
プロ10年目の今季、堀内謙伍は76試合に出場し、3本塁打、18打点、打率.256といずれもキャリアハイとなる数字を残した。充実のシーズンだったように見えるが、そこにはフォーム改良など、知られざる陰の努力があった。シーズンが終わった今、堀内本人が振り返る。(取材・文:阿部ちはる)
プロフィール:堀内謙伍(ほりうち・けんご)
生年月日:1997年4月1日(28歳)
身長/体重:174cm/82kg
静岡高では2年夏から3季連続で甲子園に出場し、2016年ドラフト4位で楽天に入団。プロ2年目の18年に一軍初出場を果たした。20年以降は5年間で22試合の出場に留まったが、25年はキャリアハイの76試合に出場し、初本塁打をマークした。
プロ10年目は悔しいスタートだった
ケガの功名とはまさにこのことだろう。
「春先に腰のケガをして、そこからいろいろなことを見つめ直したんです。それがいい方向にいったのかなと思います」
楽天の堀内謙伍はそう振り返った。
終わってみればキャリアハイ。だが2025年シーズンのスタートは悔しいものだった。プロ10年目、今季に懸ける思いは強かったが春季キャンプ、オープン戦は二軍帯同。結果を残して一軍昇格のチャンスを狙っていた矢先、腰を痛めてしまう。
開幕はリハビリスタート。だが焦らず、まずは痛めた原因を突き詰め再発予防に意識を向けた。すると新しい視点にたどり着く。
「今までも筋力トレーニングや練習はたくさんしていたんです。でも自分の体の使い方とか細かいところはあまり考えずにやっていて、それでケガをしてしまったのかなと。いろいろ教わる中でそういったところにも目を向けていかなくてはいけないのかなと感じました。腹圧や股関節の柔軟性など、体の使い方を見つめ直したんです」
まず取り掛かったのは「呼吸法」。意識して、呼吸をする。外側の筋肉ではなく、内側にある筋肉、もっと言えば臓器を意識して鍛えたという。
4月に実戦復帰すると「なんか力が伝わりやすくなったな、って」とこれまでとは違う感覚があった。それこそが取り組んできたことの成果。体が大きくなる、という目に見えるものではなかったが、確かな変化が堀内の体には訪れていた。
「小さいころは…」打撃フォームの改良にも着手
そして二軍で打率.375と打ちまくり4月12日に一軍昇格。チームは浅村栄斗らの不調もあり、得点力不足に苦しんでいただけに堀内の力強い打撃と勝負強さはより際立ち、打線に欠かせない存在となっていった。
そうしてスタメン出場を増やし、5月16日のソフトバンク戦(PayPayドーム)でプロ初本塁打。「最高です」とはにかんだ笑顔が印象的だった。
その姿をテレビで見守っていた雄平二軍打撃コーチは堀内の努力を称える。「打撃フォームの改良に着手したことでバッティングでも結果を残せるようになったのだと思います」
春先のリハビリ期間中、打撃フォームも見直していた。低めのボールを捉えるのが得意の堀内だが、ヒットゾーンを広げるため、少し高い位置のボールも打てるようにと考えたそう。
「フォームを変えたというよりも、高い位置のボールもヒットにしたいと思って取り組んだところ、自然とフォームが変わっていきました。ボールをしっかり上から見て、距離をとって背筋で打つ、という感覚です」
だがそれは新たに得たというよりも“原点”に戻った感覚だったという。
「小さいころはそういう打ち方だったんですよね」
キャリアハイのシーズン。しかし、その裏では悔しさを感じていた
[caption id="attachment_241173" align="alignnone" width="530"] 東北楽天ゴールデンイーグルスの堀内謙伍(写真:阿部ちはる)[/caption]
高卒でプロ入りし、結果を残すため試行錯誤していくうちに少しずつ変わっていったフォーム。だが、よりシンプルに考えたことで原点回帰した。
「あまりスイング軌道とかは気にしていないんです。自分のスイングにボールを入れていくのではなく来たボールにバットを出していくイメージ。思いっきりトスバッティングする、みたいな。あまりごちゃごちゃ考えずに、来た球に対してしっかりバットを当てに行く感じですね。結果的にそのほうが感覚がよくなりました」
その打撃が評価されキャリアハイとなる76試合に出場。3本塁打、18打点、打率.256とプロ10年目の原点回帰は手応えにもつながった。だが悔しさも残っている。それが守備面だ。特に順位争いをしていたシーズン終盤にベンチスタートが続いたこと。
「捕手は1つのミスでチームの負けに直結してしまうポジション。その重要性をより痛感したシーズンでしたね」
出場数が増え、自分だけではなくチームの成績にも意識を向けられるようになり、捕手が勝敗を大きく左右するポジションであることを再認識した。だからこそ、自分が打ってもスタメンで出ても、その日チームが勝てなければ悔しさが強く残る。「負けたらやっぱり、絶対にどこか僕にも責任があるので」
原点回帰は後退ではない。堀内謙伍の新章が始まる
実力を示したシーズンとなったが、満足とは程遠い表情を見せる。
「やっぱり、信頼がないから大事な場面でスタメンマスクを被らせてもらえないのかなと感じたので、(大事な時期に)出てやろうという気持ちは強くなりました。1年間レギュラーとして出られるようになりたいですし、9イニングを守らせてもらえるように成長していきたいです」
配球には答えがない。チームの勝利こそが正解となる。その難しさを痛感しながら、それでも自分の成長が勝利につながると信じて練習に励む。そして今季の一軍での経験が、正捕手への歩みを力強く支えていくだろう。
「プロに入ったときはもう少し早く活躍している予定だったんですけどね」と苦笑し、こう続けた。
「だいぶ時間はかかりましたけど、ここからですね」
原点回帰は決して後退ではない。9年間が無駄だったわけでもない。鍛え上げられた肉体と経験、確かな成長があったからこそ原点回帰が飛躍へとつながったのだ。プロでの10年間だけではなく、ただ楽しく野球をしていたあの頃から培ってきたそのすべてが今に生きている。
11月18日、楽天は海外FA権を行使していたDeNAの伊藤光の獲得を発表した。来季の正捕手争いは今季以上に熾烈を極める。それでも、一歩も引く気はない。今年得た経験と掴んだ感覚を必ず結果につなげてみせる。11年目の来季は堀内にとって新章のスタートだ。
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