「いつか植物にハマってしまうときがくるんだろうな」と、数年前に感じたことがある。歴史を追って京都や奈良を探索し始めて数年経ったときのことだ。地球生活において、人類の大先輩でもある植物たちは、そこに存在するだけで我々に教えてくれるものがたくさんある。尊敬の念を抱かずにはいられない存在だ。

夜の京都府立植物園の夜は、そんな私の数年前の予感が再燃してしまうほど、生き物の持つ美しさが際立っていた。

  • 京都府立植物園「LIGHT CYCLES KYOTO」で、紅葉のシーズン限定のライトアップが開催中

    京都府立植物園「LIGHT CYCLES KYOTO」で、紅葉のシーズン限定のライトアップが開催中

5月24日から2026年3月31日まで、京都府立植物園では「LIGHT CYCLES KYOTO」が開催されている。昨年始まったこのイベントは、世界的アート集団・Moment Factory が手掛けたライトアップショーで約8万5千人を動員、その大好評を受けて、今年も開催されることになった。期間中は小川珈琲とのコラボドリンクや限定ポップアップもあり、京都のナイトスポットとして今年も注目の場所だ。また、紅葉のシーズン限定で、12月7日まで、なからぎの森エリアにもライトアップが施され、色づく樹々と光の演出を楽しむことができるとのことで、期待を胸に訪れたのだった。

枝のしなりから葉のゆらめきまでを照らす「なからぎの森」

昼の植物園には何度も訪れたことがあるが、夜の植物園は少し雰囲気が異なり、大人っぽい装いだ。駅に隣接していてアクセスの良い立地とはいえ、京都の中心部から少し離れていることで観光客がひしめきあう様子なども見られず、カップルが肩を寄せ合っていたり、ゆっくりと散歩をするご夫婦がいたり。美術館に訪れるような、そんな感覚を思い出した。

最低限の足元灯を頼りに、なからぎの森へと向かった。なからぎの森は半木(なからぎ)神社を囲む紅葉や針葉樹、蓮池のあるエリアで、北山通側にある。日中も美しいエリアだが、ライトアップされた紅葉の美しさは、また格別だ。

最低限の光で照らされた紅葉のトンネルをくぐりながら、足を止めてしまうほどの美しさで、水鏡に反射する逆さ紅葉に目を奪われる。

光の演出を手がけたカンバスの金尾代表は、「植生自体が美しいので、華美な演出はしていません」と語る。紅葉が一番美しく見える色温度に調整し、苔は3000〜3500K、紅葉はもっと低い色温度で赤や黄色を強調しているという。

美しいものを美しく見てもらう、そのことに職人の精緻な技が使われているのだ。

蓮池では、光の色味が変わり、ブルーライトが基調となる。周知のとおり、夏に見頃のピークを迎えるため、枯れゆく蓮が光に照らされている。頭をもたげながらも凛としている姿がとてもダイナミックだ。

老いゆくわが身と重ねながら、こんな生き様なら素敵だなと思う時間だった。植物には教わることばかりだ。

  • ベンチエリアもあるので、ゆっくりと鑑賞するのもおすすめ

    ベンチエリアもあるので、ゆっくりと鑑賞するのもおすすめ

なからぎの森には、植物園ができる前からこの地にある「半木神社」。上賀茂神社の摂社でもあり、京都北山の積み重ねた時間を感じる場所だ。元々この土地は織物の産地であったことから、半木神社は織物の神様である天太玉命を祀っている。

夜道に赤い鳥居が浮かび上がり、鳥居をくぐると、神秘的な音楽とともに、織物を想起させるようにゆらぐ光が社殿を囲んでいる。

ちなみに、植物園に佇む神社ということで「木や花が実を結ぶ」ことから、合格祈願や恋愛成就にご利益があると言われており、上賀茂神社まで足を伸ばすとお守りも授与されるそうだ。

なからぎの森は残念ながら期間限定のライトアップなので、ぜひこの機会に訪れて漆黒の空間に浮かび上がる樹々の美しさを眺めてほしい。

植物が主役! 生命力みなぎるショータイム

では「LIGHT CYCLES KYOTO」の本命である観覧温室へ足を進めよう。

ここは植物たちが光と音でショーアップされるメイン舞台だ。4つのゾーンに分かれており、それぞれ趣が異なる。

まず向かう先は「LIGHT WILL FIND YOU」ゾーンだ。このゾーンは「木漏れ日」にインスパイアされたエリアで、植物たちにさまざまな斜光が降り注ぐ。

ゲートをくぐって中へ入ったとたん、おもわず「うわあ…」と声が出てしまった。温かく気温管理されているなかで青々と茂る植物たち。その生命力を感じるのだ

植物たちのアーチを通り「MEMORY OF WATER」へ。ここは、熱帯植物のエリアで、「水」がテーマとなっている。

水面のような「水」から、急流の川ような「水」まで、あらゆる水とバナナの木のような力強い熱帯植物が共演する。光が水のようにゆらぐ様を表現していて美しい。雨が上がった後の虹のような七色の光の演出もあって、エンターテイメント性あふれた空間だ。

そしてサボテン好き必見の「INVISIBLE」ゾーン。

金尾代表がこのエリアを「夜中にひそひそとおしゃべりをしているよう」だと形容していたが、まさに。

ここに入ると、私たちの目は、自然と光の先を追う。精巧に計算されたライトは、植物たちの外観を見事に捉え、点滅され流れていく光線がまるで言葉のように暗号化されているように見えるのだ。

「おもちゃのチャチャチャ」のように、夜中に目覚めた植物たちが踊ったりおしゃべりしたりしていて、それを覗き見させてもらっているような、そんな楽しい空間だ。

ショーを締めくくるのは「FOREST FREQUENCIES」ゾーン。

「植物たちは、意思疎通をしている」ということが近年研究でわかっているそうだが、植物の動的な魅力をぐっと引き立てているのが、この最後のゾーンだ。ドラマティックな音楽と照明でダンスをして歌っているように演出されている。

動的すぎて、写真では表現できなかったのが残念極まりない。ぜひ直接ご鑑賞を。

温室そのものが植物たちの家で、私たちがお邪魔しているような気になる空間体験を味わってほしい。

小川コーヒー×植物園の限定ドリンクでほっと一息

園内散策から、温室鑑賞を楽しんだ後は、ぜひ出店エリアを訪れてみてほしい。 この「LIGHT CYCLES KYOTO」には、京都のコーヒーの名店である小川コーヒーのフードブースがあり、コーヒーのほか、植物園限定のホットドリンクも楽しめる。

「ここだけの限定メニューです。ハーブ香るホットレモネードとホットアップルサイダー。植物をイメージした特別なドリンクなんですよ」とのことで、今回は写真右のアップルサイダーをいただくことにした。

シナモンスティックから香るシナモンの香と、クランベリーの酸味、リンゴの甘みすべてが合わさってとてもおいしい!冷えた体に甘く優しく染み込んでいくようだ。

また、蔦屋書店などを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCCグループ)が手掛けるショップも並んでいて、こちらも楽しい。オリジナル雑貨や、CCCグループが厳選した植物園をより楽しめるような雑貨が集まっていて、ウキウキが止まらない。

  • 特に、限定の「植」Tシャツはお土産にも自分用にもほしい一着

    特に、限定の「植」Tシャツはお土産にも自分用にもほしい一着

京都の新たなナイトスポットに!

京都にはたくさんライトアップされた紅葉スポットがあり、自然美を感じるスポットやディナーとあわせて楽しめる場所は至る所にある。しかし、植物たちの呼吸まで感じられるナイトスポットは、ここだけかもしれない。

光と夜の闇が植物たちの造形美を照らし、植物の息遣いまで可視化されている場所。光が人と自然の距離を縮めてくれる、そんなスポットは稀有だと思う。

夜の植物園を歩きながら、人間もまた自然の一部として、植物と同じリズムの中で生きているのだと感じた。

■information
「LIGHT CYCLES KYOTO」
期間:2026年3月31日まで(秋期の特別プログラム:12月7日まで)
場所:京都府立植物園
時間:2月28日までは18:00~21:30、3月1日~3月31日は18:30~21:30((最終入場20:00) 料金:平日 高校生以上2,300円~、小中学生1,100 円~/休日 高校生以上2,700円~、小中学生1,400円~、未就学児 無料