草なぎ剛が主演を務めるカンテレ・フジテレビ系ドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(毎週月曜22:00~ ※FODほかで配信)の最終話が、22日に放送された。

妻の死をきっかけに“遺品整理人”となったシングルファーザーの主人公が、遺品整理や生前整理を通じて、残された家族へのメッセージをひも解いていくというヒューマンドラマ。

“遺品整理人”と“不倫”という、一見すると相入れない要素を掛け合わせた本作だが、その異色な構成の果てにたどり着いたのは、驚くほどシンプルで力強いメッセージだった。それは、中盤に海斗(塩野瑛久)が放った「世の中には絶対にやっちゃいけないことがある!」という言葉。最終話、その「絶対にやっちゃいけないこと」の正体を、人間の“尊厳”という一点に集約させて見せた。

  • 草なぎ剛 (C)カンテレ

    草なぎ剛 (C)カンテレ

最も許しがたい「絶対にやっちゃいけないこと」

今作が異質だったのは、遺品整理という職業を扱いながら、お仕事ドラマの定石である「一話完結の人情もの」に安住させなかった点にある。そこに“不倫”という、倫理的な是非が問われるメロドラマを縦軸として大胆に組み込んだことで、物語は常に予測不能な不穏さをはらんできた。なぜ遺品整理人の物語に、主人公の不倫を描く必要があったのか。その“答え”が、最終話に凝縮されていた。

そのハイライトが、樹(草なぎ)と利人(要潤)が対峙(たいじ)した場面だ。利人の妻・真琴(中村ゆり)と惹かれ合い、不倫関係に陥ってしまった樹。一方で、自らが社長に就任することで過去の自殺者隠蔽を「なかったこと」にして決着を図ろうとする利人。この2人の対立は、決して正義と悪という単純な構図ではない。樹もまた、社会的な倫理に背いた後ろめたさを抱える身であり、決して清廉潔白なヒーローではないからだ。

だからこそ、樹の放つ言葉には血の通った、えぐり出すような説得力が宿った。樹が糾弾したのは、利人が行おうとした「死者の尊厳を踏みにじる行為」だったからだ。

ここで今作は、不倫と自殺者の隠蔽という2つの事象を並べて「どちらが罪深いか」という道徳的な優劣を競わせたのではない。なぜなら視聴者は知っている。樹と真琴の不倫が、誰かを傷つける可能性を知りながらも、お互いの孤独と魂に触れる切実な過程であったことを。それは傍から見れば糾弾の対象であっても、少なくとも2人は「相手の尊厳」を深く尊重し合っていた。

対して、利人が選ぼうとした隠蔽は、亡くなった者たちが確かにそこに生きた証し、すなわち「人生の終幕」という尊厳を、企業の保身のために踏みにじる行為に他ならない。それは、故人の生きた証しを丁寧に扱う“遺品整理人”である樹にとって、最も許しがたい「絶対にやっちゃいけないこと」だったのである。

  • 要潤 (C)カンテレ

    要潤 (C)カンテレ

今を生きるすべての人への深い敬意

昨今のドラマ界では、刺激的なエンターテインメントとして“不倫”を扱う作品が毎クールのように量産され、一大ジャンルとなっている。不倫は時にどんな犯罪よりも激しく、誰からも容易に断罪される対象だ。しかし本作は、そんな現代的な潮流を逆手に取り、不倫という“生々しい間違い”を犯してしまう人間の弱さすらも抱え込んだ上で、「それでも守らなければならない一線」として“尊厳”を描き出したのだ。それは、遺品整理人が主人公でなければ、ここまで強く描き切ることはできなかっただろう。

人間の尊厳を踏みにじってはいけない――遺品整理という仕事を通じて死者の人生を見つめてきた主人公が、自らも泥を被りながらたどり着いたその境地。それは、死を粗末に扱うことへの怒りであると同時に、今を生きるすべての人への深い敬意でもあったはずだ。

このあまりにもシンプルで、けれど誰もが忘れかけていたメッセージを、エンターテインメントとして見事に昇華させてみせた一作であった。

  • (C)カンテレ