
2026年最初のイベントは、ヴァンセンヌ旧車会の定例ミーティングから始まった。毎月第一日曜日に行われるこの集まりは、新年の1月であっても変わらず開催される。月末にはパリ横断冬の部が控えており、会場ではその受付も行われていた。快晴ではあるものの気温は氷点下。それでも参加台数は多く、寒さよりも「集まること」そのものが優先されている様子がうかがえた。
【画像】フランスの車文化の裾野の広さと懐の深さを実感!多様な車が集うヴァンセンヌ旧車会の定例ミーティング(写真25点)
この日のテーマはルノー。事前告知ではルノー4を中心に据える予定だったようだが、当日の集まり具合を見て、結果的にルノーが来た順にお立ち台へ並べる形となった。ルノー4、5、6と、偶然にも番号が連なる並びが生まれ、その流れの中にルノー20が加わる。スポーツモデルでも希少車でもないが、フランスの道路風景を長く支えてきた大衆車が、あらためて主役となる光景だった。
そのルノー20のオーナーであるヴィセント・ラミロさんは、この車が自身にとって特別な存在であることを静かに語ってくれた。免許を取得した1981年、初めて所有した車がルノー20だったという。一度は手放したものの、定年退職の節目に、当時と同じ仕様の個体を妻から贈られた。修復は行われているが、それは完璧な保存を目的としたものではなく、かつての記憶を取り戻すための手入れに近い。現在もこの車でパリ横断に参加しているという事実が、この旧車会の性格をよく物語っている。
会場を見渡すと、テーマであるルノーだけに留まらず、フランス車文化の裾野の広さが自然と浮かび上がる。ルノー4・5・6に代表される実用車、シムカやルノー9といった量産サルーン、パナールの軽量車。いずれも博物館的な存在ではなく、今も「使われる前提」で維持されている車ばかりだ。ここでは大衆車であることが価値の低さを意味しない。むしろ、長く生活に寄り添ってきたこと自体が評価軸となっている。
一方で、会場には異なる文脈を持つ車両も自然に混ざり込む。アルピーヌA110やA310といったスポーツモデルは、競技の記憶を背負いながらも、特別扱いされることなく並んでいる。さらに、ダカールやバハといった砂漠ラリーの現場を支えてきたランドクルーザーのアシスタンス車も姿を見せ、実用と競技の境界が曖昧なまま共存している様子が印象的だった。
日本車やイタリア車の存在も見逃せない。MR2やX1/9といったミッドシップ・スポーツがフランスの旧車会に自然に溶け込んでいる光景は、ヤングタイマー世代の価値観がすでに定着しつつあることを示している。ただし、ランドクルーザーのように、時代区分を超えて確固たる評価を得ている例もあり、「新しいから注目されている」という単純な図式では語れない。
会の終盤には、警察の巡回バイクが姿を見せた。秩序維持のためか、あるいは単に様子を見に来たのかは分からないが、特に緊張感が走ることはない。現代の警察仕様バイクと、その背後に並ぶ旧車たち。その対比もまた、この集まりが特別なイベントではなく、日常の延長線上にあることを示していた。
パリ横断を控えたこの時期のヴァンセンヌ旧車会は、単なる月例ミーティング以上の意味を持つ。新年の始まりとして、車と人が再び同じ時間軸に戻ってくる場。そこに並ぶのは、名車でも希少車でもなく、長く使われ、語られ、そして今も走り続ける車たちだった。
写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI