“オールドメディア”と揶揄される一方で、最新技術を積極的に導入しているテレビメディアの動向を取材するシリーズ「テレビ×サイセンタン」。
今回は、11月19~21日に千葉・幕張メッセで開催された国内最大のメディア総合イベント「Inter BEE 2025」で3年ぶりにブース出展したTBSテレビのAI技術の取り組みをリポートする。
TBS公式誤字データベース×生成AIで高精度に
「TBS LUPE(ルーペ)」は、AI文章誤字チェックアプリ。生放送直前のプレッシャーのかかる環境で日々大量の文字チェック作業をしている報道番組や情報番組などのフリップ制作現場の声をきっかけに生まれ、番組やニュース原稿のほか、ウェブ記事チェックなどでも活用されている。
利用方法は、誤字をチェックしたいデータを「TBS LUPE」に送信するだけで、すぐに結果を表示。データ形式はテキストだけでなく、原稿、資料、フリップ、パネルといった画像やPDFも対応可能だ。
約3,000種の誤字・注意単語が蓄積された「TBS公式誤字データベース」と、一般的な誤用から専門的知識までを検知する最新の生成AIを組み合わせることで、高精度な文章チェックを実現。記事掲載のスピードに追われる我々ウェブニュースにおいても、大いに活用できそうだ。
ブースでは、情報番組などで使用される画面から誤字を見つける難しさが体験できる架空のパネルを掲示。同音誤字や漢字の「偏」など、大量の文字情報の中に絶妙な誤字が散りばめられ、完全に見つけ出すにはそこそこの時間を要することを実感した。それをバタバタの生放送の現場で行わなければならないのだから、このアプリが重宝されていることが想像できる。
6~8万円の映像作成が数十円程度に
「音六AI」は、原稿さえあればナレーションの音声が完成してしまうシステム。原稿を打ち込み、収めたい時間(尺)を指定するだけで、話す速度を自動調整し、時間ぴったりに合わせたナレーションが生成される。読みやアクセントが異なっていた場合は、簡単に修正が可能だ。
20分のナレーション収録にかかる時間は、従来は手慣れたスタッフでも60分以上かかっていたというが、「音六AI」では1~2分程度で完成し、60分以上の業務短縮に。また、8分の映像作成にかかる費用は、ナレーションを外注して編集作業を含めると6~8万円程度かかるというが、クラウド稼働料として数十円程度に収まるという。
すでに、テレビ山梨『スゴろく』や、新潟放送『土曜ランチTVなじラテ』といったテレビの情報番組・バラエティ番組のコーナーのナレーションや、山陰放送のラジオ番組『エバーグリーン・ポップスのアシスタントなど、TBS系列20局で活躍中。TBSでは、視覚障害者向けの解説放送などで使用しているが、12月からは夕方ニュース番組『Nスタ』でも導入予定だという。
ナレーターの声の種類は、男女のほか「明るい」「容器」「気軽」「魅力的」などの特徴からも選べるなどバラエティに富んでおり、英語、フランス語、スペイン語、中国語といった多言語対応も。将来的には、実在するアナウンサーの声を学習して、放送上では驚異的な稼働をこなす人気アナが出現する…なんてこともあるかもしれない。
ちなみに、TBSテレビブースの担当部署は「TBSテレビ メディアテクノロジー局 未来技術革新事業部」というワクワクする技術を開発してくれそうな名称だった。



