スーパーマーケットと食品流通業界に関する国内最大級の商談展示会「第60回スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)2026」(主催:全国スーパーマーケット協会)が2026年2月18~20の3日間にわたり、千葉県の幕張メッセで開催された。
昨今の流通業界は深刻な人手不足に直面しており、解決すべき課題も数多く存在する。開会式でも全国スーパーマーケット協会の横山清会長(アークス代表取締役会長・CEO)が、数々の難題に対して「実際にやるのは我々だ」と何度も強調しており、業界として対応していく決意を表明した。
本記事では今回のSMTS開催を機に、物流をめぐる問題とそのソリューションを考えてみた。
物流の2024/2025年問題とネットスーパーのトレンド
スーパーマーケットの形態として、いわゆるネットスーパーへの注目度も高まっているが、近年そのネットスーパーをめぐる状況が大きな動きを見せている。
物流業界では近年、「2024年問題」や「2025年問題」がささやかれてきた。物流の2024年問題とはドライバーにも働き方改革関連法が適用され、労働時間などの上限規制が設けられることで稼働できるドライバーが不足し、運送可能な荷量が減ってしまうことへの懸念だ。
この「2024年問題」に伴う輸送能力低下の懸念を受け、2025年は物流関連二法(物流効率化法、貨物自動車運送事業法)が改正された。荷主・物流事業者は物流効率化などに取り組むよう努力義務が課せられたうえ、団塊の世代の高齢化でドライバー不足が表面化している。これがいわゆる「2025年問題」だ。
こうした中、2024/2025年問題や国際情勢の影響もあって物流費が著しく高騰。ネットスーパーを運営する事業者では、採算の合わない自社専用センター(ネットスーパー専用倉庫)を閉鎖する動きが相次ぎ、サービスの見直しも進みつつある。
イトーヨーカ堂は専用センターの閉鎖に加えて北海道・東北など一部地域で撤退。ネットスーパーについても自前の事業からは撤退し、店舗からの出荷に絞り込んで、収益性重視の運営へと縮小・再編を進めている。また西友のネットスーパーは楽天との合弁を解消し、西友の単独運営となって、店舗出荷・地域密着型へとシフトしている。
イオン、Amazonを中心に動く2つの物流・配送スタイル
こうした「センター型」が淘汰される動きの結果、いまネットスーパーの物流には大きく2つの方向性が見られる。一つは巨額投資で専用巨大倉庫を自動化するイオン、そしてもう一つはAmazonに代表されるプラットフォームを利用するネットスーパーだ。
イオンの戦略は、他社がセンター型から撤退する中で唯一ともいえる大型投資を行い、英国Ocado社と連携した巨大自動倉庫によってネットスーパー「Green Beans」のサービスを拡大している。AIとロボットを活用して物流を効率化し、数万点の商品をユーザーに待たせることなく届けるインフラを構築。自社の大型専用倉庫で管理することで圧倒的な品揃えと鮮度を実現しているのが強みだが、一方で配送エリアが首都圏等に限定されるという弱みもある。用途としては週末の大量まとめ買いに向いている。
対してプラットフォーム型は、Amazon自体が提供するネットスーパー「Amazonフレッシュ」に加えて、ライフ、バロー、アークス、成城石井といった提携事業者も利用する。これらは実店舗スーパーがAmazon上で商品を販売するタイプのネットスーパーで、Amazonの配送網に加えて集客力も活用できるため、自社専用ネットスーパーとは異なる利点を享受できるのが特徴だ。
Amazonのプラットフォームは利用のしやすさが何よりの強みだが、提携するスーパーの出店エリアに依存せざるを得ないという点には歯がゆさが残るだろう。
第3の選択肢、Uber Eatsが提供するデリバリーサービス
このイオンの巨大倉庫、Amazonプラットフォーム利用のパターンに加え、近年台頭してきたのがUber Eatsが展開するデリバリーサービスだ。注文から30分程度で、街の飲食店はもちろんコンビニやドラッグストア、スーパーなどから商品をスピーディーに配送。ギグワーカーによるオンラインデリバリーの短時間配送インフラとして定着しつつあり、いますぐ必要なモノを少数購入したいというニーズにフィットしている。
Uber Eatsのビジネススタイルは、自社で在庫を持たず、小売店の配送代行、またOnigoのようなクイックコマースの商品を運ぶインフラを目指すものだ。冒頭に記したように、スーパーなどの小売業はいま物流の2024/2025年問題が悩みのタネで、購入者の元へどう配送するかが深刻なテーマとなっている。その点、配送代行のUberは「今すぐ欲しい」という購入者のニーズを満たしつつ、小売店のいわゆる「ラストワンマイル」の課題解決にも寄与する、魅力的なソリューションとして期待が高まっている。
ラストワンマイルをつなぐUberのサービスとは
Uber Eatsは飲食店から料理を個人宅に届けるイメージが強いが、スーパーやコンビニ、ドラッグストア、家電量販店、そのほかペット用品や花、酒、ベビー用品店などからの配送でも導入が進んでいる。大手ではローソン、成城石井、いなげや、コストコ、西友などに加えて、まいばすけっとを含むイオン系店舗でも広く利用されている。注文自体はUber Eatsのアプリ経由で受ける形となる。
SMTS2026には、Uberもブースを出展。担当者に「Uber Eats」の強みを尋ねたところ、2024年にスタートした『ピック・パック・ペイ』(PPP)というデリバリーモデルをあげてくれた。
「従来のモデルは受注した小売店が集品、売掛処理、袋詰めを行って配達パートナーに受け渡すため、店舗側にも一定の手間が発生していました。PPPは注文が入るとその情報が配達パートナーに直接通知され、配達パートナーが店舗に赴いて商品をピッキングし、支払いし、袋詰めを行って注文者にお届けします。要は、店舗に手間がかからないサービスですね」(担当者)
一方のUber Directは、注文自体は各ブランドの自社サイトで受け、即配の部分のみUberの配達員が担うサービスである。注文側はUberのサービスを利用している感覚ではなく、そのブランドに直接オーダーしているイメージだ。
「ブランド側としては、全国で稼働するUberの10万人の配達パートナーをラストワンマイルの即配に活用できますし、四輪の配達パートナーも増えています。2024/2025年問題で物流が深刻な課題になっているところ、ラストワンマイルのインフラを整えるのが難しい中で、Uber Directはまさにかゆいところに手が届くサービスになっています」(担当者)
小売店にとっては、デリバリーコストはもちろん、商品ピッキングなどの作業も大きな負担となる。その点、Uber EatsのPPPなら配達パートナーがその部分まで担うため、人件費などの固定費を最適化できるメリットも得られる(従来の小売店側が作業するモデルも引き続き選べる)。一方のUber Directは、まさに本記事で冒頭から見てきたラストワンマイルの画期的ソリューションとなるだろう。いずれのサービスも、今後に注目していきたい。





