「渋谷まるごと、ART×TECHの実験中。」をコンセプトに、渋谷の街全体でアートとテクノロジーを掛け合わせた最新カルチャーを体験できる「DIG SHIBUYA」。今年で3回目を迎えた今回は、2月13日~15日の3日間、スクランブル交差点やMIYASHITA PARK、渋谷PARCOなど、渋谷公園通りを中心とした様々な場所でイベントを繰り広げた。

  • 「DIG SHIBUYA」のポスター

    イベント開催中、渋谷の至る所で見られた「DIG SHIBUYA」のポスター

NTT東日本はこの「DIG SHIBUYA 2026」のOfficial Partnerとして参画。イベント初日の13日に渋谷ストリームホールで、触覚伝送技術を用いた新感覚コミュニケーション体験の「コここ伝話」を展示した。

離れた相手と振動を共有できる「コここ伝話」

「コここ伝話」とは、各テーブルのボードに振動を触覚情報として送受信できる仕組みを備え、それらをケーブルでつなぐことで、音声通話だけでなく、振動でもコミュニケーションが取れるというもの。ボードをトントン叩くと相手にもその振動や音が伝わり、ボールを落としたり、ローラーでガリガリするなど、異なる振動もボードを触る手から通じる。

体験者が振動を共有したり、目の前のディスプレイで実際には正面にいない人物と向き合っている自分を見たりすることで、同じテーブルに座っているようなコエグジスタンス(共存)感覚が生まれる。

そんなリアルなコミュニケーションの中に、事前に録画した映像や振動を合成することで、どのようにコミュニケーションが変わるのか。新たな人物が今ここに現れたという錯覚に陥るのではないかと、第三者的な立ち位置の人物を映像に加えるという実験的な試みも行われた。

  • 「コここ伝話」のイベントブース

    「コここ伝話」のイベントブース。左右のテーブルに座る人物が音声や振動を伝え合うことで、同じ空間を共有しているような錯覚を感じる

  • 「コここ伝話」の体験の様子

    事前に録画した人物をリアルの映像に合成することで、新たな人が登場したような気持ちになる

  • テーブルのボードの裏側

    テーブルのボードの裏側。音声と振動を伝えるスピーカーとマイクを備える

実際に「コここ伝話」を体験してみると、手で振動を感じ、耳で音を聞き、目で振動の基となる動作を見ることで、すべてがリアルな体験のように感じられた。合成された人物による振動も、同じタイミングで発せられた振動と一緒になることで、リアルな振動と感じられる。人間の五感を揺さぶるユニークな体験だった。

グループ連携が初の自治体向けイベントを成功に導いた

NTT東日本がDIG SHIBUYA 2026へ出展することになったのは、渋谷区から声掛けされたことがきっかけだという。

「大阪・関西万博で、映像と音声に加え、触覚や振動を送り合える『ふれあう伝話』を設置し、次世代情報通信インフラIOWN(アイオン)で接続することで、遅延のない新しいコミュニケーションのあり方を提案しました。渋谷区側からあのような展示ができないかとオファーがあり、今回初めて、自治体向けに、新しいコミュニケーション技術を公開させていただきました」とNTT東日本 東京南支店の廣木裕子氏。

展示のノウハウについては、NTT東日本グループであるNTT ArtTechnologyが提供した。

「NTT東日本では、NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)という、最先端テクノロジーを使ったメディア・アート作品を紹介する、いわば美術館のような施設を持っています。その企画・運営を行っているのがNTT ArtTechnologyで、そこが今回の展示の企画や制作などを行いました。NTTの研究所で開発した触覚伝送技術を、渋谷区とNTT東日本 東京南支店の連携のもとでDIG SHIBUYA 2026に出展することになり、それをNTT ArtTechnologyがサポートするという、グループの連携がうまく働いた好事例だと思います」と話すのはNTT東日本 ビジネス開発本部の小笠原茉穂氏。

触覚伝送技術はまだ実用化段階には至っていないが、多くの人に体験してもらうことが実用化に向けた第一歩。オンライン会議の普及に伴って、新しいコミュニケーション方法が求められており、今回の触覚伝送技術もそのニーズに応える可能性があると期待を寄せる。

  • NTT東日本 東京南支店 第二ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネスグループ 地域基盤ビジネス担当 廣木裕子氏、同 ビジネス開発本部 営業戦略推進部 営業戦略推進担当 小笠原茉穂氏

    NTT東日本 東京南支店 第二ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネスグループ 地域基盤ビジネス担当 廣木裕子氏(写真左)、同 ビジネス開発本部 営業戦略推進部 営業戦略推進担当 小笠原茉穂氏(写真右)

渋谷の街が「DIG SHIBUYA」で染まった3日間

筆者が取材したのは、DIG SHIBUYA 2026の開催初日となる2月13日。同日の「Introductionセッション」では、渋谷区長の長谷部健氏、渋谷区 国際都市戦略担当の宮本安芸子氏、シブヤスタートアップスの田坂克郎氏らが、DIG SHIBUYA 2026の概要と意義について説明を行った。

  • 渋谷区長の長谷部健氏、渋谷区 国際都市戦略担当の宮本安芸子氏、シブヤスタートアップス 代表取締役社長の田坂克郎氏

    (写真左より)渋谷区長の長谷部健氏、渋谷区 国際都市戦略担当の宮本安芸子氏、シブヤスタートアップス 代表取締役社長の田坂克郎氏

DIG SHIBUYA 2026は文化庁の「日本博2.0」の一環で、渋谷区が協賛し、東京都や企業とも連携して開催するイベント。公共空間の活用には多くの許認可や関係機関との調整が必要で、行政の支援が不可欠。今後も企業やアーティストの連携を促進し、ますますの拡大を目指す意向が示された。

中でも長谷部氏は、渋谷公園通りを封鎖して行う1日限定の屋外都市劇場『テアトロン』に注目。「渋谷PARCOに続く公園通りがどう変わって、イノベーションやアート&カルチャーと繋がっていくのか、散策しながら楽しんでもらいたいです」と話していた。

このほか、渋谷PARCO壁面でのプロジェクションマッピングや、昨年も好評だった代々木公園上空でのドローンショーなど、様々なイベントが紹介された。

  • 「テアトロン」の紹介

    渋谷公園通りが劇場になる「テアトロン」

せっかくなので、イベント開催中の渋谷の街を歩いてみた。ハチ公前広場では、ハチ公に関連したイベントを開催。渋谷での「待つ/探す」という行為を再考するアートプロジェクトで、参加者がハチ公自身となり、街中でタスキをかけた飼い主を探し続けるというものだ。

  • 「ハチ公よ、タスキをつなげ」

    「ハチ公よ、タスキをつなげ」。しっぽを受け取って参加。飼い主に会うことでパーツが揃い、しっぽが完成する

渋谷PARCO前では、歌川広重の「名所江戸百景」を下敷きに、ドット絵の手法で渋谷の街を描いた「浮世ドット絵 渋谷八景」を実施。渋谷を散策しながら、作品を鑑賞できた。

  • 「浮世ドット絵 渋谷八景」

    「浮世ドット絵 渋谷八景」

カナダのアート&デザインスタジオDaily tous les joursの作品「デュエッティ」は、一見、遊具のようだが、円形のボートに乗ったり、ベンチに腰掛けて揺らすことで音楽が始まり、知らない人とも音を通じてコミュニケーションを楽しむことができる。

  • 「Hello! Duetti」

    「Hello! Duetti」。国道246号横断デッキに2月27日まで展示

この「デュエッティ」は、DIG SHIBUYA 2026の開催終了後も2月27日まで展示される予定。通勤・通学の際やお近くにご用の際に、ちょっと立ち寄ってみてはいかがだろうか。