広島GK大迫敬介 [写真]=J.LEAGUE

 守護神がPK戦で燃えていた。「なかなかPKを止められない日が続いていたので、今日こそ止めて自分がヒーローになりたいと思っていました」。

 サンフレッチェ広島は14日、明治安田J1百年構想リーグ地域リーグラウンド第2節でファジアーノ岡山をホームに迎えて対戦した。開始10分にMF江坂任の得点で岡山に先制を許したが、前半終了間際にFWジャーメイン良の同点ゴールで追いつく。後半に入って、71分に岡山MF小倉幸成が2枚目のイエローカードを受けて退場。数的優位となった広島は最後まで攻勢を仕掛けたが、1-1のまま終えて、中国ダービーはPK戦へと突入した。

「キャンプだけじゃなくて、去年からずっと(PKの)練習をしていたし、練習を重ねるごとに止められる回数も増えてきて、いい感覚をずっと持ち続けられていたので、今日は止められる気がしていました」

 勝ち点「1」か「2」かを左右するPK戦で、広島の1番を背負うGK大迫敬介が自信をみなぎらせていた。その背中をさらに紫の声援が押す。「自分がゴールに入る時のコールもしっかり届いていましたし、アウェイ側とはいえ、後ろにもサポーターがいたので、そういった方々の思いが一つになったと思います」。

 両チームとも成功が続いて迎えた4本目。それまでも「自分的にはいい感覚だった」という大迫は、MF藤井海和のシュートに対して、「タイミング自体は合っていたので、相手の助走の入り方を見て直感を信じました」とゴール左下隅に飛びついてPKストップ。弾いたボールは左ポストに当たって外れていった。

「手にしっかりと当たった感覚があったけど、後ろに飛んでしまって、今までの僕だとあれが入ると思いますけど、練習の成果でしっかりと弾き出せたと思います」と胸を張る日本代表GKはホームでのPKセーブの活躍に「やっと止める姿を見せられて良かったです」と笑顔を見せた。

 後攻の広島は4人目のMF菅大輝がポストに当てながらゴールネットを揺らして成功。そして、5人目に登場したのはDF塩谷司だった。ゆっくりとゴール前へ歩いてくる先輩に、大迫が「自信を持って蹴ってください」という言葉とともにボールを手渡した。

「自分の中でPK戦になって1試合目だけは絶対に蹴ろうと決めていた」という塩谷は、注目と期待を一身に背負ったが、「あの状況だったらプレッシャーはなかったです。外しても、敬介がもう1回止めてくれるだろうと思っていたので、すごく気持ちは楽でした」と背番号1の活躍に勇気づけられて、冷静にゴール右上に沈めて中国ダービーの勝負を決めた。

 広島がPK戦を5-4で制して勝点2をつかみ、試合後のスタジアムには守護神のチャントが鳴り響いた。「やっぱり幸せですね」と喜びを噛み締める大迫の頭には、昨季の仲間の活躍シーンがよぎっていた。昨年6月8日に行われたJリーグYBCルヴァンカップ・プレーオフラウンドのアビスパ福岡戦。ホームでPK戦にもつれた試合で、チームを準々決勝に導いた韓国人GKチョン・ミンギ(現・水原FC)のPKストップだ。

「昨シーズン、ミンギが止めてミンギのコールがされている映像を見て、あのときはホーム側のゴールでしたけど、止めた瞬間のスタジアムの雰囲気やGKのところにみんなが寄っていく光景はなかなかないことなので、それを今回自分ができてうれしいですし、スタジアムの雰囲気も含めて感謝したいです」

 約半年間の特別大会である明治安田J1百年構想リーグにおいて、初のPK戦でいきなりシュートストップを披露してヒーローになった。「1つ止めたことで周りの見る目も変わってくるし、止められるGKという印象があることでキッカーに対してもプレッシャーにもなると思います」と自信を深める大迫は、その先のワールドカップも見据えながら今後も取り組んでいく。

「ワールドカップで上に行くためには、PKも含めて勝っていくことが自分たちの1つの仕事だと思います。この半年はそのいいシミュレーションになると思うので、自分もしっかりと止めて、チームを勝たせられる存在感を出していきたいです」と力を込めた。

取材・文=湊昂大

【動画】大迫敬介 気迫のPKストップ