力さを思い知らされたことが曲作りの新たなモチベーションになったことが重要だ。もっとも、世界が変わったと思ったとしても長谷川は曲を作り続けていたかもしれないが、とりあえずは世界が変わったと思えるまで曲を書き続け、アルバムも作って、またライブもやるに違いない。ファンにとってこれほどうれしいことがあるだろうか。
最後の最後に披露した新曲「くすぐったいのはなんで」は、ミッドテンポの8ビートのギターロックナンバー。転調と変拍子がノスタルジックな味わいの中にえぐみを加えた「金木犀」の演奏と比べると、かなりストレートだが、この日、初披露した3曲からは、アルバムの曲とはちょっと違う印象があったように感じられた。
それが何を物語るのか。その答えは長谷川カオナシのこれからの活動の中に見出せるに違いない。その日が来ることを心待ちにしている。

長谷川カオナシ(Photo by 岩本彩)
<リリース情報>
長谷川カオナシ
『お面の向こうは伽藍堂』
発売中
=収録曲=
1. ねんねんころり
2. かくれんぼの達人
3. 刹那の夏
4. 恋する千羽鶴
5. あなたはきっと
6. ハエ記念日
7. 金木犀
8. かの森のペンフレンド
9. 僕の居ない明日に吠え面かきやがれ
10. 鶏姫様を食べられない
11. ウサギとオオカミ
12. 馬の骨に候
CD購入はこちらから
https://kaonashihasegawa.lnk.to/1stAL_CD
各種配信サイトはこちら
https://kaonashihasegawa.lnk.to/Beyond_The_Mask_Lies_A_Hollow
<ライブ情報>
ツタロックフェス2026
2026年3月20日(金祝)、21日(土)、22日(日)
幕張メッセ国際展示場4・5・6・7ホール
主催:CEミュージッククリエイティブ株式会社 / ライブマスターズ株式会社
企画:CEミュージッククリエイティブ株式会社
制作:ライブマスターズ株式会社
運営:株式会社ディスクガレージ

■3月20日(金祝)
ammo / Arakezuri / Age Factory / クリープハイプ / KOTORI / Conton Candy / ジ・エンプティ / シンガーズハイ / TETORA / Dos Monos / 04 Limited Sazabys / FOMARE / プッシュプルポット / Blue Mash / MAN WITH A MISSION / ヤングスキニー / Lailah (O.A.)(Eggs Passオーディション グランプリ)

■3月21日(土)
indigo la End / ガラクタ / コレサワ / sumika / This is LAST / にしな / ねぐせ。 / NELKE / ハンブレッダーズ / Fish and Lips / PompadollS / マルシィ / yutori / 礼賛 / Laughing Hick / reGretGirl / 606号室 (O.A.)

■3月22日(日)
S.A.R. / OddRe: / kurayamisaka / CLAN QUEEN / Chevon / SKRYU / Chilli Beans. / Tele / トンボコープ / なきごと / PEOPLE 1 / 羊文学 / フレデリック / MONO NO AWARE / レトロリロン / ハク。 (O.A.)
チケットは2月7日(土)10時より一般先着受付開始。
詳細はオフィシャルサイトをチェック。
公式HP: https://cemusiccreative.com/tsutarock2026
一般先着受付
【2月7日(土)10時~】
専用URL:https://eplus.jp/tsutarockfes/
1DAY券各日 U-18:9,500円(税込)/一般:12,000円(税込)
3DAYS券 U-18:25,500円(税込)/一般:33,000円(税込)
問い合わせ:https://livemasters.jp/
公式HP:https://cemusiccreative.com/tsutarock2026
公式SNS
X https://twitter.com/tsutarocklive @tsutarocklive
Instagram https://www.instagram.com/tsuta_rock_live_official/
