ビザ・ワールドワイドはこのほど、2026年における決済分野を形作る主な予測を発表した。

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驚異的なソフトウェア、世界中に普及するモバイル端末、オンデマンドのコンピュートパワー、ほぼ無限のデータ、生成AI、量子コンピューティング、ブロックチェーンなど、こうした技術面の飛躍は、社会全体だけでなく、私たちのお金との関わり方に大きな変化をもたらしている。その中でも、決済サービス業界は、他の業界以上に新たな技術を積極的に取り入れ、世界中でイノベーションを推進している。こうした変革を背景に、同社は2026年における決済分野を形作る主な予測を提示した。

エージェンティックコマースが主流に

対面式コマースから、eコマース、モバイルコマースを経て、今や、消費者や企業の代わりにエージェントが取引を行うエージェンティックコマースへと移行している。2026年には、AIのサポートによるショッピングが一層現実的となり、エージェンティックコマースが自然に広がると見込まれている。

具体例として、ChatGPTアプリに「購入を代行」というボタンが表示され、エージェントをプログラムすることで、決済の有効化、個人の嗜好に応じたカスタマイズ、支出管理といった処理が行われるという。

1. 決済の有効化
よく使用するクレジットカードを読み込む。カードが認証されると、トークン化され、セキュリティで保護される。これでエージェントが顧客に代わって安全に買い物ができる。

2. 個人の嗜好にあわせたカスタマイズ
安全なデータトークンを通じて、買い物履歴や好みに関する情報を共有する。これで、エージェントは「オリバーさんなら、これらの購入オプションのうち、どれを選ぶだろう?」と考えながら、代わりに買い物をすることができる。

3. 支出の管理
条件を設定して、エージェントに買い物をさせることができる。例えば、旅行や食事の場合は許可して医療機関の受診については許可しない、といった設定が可能に。また支払い金額が100ドル未満の場合は許可し、それ以上の場合は許可しないこともできる。

これにより、エージェントが自分専属のパーソナルショッパーとなり、お気に入りのeコマースサイトを閲覧するだけでなく、自分の嗜好を理解した上で、自分らしい意思決定ができるLLM(大規模言語モデル)となる。

同社は、大手ブランドがAIを利用したショッピング体験の主流化に注力する中、完全なエージェンティックコマースへの移行は2026年にさらに加速すると見ており、その実現を目指し、エコシステムパートナーと協力して重要なインフラとツールを提供している。

「これは未来の話のように思われるかもしれませんが、それほど先のことではありません。今日起こっているイノベーションは、明日には当たり前のものとなるのです」(同社)

アイデンティティをめぐる戦いはAI時代に突入

AIコマースに期待を寄せる一方で、犯罪者によるAIを活用したディープフェイクやエージェント詐欺、合成IDを用いたアイデンティティ攻撃への懸念もあると同社は指摘する。

これまでの詐欺は、トランザクションレベルで発生していた。攻撃者が一度に盗めるトランザクションは1つだけだった。それがAI技術の進歩に伴い、今では攻撃者はより高度な手口で、非常に精巧な詐欺やなりすましを使って消費者のアイデンティティ全体を盗むことができる。一度アイデンティティが盗まれると、その情報によるすべてのトランザクションは攻撃者のものとなる。これは大規模な詐欺であり、その被害は甚大なものとなる可能性がある。

同社は、2026年にはAIを利用したアイデンティティ攻撃がさらに高度化し、発生件数も増加すると予測している。この戦いは、銀行、加盟店、フィンテック企業、政府が単独で取り組んでも勝利を収めることはできない。2026年には決済サービス業界は、協力してアイデンティティ詐欺と戦い、共にリスクを管理するための共通の機能や技術を開発することが求められる。同社は、「この戦いにおいて中心的な役割を担う」と述べている。

ステーブルコインの躍進

法定通貨によって担保された暗号通貨であるステーブルコインについて、同社は「信頼できるグローバル決済インフラへと変革している」説明する。ステーブルコインが既存の国際決済エコシステムに加わり、その役割を補完していく可能性は、特に新興市場やクロスボーダー決済において非常に大きいという。

米国のGENIUS法や世界各国で同様の法律が成立し、規制の枠組みが整備されたことで、2026年には飛躍的な成長が期待できる。

次の分野でステーブルコインの大幅な成長が見込まれる。

・現地通貨が不安定であり、安定した米ドルの利用が限られている新興市場で、ステーブルコインが価値の保存手段として機能(アルゼンチンなど)。

・B2B決済、B2C決済、P2P送金などのクロスボーダー決済において、ステーブルコイン技術を活用することで現在のソリューションをより効率化。

・Visaのインフラを活用し、法定通貨と暗号通貨の世界をシームレスに移動できる。Visaカードと連携した暗号通貨ウォレットには無制限の決済範囲が与えられているので、消費者はステーブルコインと暗号資産を担保にスターバックスでコーヒーを購入できる。(Visaは現在、40か国以上の国と地域で、130を超えるステーブルコインと連携したカードプログラムを提供)

・Visaネットワークでの決済。ステーブルコインネイティブの顧客も、他の通貨と同じように、米ドルやユーロのステーブルコインでVisaネットワーク上の決済ができ、今後もその規模は拡大する。

消えゆく手動入力によるゲストチェックアウト

いくつもの手順を踏まなければならない面倒なゲストチェックアウトは、ワンクリック決済に代わりつつある。Apple Payのようなデジタルウォレットでも、Shopifyのようなeコマースプラットフォームでも、購入ボタンがオンラインに組み込まれるようになった。これにより、決済が速くなり、カゴ落ち率が低下し、不正利用も減少している。

このような変化を実現している要因の1つが160億ものVisaトークンであり、「多くの市場では、手動入力によるゲストチェックアウトは間もなく完全に姿を消す」と同社は予想する。

現金の時代に終わりが訪れるのか

同社は、2026年以降も現金が直ちになくなることはないとしつつ、世界の消費者決済の半分がカード情報を使って行われる、史上初の年になると予測している。これまでは現金が唯一の選択肢であった少額取引も、カードやモバイル端末によるタッチ決済などのイノベーションにより、デジタル化が可能となった。

現金のデジタル化をさらに進めるため、同社はWeChat Pay(中国)、M-Pesa(ケニア)、Mercado Pago(ラテンアメリカ)など、世界中のフィンテック企業やデジタルアプリと提携してしている。各地域のイノベーションと、同社が持つ最高水準のセキュリティや、不正行為、リスク、紛争解決、ブランド、信頼、アクセプタンス、グローバルネットワークを組み合わせることで、デジタルコマースの安全かつ包括的な成長を実現していく。

正しい視点による予測の重要性

同社は「市場のアーキタイプ」という視点により、成長モデルが類似した国々をグループ化している。発展段階、インフラ、消費者行動、イノベーション、規制に基づいて、類似した決済市場のグループを分類。この視点でみると、地球の反対側にいる市場がしばしば双子のように見えることがあるという。

例えば、オーストラリアはデジタル化が進み、現金利用が少ないという点で、北欧、英国、カナダに似ていいる。インドは、決済の面ではブラジルやナイジェリアと類似点が多く、いずれも国家レベルのリアルタイム決済ネットワークに大きく依存している。日本、ドイツ、サウジアラビア、メキシコはお互いに、地理的に隣接する国々よりも共通点が多いこともわかってくる。この視点で分析すると、トレンドが明確になり、より正確な予測を立てることができるという。2026年には、このアプローチによって新たなインサイトが得られ、世界中でイノベーションと成長が促進されると同社は見ている。