東京都建設局は、多摩都市モノレールの上北台駅からJR箱根ケ崎駅方面の延伸事業に着手すると発表した。延伸区間の軌道事業は2025年5月9日に国土交通大臣が特許を受け、延伸部の道路整備事業認可を待っていた。11月27日に国土交通省の認可を得て、まずは道路の工事が始まる。事業期間は2035年3月31日までとされ、モノレール開業もその頃が目標となる。

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    現在の多摩モノレールは上北台~多摩センター間を結ぶ

多摩都市モノレールはJR立川駅付近を中心に、北は東京都東大和市の上北台駅、南は東京都多摩市の多摩センター駅を結ぶモノレールを運行している。この区間は全93kmに及ぶ多摩都市モノレール構想のほんの一部であり、次の段階として上北台駅からJR箱根ケ崎駅方面、多摩センター駅から八王子方面と町田方面の3路線が検討されている。

2000年の運輸政策審議会答申第18号「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」で、この3路線のうち、上北台駅からJR箱根ケ崎駅方面は「2015年までに整備すべき」路線とされていた。

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    多摩都市モノレール全体構想図。黒線は営業中。赤線は延伸の決まった区間。青線は延伸計画区間。黄線は構想区間(地理院地図をもとに筆者加工)

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    多摩都市モノレール延伸区間(地理院地図をもとに筆者加工)

しかし2015年内の整備は間に合わず、2016年の交通政策審議会答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」で、「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」に挙げられた。2025年3月に東京都が発表した「2050 東京戦略 ~東京 もっとよくなる~」のひとつ「戦略18 インフラ・交通『都市活動や都民生活を支える公共交通ネットワークの充実強化』」に挙げられている。

延伸区間の各駅周辺を見ていく

延伸区間は上北台駅から新青梅街道を西へ向かい、途中に6駅設けてJR箱根ケ崎駅付近の終点に至る。距離にして約7.0km。車両基地の新設はない。全区間複線のため、運行間隔は既存区間と同じ朝ラッシュ時約7分間隔、日中10分間隔を期待できる。

既存区間の駅はすべて対向式ホームだが、延伸区間は低コスト化のため島式ホームとなり、階下にコンコース(改札階)を設置する。改札階は新青梅街道の両側の歩道に連絡通路を配置し、エレベーターとエスカレーターを設ける。ただし、JR箱根ケ崎駅付近の「No.7駅(仮)」は横田基地の高度制限があるため、線路の位置を下げ、ホームとコンコースを同一面とする。

「No.1駅(仮)」

上北台駅の北側から西へ進み、新青梅街道に入る。曲線区間の用地は確保されており、現在は自転車駐輪場になっている。「No.1駅(仮)」の北側は武蔵村山市芋窪、南側は武蔵村山市芋窪緑が丘。駅南側は空地だが、武蔵村山市が駅前広場を計画している。

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    上北台駅から「No1駅(仮)」付近(地理院地図をもとに筆者加工)

「No.2駅(仮)」

「No.2駅(仮)」は「村山医療センター北交差点」付近になる。村山医療センターは病床350の大病院で、地域医療の他に「骨・運動器疾患の高度専門医療施設」でもあり、脊髄損傷治療に力を入れている。「No.2駅(仮)」と村山医療センターの敷地は約200mと至近距離だが、病院入口は敷地の反対側にあり、徒歩だと約10分かかる。新駅側の入口設置を期待したい。村山医療センターの公式サイトによると、現行の公共交通アクセスは玉川上水駅(西武拝島線、多摩モノレール)から村山医療センター停留所まで路線バスだが、運行本数は少ない。

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    「No.2駅(仮)」付近

「No.3駅(仮)」

「No.3駅(仮)」から北へ約210mの場所に武蔵村山市民会館「さくらホール」があり、さらに北へ150m行くと武蔵村山市役所がある。「さくらホール」は1,032人収容の大ホールと258人収容の小ホールがあり、地域密着型イベントから人気アーティストまで幅広く公演実績がある。しかし、どちらも近道を通ろうとすると住宅街の細い道になるところが少し心配である。南側に大型ショッピングモールもあるため、延伸区間の中心的な駅になるだろう。駅前広場を設置予定で、すでに相当する空地がある。

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    「No.3駅(仮)」付近

「No.4駅(仮)」

付近は低層宅地が多く、モノレールの北側は車窓から狭山丘陵を眺められるはず。駅から北へ20分ほど歩くと、都立最大の都市公園という野山北・六道山公園に至る。都道162号線と交差する三ツ木交差点に隣接しており、駅名は「三ツ木」になるだろうか。

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    「No.4駅(仮)」付近

「No.5駅(仮)」

駅近くの交差点名は「青岸橋東」。南側の残堀川を渡り、川沿いに徒歩5分で東京都立武蔵村山高等学校に着く。現在のおもな交通機関は路線バスで、JR八高線の箱根ケ崎駅、JR青梅線の昭島駅駅、西武拝島線の西武立川駅などから15~25分の乗車だという。モノレールの延伸開業で通学環境は大幅に改善されるだろう。

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    「No.5駅(仮)」付近

「No.6駅(仮)」

延伸区間の7駅で最も大胆な開発が予想される。瑞穂町のまちづくり方針によると、駅周辺に駐輪場とバス乗降場を設置し、駅前空間のにぎわいを創出するという。駅の南西側は新産業の導入育成拠点、駅の南東側は殿ヶ谷土地区画整理事業が進められており、秩序ある住宅地を形成するとともに、交通利便性の高い工業・流通業務地としての土地利用を推進するとのこと。ただし、オンライン地図を見る限り、公有地の確保が進んでいない。

  • <!-- Original start --></picture></span>「No.6駅(仮)」付近<!-- Original end -->

    「No.6駅(仮)」付近

「No.7駅(仮)」

JR八高線の箱根ケ崎駅とは駅前広場を挟んだ位置関係になる。前述の通り横田基地の高度制限を受けるため、モノレールのコンコースとホームが同一平面になる。なお、1981年に発表されたモノレール構想では、箱根ケ崎駅からJR五日市線の秋川駅を経由し、八王子方面に至るルートがあった。実現したとしてもかなり先の話になると思うが、「No.7駅(仮)」が行き止まり型になるとすれば、スイッチバック型の構造になるかもしれない。

  • <!-- Original start --></picture></span>「No.7駅(仮)」付近<!-- Original end -->

    「No.7駅(仮)」付近

多摩都市モノレール構想

多摩都市モノレール構想は、元立川市長の青木久氏が立川市の助役だった頃に計画されたという。立川市の地域紙「えくてびあん 2025年3月号」のインタビュー記事によると、「東京大学の伊藤滋先生と、建設省(現・国土交通省)の渡部参事官が、神戸のポートアイランドの新交通を三多摩でやろう」と持ちかけたとのこと。しかし、幅25mの道路にモノレールを走らせるという構想に対して、三多摩地区の全市町村が反対した。当時、三多摩地区に幅25mの道路はなく、そんな道路を作ったらモノレールは要らないとまで言われたという。

神戸新交通ポートアイランド線は1977年に設立され、1981年に開業した。多摩信用金庫のシンクタンク、たましん地域経済研究所の機関誌「季刊多摩けいざい 2019年8月号」によると、東京都が1974~1976年に「新交通システムに関する基礎的調査」を実施した際、多摩地域の公共交通機関の不足に対処するため、中量軌道システムの導入が有力とされていたという。

そこで、改めて1979年から「多摩地域都市モノレール等基本計画調査」を実施。1981年に報告書を公表した。同年の構想では、米軍立川基地跡地、多摩ニュータウン、八王子、秋留台を結ぶ環状線と、多摩センターから是政、町田を結ぶ支線、日野経由で環状線を短絡する路線などがあった。この構想は現在も生きている。多摩センター~上北台間が第1期線として開業し、上北台駅からJR箱根ケ崎駅方面の延伸工事着手が決定した。残りの区間について、答申198号は多摩センター駅から八王子方面について「事業性に課題があるため、十分な検討が行われることを期待」、多摩センター駅から町田方面について「導入空間となりうる道路整備の進捗を見極めつつ調整を進めるべき」としている。他の区間は構想の域を出ていない。

上北台駅からJR箱根ケ崎駅方面は2024年度末時点で道路拡幅用地の約7割を取得している。筆者も今年春頃に車で走ってみたところ、道路沿いに導入空間を確保したところが多かった。導入ルートとなる新青梅街道は、基本的に幅30mまで拡幅し、モノレール橋脚が立つ中央分離帯が幅4m、その両側に幅8mの2車線、その外側に幅5mの歩道、自転車道を整備する。自転車道と歩道は灌木などで仕切られ、自転車に関わる道路交通法に準拠した構造になるようだ。

多摩地域の交通ネットワークにおいて、上北台駅からJR箱根ケ崎方面の開通による効果はいくつもある。路線バスや自家用車の利用者がモノレールに移るとともに、新青梅街道の拡幅で交通渋滞が軽減する。JR八高線の箱根ケ崎駅から拝島・八王子方面の混雑も軽減される。東京の市町村で唯一、鉄道がなかった武蔵村山市では、市民の移動手段が増えるだけでなく、立川方面へ通勤する人の増加、さらに多摩センター付近の大学生が住む賃貸物件需要も期待できる。武蔵村山市にとって人口獲得のチャンスだし、不動産や商業などビジネスチャンスも大きい。

上北台駅からJR箱根ケ崎駅方面の成功が、次の2路線(多摩センター駅から八王子方面・町田方面)の計画推進と構想区間の実現に向けた後押しとなることを期待したい。