11月に開催された川崎市の「Colors, Future! Summit 2025」はカンファレンスとフェスティバルを融合したイベントだ。これからの川崎を築いていくために集った製作委員会のメンバーは、同イベントをどう位置づけ、そして発展させようとしているのだろうか。

  • 「Colors, Future! Summit 2025」を先導した製作委員会のみなさん

    「Colors, Future! Summit 2025」を先導した製作委員会のみなさん

川崎市の一大イベント「Colors, Future! Summit 2025」

2025年、川崎市は市制101周年を迎え、新たなステージへと歩みを進めている。その象徴的な取り組みが、「Colors, Future! Summit(以下、CFS)」だ。

2025年11月2~3日に開催されたCFSでは、「あたらしい自分、川崎ではじまる。」をテーマに、さまざまなアイデアが提案され、会場では意見が飛び交った。

  • 「Colors, Future! Summit 2025」

    「Colors, Future! Summit 2025」

2024年の川崎市100周年記念事業として始まったこのイベントは、単なる一過性の祭典に留まることなく、産官学民が共創する持続可能なプラットフォームへと進化を遂げている。

NTT東日本は、パーパスである「地域循環型社会の共創」と、ミッションである「地域の仲間とともに未来を考え、地域の課題解決と価値創造に貢献する」ことが、CFSの目指す産官学民連携による地域活性化の取り組みと合致しているとして、3年前から参画している。2025年はダブルワーク制度を利用し、本業以外での経験を積む機会としても活用しているという。

今回、NTT東日本 神奈川事業部を含むColors, Future! Summit 2025製作委員会の中核メンバーにお話を伺う機会を得たので、2025年度の進化を振り返っていただきつつ、川崎市の未来に向けた展望について詳しく聞いてみよう。

一年を経て発信の場から実証実験の場へ

「始まりは3年前、川崎市制100周年に向けて、市民の皆さんやさまざまな参画団体が活動するための実行委員会が作られたことにありました。その中で、さまざまな取り組みを企画・発信していく場として位置づけられたのが、CFSです」(ホリプロ 須之部氏)

川崎市にあるライブホール「SUPERNOVA KAWASAKI(スペルノーヴァ カワサキ)」の運営をきっかけに、川崎市制100周年事業に関わるようになり、2025年度は製作委員会の会長を務めたホリプロ ファンテック推進プロジェクトチーム 副部長(事業管理) 須之部為師氏は、CFSの出発点についてこのように語る。

  •  Colors, Future! Summit 2025製作委員会の会長を務めた、ホリプロ ファンテック推進プロジェクトチーム 副部長(事業管理) 須之部為師氏

    Colors, Future! Summit 2025製作委員会の会長を務めた、ホリプロ ファンテック推進プロジェクトチーム 副部長(事業管理) 須之部為師氏

だが2024年、そして2025年のCFSを通して、その位置づけは“課題や魅力の発信の場”から、“未来に向けた行動に移していく実証実験の場”へと変化しているという。川崎市 総務企画局 シティプロモーション推進室 プロジェクト推進担当 担当課長の金井直彦氏は、その変化について次のように述べる。

「2024年度から一番バージョンアップを感じているのは、行政と民間企業が対等な立場で製作委員会を作り、みんなが率直に意見を述べてしながらも、川崎市の未来のために一緒に汗をかいてCFSを作り上げているという点です。この関係性が、これからの川崎市の産官学民連携の取り組みを象徴するものになっていると思います」(川崎市 金井氏)

  • 川崎市 総務企画局 シティプロモーション推進室 プロジェクト推進担当 担当課長 金井直彦氏

    川崎市 総務企画局 シティプロモーション推進室 プロジェクト推進担当 担当課長 金井直彦氏

この金井氏の発言に、製作委員会の副会長を務めたTopKnock(トップノック) 代表取締役 CEOの片岡慎之輔氏も賛同。民間企業という立場から、次のように補足した。

「2024年度はどちらかというと、主催者側が『こんなテーマでやりたいから一緒に語りましょう』と提案するパターンが多かったのですが、2025年度は、お声がけしている企業さんが『街でこういうふうな変容をしていきたいから、CFSでこんなこと一緒に語りませんか』と企画を持ち込むようなカンファレンスが増えました。共創の次のステップにいけたと思います」(TopKnock 片岡氏)

  • Colors, Future! Summit 2025製作委員会の副会長を務めたTopKnock(トップノック) 代表取締役 CEO 片岡慎之輔氏

    Colors, Future! Summit 2025製作委員会の副会長を務めたTopKnock(トップノック) 代表取締役 CEO 片岡慎之輔氏

片岡氏はその一例として、アサヒビールともに開催したカンファレンスを挙げる。これは「街でどういった実証実験を行えるか」を主なテーマとしたもので、“乾杯文化”を再定義し、川崎で推進する“スマートドリンキング(スマドリ)”をどのように街の人々と広げていけるかが話し合われた。

このカンファレンスを通じて、飲む人・飲まない人の壁を取り払い、コミュニケーションを円滑にする取り組みとして、「Kanpaiって色々プロジェクト」なども計画しているという。これは、ノンアルコール・低アルコールのオリジナルドリンク6種を開発し、ビール・飲料メーカーの垣根を超えて商店街などで実際に販売を行うというものだ。

また、製作委員会の監事を務めたNTT東日本 神奈川事業部 川崎営業拠点長の丸山麻貴緒氏は、2025年度の特徴のひとつとして「参加型の要素」を挙げる。

「例えばヒップホップのカンファレンスでは、登壇者がフィンガードラムを実演し、聴講者にも一緒に演奏してもらいました。また、高校生のピッチコンテストでは実際に投票して順位を決めたり、スマドリのセッションではオリジナルドリンクを考えるなど、より来場者の参加を促し、『我がごと化』していく、自分ごととして捉えていくという点が、大きな進化だったと思います」(NTT東日本 丸山氏)

  • Colors, Future! Summit 2025製作委員会の監事を務めたNTT東日本 神奈川事業部 川崎営業拠点長 丸山麻貴緒氏

    Colors, Future! Summit 2025製作委員会の監事を務めたNTT東日本 神奈川事業部 川崎営業拠点長 丸山麻貴緒氏

市制100周年という節目を過ぎた後も増加する来場者数

CFS2025の来場者は2万8,000人となり、CFS2024の2万3,000人に対し5,000人の増加を実現した。昨年度は降雨に見舞われたり、開催場所が違ったりと、条件が異なるため単純比較はできないが、それでも“市制100周年”という節目を過ぎてから、より多くの来場者を集めたことは高く評価されるべき点だろう。

では、来場した方の反応やイベントの手応えはどうだったのだろうか。川崎市の金井氏は、CFS2025のオープニングとなったカンファレンス「100周年を超えた川崎からはじまる新しいチャレンジ」を振り返る。

「来場者からは『川崎市は、本当に新しいところにチャレンジしていくんですね』という反応や、『こんなにかっこいい施設が川崎にできるんですね、知らなかった。嬉しい』という声がありました。自分が住んでいる街に、新たに素敵な施設ができるんだというところで、新しいチャレンジを感じてくれたのではないでしょうか」(川崎市 金井氏)

  • 「100周年を超えた川崎からはじまる新しいチャレンジ」の様子

    「100周年を超えた川崎からはじまる新しいチャレンジ」の様子

またホリプロの須之部氏は、アンケート結果を振り返り「とくに今年の自由記述で目立ったのは、NTT東日本の丸山さんやTopKnockの片岡さんがファシリテーターを務めたトークセッションに対する『素晴らしい進行ぶりでした』というお言葉です。製作委員会の中から登壇者が出て、そのような言葉をいただけるのは非常に嬉しかったです」と喜びを表した。

  • 「"飲む人も飲まない人も楽しめる街"とは? 川崎から考える、お酒と街の新しい関係性」の様子

    「"飲む人も飲まない人も楽しめる街"とは? 川崎から考える、お酒と街の新しい関係性」の様子

TopKnockの片岡氏はアンケート結果に恐縮しつつも、質的な変化についても言及する。

「来場者が増えただけでなく、オープンスペースに座っていただいた人数も増加しました。去年は合計で400人弱でしたが、今年は初日だけで約450人を達成しています。ふらっと足を運んだカンファレンスで来場者が気付きを得られる、興味を持てるコンテンツを提供できたのが大きかったと思います」(TopKnock 片岡氏)

その代表的な例が、「eスポーツがつなぐ“元気な未来” ~フレイル予防の新しい形~」というカンファレンスだ。言葉としては広まっているが具体的な活用が見えにくい“eスポーツ”が、実際に高齢者の健康維持に役立っている例を示すことで、来場者の関心を喚起した。

  • 「eスポーツがつなぐ“元気な未来” ~フレイル予防の新しい形~」の様子

    「eスポーツがつなぐ“元気な未来” ~フレイル予防の新しい形~」の様子

川崎市を「世界一の実証実験フィールド」として位置づけたい

CFS2025のテーマ「あたらしい自分、川崎ではじまる。」は、“一歩踏み出すきっかけ”を提供し、“こんな一歩を踏み出せるよ”という情報を提供することで、“明日から自分にできることで一歩踏み出そう”というアクションにつなげることを目指しているそうだ。最終的に『この街が好き』と思ってもらうために、まずは『我がごと化』を促すことを目指す。

  • フェスティバル会場の様子

    フェスティバル会場の様子

「川崎は“横浜ではなく、東京でもない”、便利で多様な街なんですよ。だから最初の一歩が踏み出しやすいですし、失敗してもやり直せる場所だと思っています。そんな川崎独自の魅力を知っていただき、良い意味で全国へ、世界へ羽ばたいていくための踏み台にしてほしいのです」(TopKnock 片岡氏)

川崎市民でもあるというNTT東日本の丸山氏は、こういった取り組みを川崎市全体に拡げていきたいと述べる。川崎市は広く、7つの行政区ごとに街と住民の個性が異なる。現在、盛り上がりの中心は川崎区エリアだが、他の区を含めた川崎市民155万人に認知される仕組みを作り、さらに他の自治体にも面的に広がっていくというのが川崎市の展望だ。

現在、CFSは川崎市の5大イベントのひとつとして開催されている。だが今後はその枠を超えて「国内に冠たるカンファレンス」を目指すとともに、川崎市を「世界一の実証実験フィールド」として位置づけたいという。

「体験できる、参加できる、新しいことができる、おいしいものが食べられる、いろんな人に出会える……そうすると人が集まり、企業が集まり、そしてこの街に定住したくなる――いろいろな好循環が生まれていくような気がします。一回一回を積み重ね、将来的には学問的・ビジネス的要素をも併せ持つ『登壇したくなるカンファレンス』『行きたくなるイベント』として発展させていきたいですね」(川崎市 金井氏)

  • フェスティバル会場では、キッチンカーやeスポーツ体験など、さまざまなコンテンツが充実

    フェスティバル会場では、キッチンカーやeスポーツ体験など、さまざまなコンテンツが充実

川崎市は全国と比較して生産年齢人口の割合が高い、若さ溢れる自治体だ。この街での実証実験は、これからの日本で事業等を行う際の格好のサンプルとなるだろう。新しいことにチャレンジしたい企業、個人でなにかを成し遂げたい人は、CFSへの参画を考えてみてはいかがだろうか。川崎市は新規参加者を心待ちにしている。