ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会では、車いすカーリングの日本代表が16年ぶりにパラリンピックの舞台にカムバックする。

ミックスダブルスでペアを組む中島洋治と小川亜希は、共に20年以上のキャリアがあるベテランだ。中島は車いすカーリングがパラリンピック競技に採用された2006年のトリノパラリンピック出場を目指して競技をはじめ、2010年のバンクーバーパラリンピックに4人制日本代表のスキップとして出場。小川は“助っ人女子選手“として、最高峰の舞台に名を刻んだ。

2010年バンクーバー大会に出場した小川と中島。3勝6敗で予選敗退だったが、世界で戦える自信をつけた
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国内の車いすカーラーにとって道しるべとなる存在になった2人。しかし、その後、国内でなかなか勝てず、世界からは遠ざかった。

それでも、2人は仕事と両立しながら、氷上でプレーを続けた。

「(車いすの大会は少ないが)健常者とミックスの大会に出るなどし、飽きることなく続けることができた」(中島)
「やめようと思ったことはなかった。楽しみながら続けてきたことが、パラリンピックにつながった」(小川)

契機になったのは、パラリンピック種目にミックスダブルスが採用されるというニュースを聞いたことだった。「小川さんはハートが強い。ミックスダブルスのパートナーとして一番」(中島)。4人より2人のほうが練習する時間を合わせやすい。4人制のクラブチーム「ease埼玉」のフォース(中島)とサード(小川)の2人はペアを組んだ。

16年ぶりのパラリンピックに向けて調整する中島
photo by X-1勝負強さを発揮した世界選手権

4人制ではなかなか勝てなかったが、ミックスダブルスでは国内選考で予選3位から優勝。“チーム中島”がミックスダブルスの代表となってから、日本代表は躍進した。2024年の世界車いすミックスダブルスカーリング選手権(韓国)で4位、2025年の世界車いすミックスダブルスカーリング選手権(イギリス)は優勝。

「ease埼玉」のコーチでもある飯野
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とくにパラリンピック出場権が決まる2025年の世界選手権では、苦戦を強いられながらも「パラリンピックに行くのは自分たち」と信じる気持ちを貫き、勝負強さを発揮した。

苦しみながらも決勝トーナメントに進出したチームは、準々決勝で強豪カナダにメジャー計測の末、勝利。準決勝でエストニアに9対4で勝利し、決勝は地元スコットランドに快勝した。

試合後、うれし涙を流し、「つらいときはコーチと話して気分を変える。コミュニケーションが取れるチーム」と振り返った小川。2010年バンクーバー大会以来のパラリンピック出場を決めて「16年前は声をかけられて出場できた。今回は自分たちでポイントを取って出場がかなった」と自信を手にした。

2025年3月、金メダルを胸に帰国した
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コーチとして帯同したカーリング現役選手の荻原詠理は、幼いころから選手や飯野明子コーチを知る。帰国時の会見で「3人のこれまでの軌跡が金メダルという形になってうれしい」と喜んだ。

そんな2人の強みはドローショットの精度だ。氷の状態をいかに速く読んで調整できるかが勝敗のカギを握る。

今回のパラリンピックは、コルティナ2026冬季オリンピックのカーリングと同じ「コルティナ・カーリング・オリンピックスタジアム」で行われる。観客席には3500人を収容する。

テレビでオリンピック中継を観たという中島は「(オリンピックの前半を少し見て)難しいアイス、難しい会場なんじゃないかな」とコメントし、「お客さんがいっぱい入っているな、と」。

車いすカーリングのミックスダブルスは、開会式(3月6日)に先立って3月4日(水)から始まり、11日(水)にこの種目の初代金メダリストが決まる。

12月に日本車いすカーリング協会のアスリート委員会が主催した壮行会で、中島は「最終日まで残れるように頑張っていきたい」とスピーチした。

アスリート委員会による壮行試合も行われた
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「笑顔で終わりたい」とは小川の言葉。

8チームが出場するミックスダブルスは、総当たり戦が行われた後、上位4チームが準決勝に進み(予選1位と4位、2位と3位が対戦)、その勝利チームによる決勝戦と準決勝で敗れたチームによる銅メダルマッチが行われる。

2人が長年大切にしてきた楽しむ気持ちの先に、いい色のメダルが待っている。

「チャレンジャーとして臨めたらいいなと思っています」と小川
photo by X-1序盤で強豪と対戦

刻々と変わるアイスコンディションへの対応はもちろんのこと、試合前夜に行うナイトプラクティスでストーンのクセを把握したり、選手がコーチからの情報をどのように落とし込んで活用したりできるかはオリンピックと共通する注目点だ。

日本は初戦で世界選手権で競り勝った中国と対戦。その翌日は、世界ランキング1位の韓国、ライバルのアメリカとダブルヘッダーで戦う。序盤でリズムをつかめるかどうかが最初の見どころになる。

長年のチームメートである小川と中島
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<出場チーム>
イタリア(世界ランキング9位/開催国) 
韓国(世界ランキング1位)
アメリカ(世界ランキング5位)
中国(世界ランキング6位)
日本(世界ランキング2位)
ラトビア(世界ランキング3位)
イギリス(世界ランキング4位/スコットランドが獲得したポイントにより出場権獲得)
エストニア(世界ランキング7位)

text & key visual by Asuka Senaga