帝国データバンクは2025年12月26日、2025年12月以降における食品の値上げ動向と展望・見通しについての分析結果を発表した。
2025年は値上げが常態化
主要食品メーカー195社における、家庭用を中心とした2025年の飲食料品値上げは、累計で2万609品目に達した。年初に想定された最大2万品目前後とほぼ同水準で推移し、値上げが抑制された2024年(1万2520品目)と比べて64.6%増と大幅に増加した。
なお、単月8千品目に迫る急激な値上げは見られなかったものの、月間1千品目超が常態化し、一時的なコスト高から持続的な物価上昇へ移行した兆しがうかがえる一年となった。
月別にみると、2025年は4月まで1千品目超の値上げが続いたことがわかる。1月(1419品目)は、食パンや菓子パンで約2年ぶりの一斉値上げが実施。3月(2529品目)は冷凍食品やチルド麺、バター・チーズなどの乳製品を中心に2千品目を超えた。
4月には2023年10月以来、約1年半ぶりとなる月間4千品目超の値上げが発生し、調味料、酒類、パックご飯など対象は広範囲に及んだ。その後も値上げは断続的に続き、7月(2105品目)は香辛料、10月(3161品目)は焼酎や日本酒など酒類を中心に再び3千品目を超える動きが見られた。
2025年の値上げ要因
2025年の値上げ要因は、9割超が「原材料高」を占めた。原材料価格の高止まりを背景に、製品価格へ転嫁する動きが引き続き多く見られたという。特にチョコレート、コーヒー・果汁飲料、パックご飯、米菓などでは、天候不順による不作を要因とした原材料不足や価格高騰に直面し、短期間で価格改定に踏み切ったケースもあり、価格形成は厳しい局面が続いたといえる。
また、「物流費」(78.6%)、「人件費」(50.3%)の上昇割合は、集計可能な2023年以降でいずれも最高水準に。なかでも「人件費」は前年からほぼ倍増し、コスト上昇圧力が一段と強まった。
一方、実質賃金の減少を背景に、値上げ後の販売数量減少やPB品など廉価品へのシフトが進み、消費者の物価高に対する抵抗感はより鮮明に。モノ価格に加え、サービス価格の上昇も企業努力で吸収しきれない水準に達しつつあり、これが2025年に再び値上げが相次いだ主因といえる。
2026年1~4月の値上げ動向
2026年1~4月に値上げが決定している飲食料品は、冷凍食品、コメ製品、マヨネーズなどの鶏卵製品、焼酎をはじめとする酒類など、幅広い分野で3,593品目が判明した。2024年12月時点で判明していた翌年(2025年)の値上げ予定品目数6,121品目と比べると、約4割の減少となる。
単月4,000品目を超える局所的な大規模値上げラッシュは、2026年春にかけて発生しない見通しである。一方、月1,000品目前後の値上げは2026年も常態化するとみられる。
1回当たりの平均値上げ率は14%となり、2025年(15%)と同水準か、やや低下する見込み。食品分野によっては20%を超える大幅な価格改定もみられるが、全体としては値上げ幅を抑制する動きが目立っている。
分野別の特徴
2026年1~4月の値上げ品目が最も多いのは「調味料」(1,603品目)で、マヨネーズ、ドレッシング、みそ製品などが中心となった。「加工食品」(947品目)は冷凍食品、パックご飯、即席めんなど多岐にわたるが、前年同時期(2,121品目)の半数以下にとどまった。
「酒類・飲料」(882品目)では、清涼飲料水ではPET緑茶や果汁飲料、アルコール類では焼酎などの値上げが目立った。
2026年の値上げ要因では、「原材料高」が99.9%と4年連続で9割を超えた。一方で、物流費などサービス価格の上昇による影響が強まり、「物流費」由来は61.8%、「人件費」由来は66.0%と、いずれも高水準に。人件費は年間累計、12月末時点の発表値ベースともに過去最高を記録している。
「包装・資材」(81.3%)も段ボールやプラ製フィルムなどの価格上昇を背景に、4月までの値上げのうち8割超を占め、過去最高水準に。一方で、「円安」由来の値上げは1.6%と過去最低水準にとどまった。
2026年の見通し
2026年は、コーヒー、チョコレート、コメ関連製品など一部で不作や在庫不足を背景とした値上げがみられるものの、全体としては物流費や人件費など国内要因による「内圧型」の値上げが中心となっている。外的要因による急激な価格上昇から、持続的な物価上昇局面へ移行していることがうかがえる。
同社の分析によると、2025年発表分における「減量(実質)値上げ」を含む割合は1割前後にとどまり、3割を超えていた2022~23年を大きく下回った。消費者側ではPB品など廉価品へのシフトが進む一方、値上げ理由への理解や物価高の長期化を背景に、価格転嫁を受け入れやすい環境も形成されつつあるとのこと。
こうした状況から、2026年の飲食料品値上げは、12月末時点で前年同時期比4割減のペースで推移している。2026年4月頃までは前年を下回る水準が見込まれるものの、4月には単月2,000品目を超えており、今後の動向次第では月3,000品目規模の値上げが再び発生する可能性もある。
2026年通年では、原材料高や人件費、物流費の上昇を背景に、年1万5,000品目前後と、2024年と同水準の値上げが続く可能性が高い。




