NTTドコモ/三井住友信託銀行/住信SBIネット銀行の3社は19日、住信SBIネット銀行の商号を「ドコモSMTBネット銀行」に変更することを発表し、3社による記者会見を開催した。会見では、新社名への変更だけでなく、3社が協業して新たな銀行サービスの提供を目指す考えも示された。
社名変更は2026年8月を予定するが、それに先立ちドコモと三井住友信託銀行との間で住信SBIネット銀行の資本再編も実施し、両社でより積極的に貢献していく考えだ。
住信SBIネット銀行は、資本再編と社名変更を踏まえてサービスを拡充していく考えで、2026年2月には生成AIを活用した「NEOBANK ai」サービスのベータテストを開始。生成AIサービスに金融機能を組み込むなど、銀行を意識せずに生活の中で自然に金融サービスを利用できる、そんな環境の実現を目指していく。
暮らしに溶け込む金融サービスを実現する
新社名となった「ドコモSMTBネット銀行」は、単純にドコモと三井住友信託銀行(SMTB)の社名を繋げたもの。これまでは設立当時の「住友信託銀行(住信)」と株主のSBIホールディングスの2社からとった名前だったが、株式公開買付け(TOB)でドコモがSBI保有の株式を取得し、さらに住友信託銀行の社名が「三井住友信託銀行」になったことから、両社の名前をとった「ドコモSMTB」を冠した社名となった。「日本語+英字+『ネット銀行』」という、従来と同じ構成にもなっている。
ドコモの前田義晃社長は、「あえて奇をてらわない社名としたのは、共同経営パートナーである三井住友信託銀行とドコモが一丸となって経営にコミットし、新たな銀行のさらなる成長を目指す強い決意の証」だと話す。なお、サービスとしては、従来のNEOBANKにドコモの「d」を加えた「d NEOBANK」の名称となる。
これにあわせて、ドコモが持つ株式のうち500億円分を三井住友信託銀行に譲渡し、住信SBIネット銀行が300億円の第三者割当増資を行うことで、三井住友信託銀行の出資比率を引き上げる資本再編も実施される。これにより、当初は34.19%だった三井住友信託銀行の出資比率は44.63%となる。同社の大山一也社長は「資本活用フェーズにある当社としては成長に向けた積極的な投資」だとしつつ、それぞれの強みのある分野に送客することで両社の成長に繋げたい考えを示す。
ドコモの前田社長は、「鍵となるのは3社がそれぞれ培ってきた強み」だと強調する。住信SBIネット銀行は、テクノロジーによって便利と安全を両立させたUI/UXを実現し、そうした機能をパートナー企業に提供するフルバンキングBaaS事業も展開。三井住友信託銀行は、不動産や資産管理、承継などの分野で高い専門性によって顧客の課題を解決し、長期の信認関係を築いてきた。
そしてドコモは、暮らしを支える幅広いサービスを提供し、ユーザー接点を拡大。1億人を超える顧客と繋がって様々なライフスタイルを支えていると前田社長は説明する。
前田社長はこうした3社の強みを掛け合わせることで、「お客様が意識することなく、日々の生活の中で金融サービスの恩恵を自然と受けられること、暮らしと金融の境目のない未来」を目指していると言う。d NEOBANKにドコモの通信やサービスが結びつくことで、ユーザーが自然と金融サービスを利用して便利とお得を実感できるようになると前田社長。
さらに、ドコモが持つ幅広い顧客接点を生かし、三井住友信託銀行の資産形成や将来設計などの専門的なサービスも身近なものとして提供するという。「この連携によって、お客様の人生により長く、より深く寄り添うことが可能になる」と前田社長は話す。
d NEOBANKは若い世代を中心に利用されているとのこと。そこに、資産管理だけでなく承継のように人生の後半から次の世代までをターゲットにした三井住友信託銀行のサービスが組み合わさることによって、「金融を使い始めた瞬間から承継を考える時期まで、人生のあらゆる場面で一体となって寄り添うことができる」としている。
前田社長は、「3社の連携による好循環によって金融サービスは、意識して使うものから暮らしの中に自然に溶け込むものになり、誰にとっても身近な存在へと進化していく」として、d NEOBANKによって「新しい体験を届けたい」とアピールする。
ドコモはこれまで、通信、ポイント、決済、エンターテインメントなどのサービスを提供してきた。ここにd NEOBANKがハブとなって様々なサービスと繋がっていく。サービスの支払口座がd NEOBANKに集約され、手続きも簡略化されることで、シームレスな顧客体験を提供できるのだという。
生成AIなどから銀行サービスが使える境目のない未来
こうした体験を実現するために、住信SBIネット銀行の円山法昭社長は、お得/便利/テクノロジーの3つの領域に注力していく考えを示す。
「お得」に関しては、ドコモのサービスと連携し、例えば給与受け取りやドコモ回線とのセット利用などでdポイントが貯まるほか、dカード引き落とし口座設定、d払いやマネックス証券との連携などで還元率をさらにアップする施策も展開。対象のドコモサービス利用に応じて、住宅ローン金利優遇のプログラムも用意する。これらは2026年8月の社名変更のタイミングで開始する予定となっている。
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dポイントと連携してお得を提供。住信SBIネット銀行でのdアカウント利用については、このdポイント連携のみに利用され、例えばログインなどでdアカウントが利用できるようになるといったことは予定されていないという。2026年度中を予定しているdアカウントのリニューアル以降の検討事項になると思われる
「便利」に対しては、ドコモのポイント・決済・通信といった多様な生活データと、d NEOBANKの銀行データを組み合わせることで、顧客に最適な商品を最適なタイミングで提供するというパーソナライズ化を目指す。さらにマネックス証券口座との自動スイープ機能や、銀行と証券口座の同時開設といったシームレスな金融取引を可能にする。
三井住友信託銀行とは、資産運用相談/不動産/相続などの専門的なサービスに対して、d NEOBANK側からは住宅ローンなどを提供し、顧客ニーズに対応する。
「テクノロジー」として円山社長は、「インビジブルバンキング」を目指す。これまで銀行機能をパートナーに提供してきたBaaSに対して、ドコモと三井住友信託銀行のサービスを組み合わせて「スマートライフプラットフォーム」へと進化させることで「エコシステム as a Service」にすることが狙いだという。
これによって、ドコモの法人顧客やdポイント加盟店、三井住友信託銀行の法人顧客に対してさらなるサービスの拡大に繋げていきたい考えだ。
こうした取り組みに加えて、d NEOBANK自体の機能向上として、生成AIを活用した新たな「NEOBANK ai」を開発。2026年にも提供開始する。これは、今まで銀行で何らかの作業をする場合、自ら動線を探してアプリを使うというのが一般的だったが、ユーザーに合わせたUIとなる「ジェネレーティブUI」を実現しようというものだ。
例えば「AIデビット家計簿」の機能として、「今月、コンビニにお金使い過ぎ?」と音声で尋ねると、アプリがデビットカードの利用明細を取得して分析してくれる。レシートの写真を撮って「この割り勘、集金できている?」と聞くと飲み会代金が送金されてきたかをチェックしてくれる。「Aさんに3,000円送って」と音声で振込を行うこともできる。
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「使いすぎ?」と聞くと履歴を分析してくれる
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グラフィカルな分析結果
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写真に撮ったレシートから、割り勘の送金がされているかをチェックしてくれる
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不足分があればそれも教えてくれる
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振込の場合、過去の履歴があれば相手の名前や自分名義の他の金融機関でも音声で振り込みできる
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さまざまな操作を音声でも実行できる
こうした銀行取引が写真や音声によって操作でき、AIが実行してくれるというのがこのNEOBANK ai。円山社長は「(NEOBANK aiは)すでに完成している」と話しており、開発環境では動作しているという。2026年2月には、テストユーザーに向けてベータテストを開始する予定。テスターを一般から募集する。
円山社長は、2026年中にはChatGPTやGeminiといった生成AIプラットフォームから銀行サービスが利用できるようになると話し、「最終的にはOSでデバイスやアプリに依存しない、デバイスフリー、ブラウザフリーのAIサービスが実現できる」と言う。これによって、「暮らしと金融の境目のない未来」を実現したいと円山社長。
富裕層向けサービスで連携する三井住友信託銀行
住信SBIネット銀行の議決権の50%を保持しながら、これまで出資比率を変えていなかった三井住友信託銀行は、TOB後の3社の協議で、改めて出資比率を引き上げた。これについてドコモの前田社長は「事業展開に向けて最適な資本構成を話し合った結果」と説明。三井住友信託銀行の大山社長はこれについて「積極的な投資」と強調し、住信SBIネット銀行(および今後のドコモSMTBネット銀行)がTOBにより非公開化されたことで、より柔軟な一体運営が可能になると指摘する。
その上で大山社長は、三井住友信託銀行が保有する「定型的な業務」を住信SBIネット銀行/ドコモSMTBネット銀行に移管し、富裕層向けサービスにリソースを集中させることも可能になると説明。
その一方で、住信SBIネット銀行/ドコモSMTBネット銀行が「資本蓄積フェーズにあり、国内ナンバー1の住宅ローン事業をさらに強化するためには資本増強が必要」と大山社長は話す。さらに、金利のある世界になったことで、住信SBIネット銀行/ドコモSMTBネット銀行が預金獲得に優位性のあるネット銀行として成長と財務のバランスを取ることができると判断している。
ドコモと三井住友信託銀行との連携も進め、dポイントと連携することでサービスの強化を図る。まずは同社の資産管理アプリの利用に応じてポイントを提供するリワードプログラムを開始し、将来的にはゲーム感覚で金融を学びながらdポイントを獲得できる仕組みも検討する。
三井住友信託銀行で株主活動をサポートする「株主パスポート」でもdポイント連携を進めて、「株主と企業の対話を促進する新たな価値を提供する」と大山社長。
こうした取り組みとドコモが保有するデータを組み合わせ、より多くの顧客にポイントを貯めながら資産形成を楽しむという新しい金融を届けるというのが三井住友信託銀行の狙いだ。
資産管理や承継の領域では、急な相続発生、将来の資産承継、資産凍結への備えが十分にできている人は決して多くはなく、「ドコモの通信サービスでも、死亡に伴う手続きが年間数十万件ある」と大山社長は指摘。そうした悩みに対して、信託銀行として長年培ってきたノウハウとドコモの顧客接点やデジタル技術を組み合わせ、新たなサービスを作り上げて「次世代への円滑な資産の移転にも貢献していきたい」と大山社長は話す。
新たな金融商品の開発では、ドコモSMTBネット銀行とも連携しながら、「投資を通じた新しい価値を提供」(大山社長)することが狙いで、「顔の見えるプライベートアセットへの投資機会を創出して長期投資できる機会を提供する」という。具体的にはNTTグループが保有するインフラ施設などの資産を活用し、投資商品として提供するような内容を検討している。
また、ドコモのエンターテインメント資産を金融商品化し、ポイントやイベント招待といった特典によって、投資を楽しむ新しい体験を提供することで、「ドコモファンと一緒に未来を作る取り組みにも挑戦していきたい」と大山社長はアピールする。
「今回の提携は、両グループがそれぞれの叡智と強みを結集し、金融の新たな地平を切り拓く第一歩」だと大山社長は強調し、ドコモSMTBネット銀行の真価を株主として全力で支援していくとした。



















