第84期順位戦C級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、9回戦18局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた黒沢怜生六段―伊藤真吾六段の一戦は111手で黒沢六段が勝利。全勝をキープし、最終戦を残して自身初となるC級1組昇級を決めています。

たった一人の全勝者

今期のC級2組は56人の大所帯。わずか3つの昇級枠争いでは1つの黒星が運命を左右します。ここまで8戦全勝で単独首位の黒沢六段は勝てば文句なく昇級で、この日は得意のゴキゲン中飛車に命運を託しました。対して後手の伊藤六段は対振り飛車右玉で応戦。棒金の要領で力強く右金を繰り出したのは先手の大駒を抑え込む狙いです。

昼食休憩が明けて対局再開。ここで黒沢六段の鋭い中盤感覚が光りました。1時間近い長考で角を1マス上がって左辺からの展開を見たのは、直前の後手からのさりげない飛車周りに反応した一手。攻められそうな右辺を守るのではなく、むしろこの瞬間浮き駒になった後手の金を逆用する強気の姿勢が好調を呼び込みました。手番を得た黒沢六段の一人舞台がここから始まります。

理想的な右玉攻略

後手から飛車取りをかけられたとき、これを逃げずに銀を取って攻め合いに踏み込んだのが黒沢六段の勝着となりました。自陣は美濃囲いの堅陣が残っているため攻めさえつながればよく、このあと右辺に打った桂がクサビとなって後手玉を上下挟撃に追い込めます。大駒をさばいての軽快な攻めにファンも「理想的な作り」「将棋ってこうやって指すんだ」と舌を巻きました。

終局時刻は22時29分、最後は自玉の詰みを認めた伊藤六段が投了。4筋をにらむ後手の攻め駒が働き出す前に鋭く攻め切った黒沢六段の快勝譜で、左辺に孤立した後手の右金が印象的な終局図となりました。これで9勝0敗と無敗をキープした黒沢六段は最終戦を待たずに昇級を確定。残る2枠は高野智史六段・星野良生五段・宮嶋健太四段・佐々木大地七段の間で争われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 今年度16勝6敗と好調の黒沢六段、順位戦11期目の参加で初めての昇級となった

    今年度16勝6敗と好調の黒沢六段、順位戦11期目の参加で初めての昇級となった