物価の上昇が続く中、「これまで通り貯蓄しているのに、将来が少し不安」と感じる人は少なくありません。2024年から始まった新NISAは、こうした時代背景を受けて整えられた仕組みです。

ただし、NISAは無理に投資を始めるための制度ではありません。大切なのは、貯蓄とNISAを対立させるのではなく、自分の生活に合う形でどう組み合わせるかです。この記事では、2026年の今知っておきたい貯蓄の考え方と、NISAを活用した資産形成の基本をわかりやすく解説します。

貯蓄だけではお金は増えにくい理由

長い間、日本では「コツコツ貯金すること」がお金を守る王道とされてきました。実際、預貯金は元本割れの心配がなく、”生活防衛資金”として重要な役割を果たしてくれます。しかし近年、その安全なはずの貯蓄だけでは将来に備えにくくなっています。

その理由の一つが、長く続く低金利です。普通預金や定期預金にお金を預けても、利息はほとんど増えません。一方で、食料品や光熱費、日用品などの価格はじわじわと上昇しています。こうした「インフレ(インフレーション)」により、物やサービスの価格は全体的に上昇し、同じ金額のお金で買える量は少なくなっていきます。

たとえば、以前は100円で買えていたものが120円になった場合、手元にある100円の価値は実質的に下がったことになります。預貯金の残高が減っていなくても、生活に必要な支出が増えれば、お金の力は少しずつ弱まっていくのです。

つまり、金額としては減っていなくても、お金の価値は実質的に目減りしている可能性があります。この点を考えると、現在は「貯蓄だけしていれば安全」とは言い切れない状況です。

こうした状況を踏まえ、国が整えてきたのがNISA制度です。NISAは、個人が中長期的な視点で資産形成に取り組みやすくするための非課税制度であり、貯蓄に偏りがちな家計の資産を、よりバランスよく活用できるようにする目的があります。

ただし、NISAは貯蓄を否定する制度ではありません。貯蓄と投資、それぞれの役割を理解したうえで、組み合わせて活用していくことが重要です。

NISAと貯蓄の違いを基本から整理

NISAと貯蓄は、どちらも将来に備えるための手段ですが、お金の性質や担う役割はそれぞれ異なります。この違いを理解しておくことが、無理のない資産形成を考えるうえで欠かせません。ここから、両者の違いを整理して見ていきましょう。

NISAとは - お金を「育てる」ための制度

NISAとは、投資で得られた利益が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで利益が出た場合、約20%の税金がかかりますが、NISA口座内で得た利益については税金がかかりません。2024年から始まった新NISAでは、非課税で投資できる枠が拡充され、制度が恒久化されたことで、長期的な資産形成に取り組みやすくなりました。

新NISAには、毎月コツコツ積み立てることを想定した「つみたて投資枠」と、個別株や幅広い商品に投資できる「成長投資枠」があり、ライフスタイルや目的に合わせて併用できます。いずれも、短期間で大きな利益を狙うのではなく、時間を味方につけて資産を育てることが前提となっています。

NISAで運用するお金は、価格変動のある金融商品を通じて増減します。そのため元本割れの可能性はありますが、「長期・積立・分散投資」を意識することで、リスクを抑えながら資産の成長を目指すことができます。NISAは、将来に向けて「今すぐ使わないお金」を少しずつ育てていくための制度だと言えるでしょう。

貯蓄とは - お金を「守る」ための方法

一方の貯蓄は、元本が保証されている点が最大の特徴です。普通預金や定期預金は、株式や投資信託のように金額が日々変わることがなく、必要なときにすぐ引き出せるため、日常生活を支える「お金の置き場」として重要な役割を果たします。急な出費や病気、収入の減少など、予測できない事態に備える生活防衛資金は、まず貯蓄で確保しておくことが基本です。

ただし、貯蓄は安全性が高い反面、大きく増えることは期待しにくい方法でもあります。金利が低い状況が続く中では、預けているだけではお金はほとんど増えず、物価が上昇する局面では、実質的な価値が目減りする可能性もあります。そのため、貯蓄は「増やすためのお金」というより、いつでも使えるように守っておくお金として位置づけることが大切です。

NISAと貯蓄は、どちらが優れているかを比べるものではありません。貯蓄は生活を守るためのお金、NISAは将来に向けて育てるお金と考えることで、それぞれの役割がはっきりします。

生活に必要なお金や近い将来に使う予定のあるお金は貯蓄で管理し、余裕資金についてはNISAを活用する。このように役割を分けて考えることが、安心感を保ちながら資産形成を進めるポイントです。

貯蓄とNISAはどう組み合わせる?

貯蓄とNISAを組み合わせて資産形成を進めるうえでは、まず「いつ・何のためにお金を使うのか」といったライフプランを描くことが大前提です。先ほどは貯蓄とNISAの役割について基本的な整理をしましたが、ここでは具体的にどのような目的のお金を、それぞれどのように準備すべきかを解説していきます。

目的に応じたお金の使い分け

ライフプランとは、結婚や出産、住宅購入、老後など、人生の主なイベントとその時期を想定し、それぞれに必要となる資金を整理して考える人生設計のことです。これを描くことで、「いつまでにいくら必要か」が明確になり、貯蓄で確保すべきお金と、NISAで育てていくお金の線引きがしやすくなります。

まず前提となるのは、貯蓄は「すぐに使う可能性が高い支出に備えるもの」、NISAは「長期で育てる余裕資金に向いているもの」という点です。この性質を踏まえて、以下のように使い分けるのが一般的です。

<教育資金>

子どもの教育資金は、大学入学や留学などのタイミングが比較的決まっており、必要となる時期が見えやすいお金です。支出までの期間が短い場合、NISAのような価格変動のある運用に回すと、必要になる直前に市場が低迷していた場合、損失を確定させてしまうリスクがあります。

そのため、5年以上先に使う教育資金はNISAで運用し、使う時期の2〜3年前になったら、値動きを確認しながら定期預金など安全性の高い資産へ徐々に移していく方法がおすすめです。

<結婚資金>

結婚資金も、数年〜10年以内など、支出の時期が比較的確定しているお金です。教育資金と同様に、お金が必要な時期に大きな損失が出ていると困るため、資産価格が変動する運用は適していません。

結婚資金の準備は預貯金中心で計画し、必要な時期が近づいたら生活防衛資金と同じように現金で確保しておくのが安心です。

<住宅購入資金>

同じく住宅購入資金も、頭金や諸費用など、多くの場合10年以内に必要になるお金です。そのため、資産価格が変動する運用は避け、預貯金を中心に準備するのが基本とされています。

普通預金や定期預金で計画的に積み立てておくことで、購入時に資金が目減りするリスクを抑えられます。購入予定までに十分な期間がある場合でも、時期が近づいたら安全性を重視し、確実に使える形で資金を確保しておくことが大切です。

<老後資金>

一方で、老後資金は「数十年先に必要になる資金」として捉えるべきお金です。年金だけでは生活費を十分にまかなえないケースも考えられ、長期的な資産形成が求められています。こうした長い準備期間がある資金については、NISAを活用するメリットが大きくなります。

新NISAでは非課税で投資できる枠が拡充され、時間を味方につけて積立できる環境が整いました。若い人ほど積立期間が長く取れるため、特につみたて投資枠を活かして長期で運用することで、税制の優遇も受けながら資産形成を期待できます。

一方、定年が近くなると、リスクの取り方や資産配分の考え方も変わってきます。若い時は成長性を重視した運用を中心に、定年が近づくにつれて安全性の高い資産へシフトしていくといった段階的なアプローチが、無理なく老後資金を準備するうえで現実的です。

使い分けのコツ

貯蓄とNISAをどちらかに偏らせるのではなく、ライフプランに沿って優先順位をつけて使い分けることがポイントです。まずは、生活防衛資金や近い将来に必要な支出を預貯金で確実に確保します。そのうえで、老後資金や長期目標に向けた余裕資金をNISAで育てていくという流れが基本です。

ライフプランを立てることで、「いつまでにどれだけ貯蓄すべきか」「どのくらいをNISAへ回してよいか」といった判断材料が明確になります。ライフイベントの優先順位と必要金額を整理し、自身の収入・支出・リスク許容度を考えながらバランスよく資産形成を進めることが、無理のない将来設計につながります。

NISA活用を失敗しないためのポイント

貯蓄とNISAの使い分けを整理できたら、次は「どう始めるか」を考えていきましょう。NISAを活用するうえで最も大切なのは、無理なく続けられる形でスタートすることです。

最初から大きな金額を投じる必要はなく、生活費や貯蓄に影響の出ない範囲で、少額から積み立てることが基本になります。なぜなら、続けることそのものが長期的な資産形成につながるからです。

また、短期的な値動きに振り回されない姿勢も欠かせません。NISAは長期運用を前提とした制度のため、途中で価格が下がる局面があるのは自然なことです。そのたびに不安になって売却してしまうと、時間を味方につけるというNISA本来のメリットを活かしにくくなります。

さらに、始める前に目的を明確にしておくことも重要です。「何のためのお金なのか」「いつ頃使う予定なのか」を意識しておくことで、運用中に迷いが生じにくくなります。情報収集は大切ですが、他人の成功例や失敗例に過度に影響されず、自分のライフプランに沿った判断を続けることが、NISAを長く活用するポイントと言えるでしょう。

貯蓄とNISAを味方につけて、将来に備える

貯蓄とNISAは、どちらかを選ぶものではなく、目的やタイミングに応じて組み合わせていくものです。まずはライフプランを整理し、守るお金と育てるお金を分けて考えることが、将来への不安を和らげる第一歩になります。2026年は無理のない範囲で、できることから少しずつ始めていきましょう。