世界的ポルシェコレクター マグナス・ウォーカーのコレクションがオークションに!そのラインナップとは?

ロサンゼルスの倉庫を拠点に独自のポルシェ文化を築き上げてきたマグナス・ウォーカー。その個人コレクションがオンラインオークションとして放出されることを先日お伝えしたが、ついに出品車両の詳細が明らかになった。2026年3月18日から25日にかけて開催される「The Magnus Walker: The Outlaw Collection」には、彼の人生と深く結びついた8台のポルシェが含まれる。

【画像】マグナス・ウォーカーのコレクションから放出されるポルシェの情報が公開(写真32点)

今回、パーツやアートなどを含めた全162ロット、18台の車両で構成されるコレクションの中から、まず8台の重要な個体が発表された。最初期のショートホイールベース911から、その次の時代を象徴するターボ、さらに水冷世代の頂点に至るまで、ウォーカーの歩みそのものを映し出す構成である。

1965年ポルシェ911

1965年型ポルシェ911は、これまでに製造された911の中で310台目にあたるかなり初期の車両で、シャシーナンバーは300310。1964年に製造され、1965年初頭にフロリダ州ジャクソンビルのブリューモス・ポルシェへ納車された、同社が米国へ輸入した最初期の数台のうちの一台である。ウォーカーは長年この個体を追い続け、2009年に入手した。ストライプを施した”ジェントルマンズ・レーサー”仕様、ヴィンテージのシェール製バケットシート、15×6インチのフックスホイールが1960年代半ばの雰囲気を際立たせる。推定落札価格は15万〜20万ドル。初期ポルシェ史の一片を手放す決断は、彼にとって容易ではなかったという。

1966年ポルシェ911

1966年型ポルシェ911は、ナンバーズマッチングを保つアイリッシュグリーンの個体で、ウォーカーが2009年に取得した最初期ショートホイールベース車の一台でもある。一度だけ再塗装が施されたが、それ以外は大部分がオリジナルのまま残る。カーペット、シート、ウッドリムステアリングに刻まれた摩耗が時間の経過を物語る。この車は1966年へ最も近づくことのできる存在だと彼は語る。推定落札価格は10万〜15万ドルだ。

1967年ポルシェ911S

1967年型ポルシェ911Sは、ウォーカーの生まれ年と重なる特別な一台で、2009年に取得された。ナンバーズマッチングの2リッターSエンジンは2.3リッターへ拡張され、クロスレシオの902ギアボックスと組み合わされる。高回転域まで鋭く吹け上がる特性と強い没入感を備え、感覚すべてを刺激する理想的なキャニオンカーと表現される。推定落札価格は15万〜20万ドルとなっている。

1974年ポルシェ911カレラ”フラットノーズ”ワイドボディ・コンバージョン

1974年型ポルシェ911カレラ”フラットノーズ”ワイドボディ・コンバージョンは、彼が25歳の時に初めて購入した赤いフラットノーズの記憶と重なる存在である。当時の個体そのものではないが、同様の赤い1974年型という点がウォーカーにとって特別な意味を持つ。1973年型911E 2.4のケースを基に構築された2.7RS仕様MFIエンジンを搭載し、独自の成り立ちを持つ一台となっている。推定落札価格は7万5000〜10万ドルだ。

1976年ポルシェ911カレラ2.7 MFI

1976年型ポルシェ911カレラ2.7 MFIは、1976年に製造された113台のうちの1台で、1973年カレラRS 2.7と同型エンジンを備える極めて希少な存在である。ファクトリー装着のリミテッドスリップデフ、サンルーフレス、手動ウインドウを備え、ポルシェ最後のMFI量産車として位置づけられる。存在すら知らず探してもいなかったが、偶然巡り合ったという。ポルシェの証明書も付属し、推定落札価格は20万〜25万ドル。

1976年ポルシェ911ターボ

1976年型ポルシェ911ターボ(930)は、ミネルバブルーのスイス仕様サンルーフレス車として2013年に取得された、彼にとって2台目の930である。米国仕様より20馬力高い出力を備え、より速さを感じさせる。ターボのウェイストゲート音を強調する排気系、2014年に初公開されたアウトロー・ホイール、オリジナルとわずかに異なる色調での再塗装、ローダウンされた車高、ホワイト内装が組み合わされ、唯一無二の存在感を形成する。推定落札価格は17万5000〜20万ドルだ。

2002年ポルシェ911 GT2

2002年型ポルシェ911 GT2は、かつてポルシェの頂点に位置したモデルで、6速MTの水冷ターボGT2は限界域では獰猛でありながら、穏やかに扱えば日常使用も可能な性格を持つ。この車はロサンゼルスで生涯を過ごし、ウォーカーは3人目のオーナーとなる。ヘッドライナーまで含めピーナッツバターカラーのレザーで覆われた内装が特徴で、2002年モデルの米国仕様は144台のみ。推定落札価格は12万5000〜15万ドル。

2004年ポルシェ911 GT3

2004年型ポルシェ911 GT3(996.2)は、彼が初めて所有した水冷ポルシェである。比較的ボディサイズがコンパクトだった時代のGT3が持つ俊敏さ、均衡、そしてまるで外科用メスのような鋭さを備え、”277”の延長線上にある存在と語られる。ウォーカー独自のカラーリングとブラックホイールが加えられ、強い個性を帯びる。推定落札価格は10万〜12万5000ドルとなっている。

なおこれら8台はいずれも最低落札価格の設定はない。

「ブランド」とは、メーカーのみが形づくるものではない。そこに集う人々の価値観や振る舞い、そして時間の積み重ねによって、輪郭を帯びていくものである。とりわけアメリカにおいて、ポルシェという名が放つ自由さや反骨の気配、その独自の美意識の一端を形づくってきた人物として、マグナス・ウォーカーの存在は無視できないだろう。

傷ひとつない完璧な外観や、完全なオリジナリティのみを尊ぶ価値観とは異なり、飛び石の痕跡や使い込まれた塗装の揺らぎといった、走り抜けてきた時間を刻む痕跡までもが魅力として映る感覚――それは彼が体現してきたポルシェ像と、どこか深く重なり合う。

世界を代表するポルシェオーナーのひとりが手放すコレクションを受け継ぐという行為。その価値は、単なる価格では測りきれない。次の担い手が描く物語やいかに…。